新たな欧州MDRに基づくコンサルと実務サポート

ByMedtec Japan編集部

欧州の医療機器の規制枠組みであった医療機器指令(Medical Device Directive:MDD)に代わって、2012年に欧州委員会で起案された医療機器規則(Medical Device Regulation:MDR)が間もなく発効となる。現在CEマーキングを行っているすべての医療機器メーカーに対応が求められるため、日本の医療機器メーカーにとってもインパクトは大きい。海外規制動向に基づき海外進出のコンサルを行う株式会社サン・フレア リサーチ&コンサルティング部門 コンサルタントの佐藤英樹氏にMDRのポイントについて話を聞いた。

4月7日追記:4月5日付で欧州医療機器規則(Medical Device Regulation:MDR)が可決されました。詳細は下記プレスリリースをご確認ください。
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-17-847_en.htm

まず今回の改正には、欧州全体を単一市場として管理する枠組に様々な分野で課題が蓄積し改正が進んでいるという背景がある。医療機器の規制に関しては、乳がん治療後のシリコン製インプラントに工業用材料が使用されるという不祥事が改正の大きなきっかけになっているという。規制当局が直接関与するより、第三者認証機関(notified body)による評価や自己評価の占める要素が多いこれまでの規制のあり方に疑問が広がった。

改正の主なポイントとして下記があげられる。

・製造業者や欧州代理人の資格要件

欧州域外の製造業者が機器を販売する場合、欧州に法定代理人を置く必要があるが、製造業者や代理人の組織に、要件を満たす法的責任者を置くことが求められる。

・規制対象となる主体-サプライチェーン全体に対する規制

従来の第三者認証機関、製造業者、法定代理人に加え、輸入業者と販売業者の要件が示され、その責務が明確化される。

UDI(固有機器識別子)規制の導入

米国に続き欧州でもUDI規制が今後導入されることが明文化される。

・製品データベースの公開

製品の情報についてデータベース整備を行い民間にも公開するものとみられる。メーカーは既存製品の情報を規制対応の参考にできる可能性がある。

・臨床的な安全性・有効性評価の強化

これまでクラスⅢ製品については原則的に臨床試験が必要とされつつも、CEマーク取得済の類似製品の文献を使って新製品の評価を行う選択肢もあった。改正法では、このような選択肢を採る際の条件が厳格化される。ただし、上記の情報公開の動きと軌を同じくして、今後製品ごとの“common specification”が規定され、一定の基準を満たす場合は臨床試験を不要とする方向性が示唆されている。今後、どのようなタイミングで基準が示されていくか見通しが不透明なため、特にクラスⅢ製品のメーカーにとっては一時的にプランが立てにくい状況になると予想される。

Medical Device Coordination GroupMDCG

上記の技術的な基準を作成し管理していく主体としてMDCGが設置される。

PMS(市販後調査)

市販後の安全性・有効性に関わる要求が明確化され、調査計画と実施記録の文書化がより厳しく求められる。

・その他

単体ソフトウェア、ヒアルロン酸やナノマテリアル、あるいは美容用途のコンタクトレンズなど、これまで医療機器としての位置づけが不十分であったものに対してクラス分類等が明確化される。

なお、MDDは指令(Directive)として実質的には各国法により各国当局を通じて運用されていたが、MDRは規則(Regulation)となり直接的に欧州全体の規制として適用される。

移行期間は第三者認証機関に関する条項は発効日から6カ月、製造業者に関する条項は3年、現状の認証の有効期間は5年間とされる見込みだ。

「実務レベルで影響が大きいのは文書の作成法がより明確化されることです」と佐藤氏。メーカーにとって、これまでの要求項目とのギャップを把握し、所定の期間内に効果的に文書作成を進めることが重要になる。

サン・フレアでは欧州進出コンサルに加え、ガイダンスについての情報発信やMDR法案の参考和訳など(右写真)、MDRの動向を継続的にフォローしてきた。新規参入の企業へのコンサルは引き続き行い、既存の医療機器メーカーに対してコンサルおよび文書作成など実務レベルのサポートを提供していく。

■ Medtec Japan 2017 ブース番号:412

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