通信機能をもつ医療機器の設計における課題

通信機能をもつ(connected)医療機器に関する設計、性能、認証上の問題を理解することは、医療機器メーカーが直面する課題を解決し正しい道に導く手助けになる。

ByDermot O’Shea(オリジナルの英文記事はこちら

医療機器が洗練され、医療現場の装置としてよりも広くヘルスケア機器として販売されるようになるにつれ、そのフォームファクタはますます小型化している。これによりIoT(Internet of Things)ベースの医療機器が、リアルタイム・モニタリングのために病院や医療施設に縛られたくない患者の間でますます注目を集めている。市場調査会社のBerg Insightによると、2016年には米国で710万人の患者が、主要な治療プランとして通信機能をもつ医療機器を用いる何らかのデジタル・ヘルス・プログラムを利用しているという。さらに同社では、遠隔モニタリングを受ける患者は2021年には5,020万人になり、2,290万人の患者が自身がもっている携帯機器を使う〔Bring Your Own Device(BYOD)〕ことになると予想している。

機器の種類も大きく増加している。心臓モニタリング機器やインスリン・ポンプ、除細動器、CPAP(持続的陽圧呼吸)装置といった機器は、患者と医療者にリアルタイムの診療情報を遠隔で提供できる機器としてますます普及が進んでいる。

IoTベースの医療機器は医療用クラウドに接続する必要があるのは当然であり、そのためには、電気信号を電波に変換することによりネットワーク通信を確立できる信頼性の高いアンテナとRFシステムが必要になる。信号が弱い場合に通信を確立するためだけなく、機器のバッテリーの消耗を最小限にするためにも、効率性と信頼性の高いアンテナは必須である。

しかし、機器がスマートで小型になればなるほど、複雑さと課題が大きくなる。こうした課題には、製品の設計や性能だけでなく、米国におけるFDAやFCC(連邦通信委員会)のような政府機関の認証に加え、民間の携帯ネットワーク運用会社(MNO)の認証を得なければならないという点も含まれる。

製品設計上の課題

家庭用や携帯用の製品を設計する際には、フォームファクタやスペースは非常に重要である。以前施設内使用のために設計された医療機器は、長年にわたってフォームファクタとユーザビリティが改善された経験があるという点では有利だが、近年注目されている通信機能をもつ新たな医療機器の設計の場合にはこれらの経験の大部分は役に立たないかもしれない。

よくある過ちは、以前通信機能をもたなかった医療機器に単に通信機能を付加するのみで、筐体やバッテリー容量、内部のPCB形状、その他の要素をそのままにしておくことだ。アンテナが効果的に電波を送受信するにはスペースがいるため、機器が大きく、空きスペースがたくさんある場合でない限り、単に汎用のアンテナを機器に組み込もうとしてもうまくいかない。通常、通信機能をもつ医療機器には、さまざまな微妙な要因の考慮を含むカスタム設計とオーダーメードの統合が必要である。例えば、機器を身体に付着させるのであれば、機器はコンパクトで快適さを維持するものでなくてはならないし、対象となる患者以外の患者に付着させるべきではない。開発を成功させるには、医療機器メーカーは、各種認証を得られ試験でユーザーの要求に適合することを確実にするため、設計プロセスの最初にアンテナを考慮しておくべきである。

性能と認証プロセス

通信機能をもつ医療機器は各種認証を得て一定の通信性能を確保していなくてはならない。これらの機器を開発しようとしている企業にとって、無線機器の認証プロセスは必須であるが、しばしばこのプロセスは過小評価されている。通信させようとしている機器が新規のものであろうと既存のものであろうと、FCCあるいはCEの厳格な認証プロセスが必要になる。携帯電話の通信網を使う場合には、携帯ネットワーク運用会社にも認証を受ける必要がある。これらの認証においては下記を含む項目が試験される:

  • 一定のネットワーク標準とネットワークシナリオに適合すること
  • データ送受信の性能
  • どこまで弱い電波を受信できるか

機器の送受信感度のテストはOTA(“Over the Air”)試験と呼ばれている。

身体に装着あるいは身体の近くで用いる機器はアンテナとRFシステムに大きな影響を与えるため、メーカーはさらなる試験を行い認証を得ることを考慮しなければならない。そのような試験として、例えば音声のような重いデータを扱う場合のSAR(“Specific Absorption Rate”)試験が知られている。作業ツールと見なされる機器(例えば、ファーストレスポンダ通信ユニットや電気作業員の安全管理機器)でなければ、SAR試験を通過することは手間がかかる。

まず、医療機器が適切にアンテナを備え安定した携帯電話通信ができることを保証することは、要求される認証を受け、製品開発を遅らせないために不可欠である。

その他の課題は下記の通りである。

  • RFや無線システムの近くでの電気的ノイズは干渉を生み出し機器の性能に影響を及ぼしかねない。カスタムアンテナとフィルター設計によりこのような影響を少なくすることができる。
  • バッテリー駆動の医療機器では電力消費はしばしば重要な要因になる。優れたRFシステムはノイズや干渉を最小化する。さらに効率的なアンテナ性能を確立すれば、送受信に関する電力消費を抑えることができる。

成功に向けたパートナーシップの重要性

医療機器メーカーは、すでに十分複雑である製品に無線システムを統合することの複雑性を過小評価しがちである。そこで、設計プロセスの前後に十分に意思疎通を行える連携が非常に重要になる。信頼できるパートナーには、ネットワーク運用会社(MNO)、アンテナおよびRF業者、モジュールやチップ業者、試験所が含まれる。こうしたパートナーシップにより医療機器メーカーは下記の点の理解が深まるのだ。

  • 無線機器設計のベストプラクティス
  • 世界各国で機器開発を成功させる方法
  • 携帯電話通信、LPWAN(Low Power Wide Area Network)のような省電力通信、衛星通信といった利用できる通信手段の範囲
  • 認証プロセスのピットフォールを回避する方法

通信機能をもつ医療機器の設計、性能、認証に関わるカギとなる課題を理解することは、医療機器メーカーが直面する多くの困難を打開し、正しい道に導く手助けになる。このプロセスの初期段階でアンテナ業者が関わることにより、アンテナのサイズ、形状、取り付けタイプ、取り付け場所、価格、その他の要因についてのサポートが得られる。また、通信事業者による認証、試験プラン、据付要件といった開発プロセスに影響を及ぼしかねない問題に関して的確なサポートが得られるだろう。

著者紹介:Dermot O’Shea, cofounder and joint CEO of Taoglas, is a seasoned IoT entrepreneur, with more than 15 years of experience in the global electronics industry spread over roles in Europe, Asia, and North America. He is recognized as an expert in the antenna and wireless business. O’Shea currently serves as Joint CEO of Taoglas Group and president of Taoglas USA—the leading machine-to-machine/IoT antenna solutions provider.

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