大小企業が挑む米国の人工膵臓開発レース

Bigfoot Biomedical社は、人工膵臓の開発レースで、メドトロニックや他の大企業に果敢に挑んでいる。

ByNancy Crotti(オリジナルの英文記事はこちら

小規模なベンチャー企業であるBigfoot Biomedicalの創設者と首脳陣にはそれぞれ、少なくとも1人以上の1型糖尿病患者の家族がある。したがって、人工膵臓を開発しようという動機には、最近FDAに人工膵臓の承認申請を行ったメドトロニックより個人的な思いがより強く含まれるかもしれない。

カリフォルニア州ミルピタスを拠点に2014年に設立されたBigfoot Biomedicalは、その“smartloop”自動インスリン供給システムの最初の臨床試験のために、FDAよりIDE(Investigational Device Exemption、治験医療機器に対する一部規則の適用免除)の承認を取得した

臨床試験はクローズド・ループのインスリン供給についての3つの研究施設(スタンフォード大学医学部、William Sansum糖尿病センター、コロラド大学Barbara Davis糖尿病センター)で行われる予定だ。

1型糖尿病は多くの場合小児期に発症し、身体だけでなく生活にも大きな影響をもたらす。患者は1日に数回血糖値を測り、血糖値をコントロールするためにインスリンを投与しなくてはならない。

ここ数年多くの企業が様々な形の人工膵臓で開発レースに加わっているメドトロニックは、同社のMiniMed 670Gインスリンポンプを世界初のハイブリッド・クローズドループ人工膵臓とうたっている。Star Tribune of Minneapolisの記事によると、124名の患者による臨床試験では、同機器によって患者が目標の血糖レベルになる時間が増加したことが示された。

Tandem Diabetes Care社も最近、Type Zero Technologies社(バージニア州シャーロッツビル)の人工膵臓技術を自社の次世代t:slim インスリンポンプに統合させるためのライセンス契約に合意したと発表したType Zero Technologiesのアルゴリズムはバージニア大学で行われた研究によって開発されたもので、発表によると475名以上が参加した28を超える臨床試験においてこの技術が使用された(ウエブサイトdiaTribeに人工膵臓の開発レースをまとめたわかりやすい表がある)。

これらの会社が製品化とFDAの承認を目指しているクローズド・ループ人工膵臓とは、血糖値を測る持続血糖モニターと血糖値を適正レベルに維持するための自動インスリンポンプで構成されるウェアラブルのシステムである。

IDEを取得したBigfoot Biomedicalの最初の臨床試験では、米国の5施設から50名の患者を集めるにとどまった。しかし、同社には有力な人材がある。1型糖尿病の息子をもつCEOのJeffrey Brewer氏には、2011~2014年に米・青少年糖尿病研究財団(JDRF)のCEOをつとめる以前に2社のスタートアップを指揮した経験がある。また、同社の最高技術責任者のBryan Mazlish氏は、2014年にWired誌“DIY医療機器”についての記事で取り上げた巨人である。彼は人工膵臓のproof of conceptモデルを開発し、これを彼の妻と息子が2013年から使っている。

Bigfoot Biomedicalの“smartloop”システムはMazlish氏の研究からインスパイヤを受けており、同社によると独自の投与アルゴリズム、ソフトウェア、ハードウェアで構成されている。

主任エンジニアである元メドトロニックのLane Desborough氏は1型糖尿病患者の親による“#WeAreNotWaiting”運動を共同で立ち上げ、クラウドシステムの“Nightscout”を共同で開発した。「このオープン・ソースのDIYプロジェクトでは、スマートフォンやコンピューター、タブレット、Pebble Smartwatchのようなデバイスを介してウエブ・ブラウザから、持続血糖モニターであるDexcomG4へのリアルタイム・アクセスを可能にする」(Nightscoutのウエブサイトより)。

Brewer氏は発表で“smartloop”システムは「人々の生活を変える可能性がある」とし、既存の治療法を「あまりに高価で複雑で、サポートが少ないわりに高い集中力や注意力を要求するもの」と批判している。

「この機器は、使いやすさをさらに改善して、よりよい治療をもたらすために設計されています。これによって患者も医師も生活をよりシンプルにでき、究極的には治療コストを削減することができます」(Brewer氏)。

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