音声認識技術をベッドサイドに

音声認識技術を病院と家庭でどのように活用できるか、また今後医療従事者がどのようにこの技術を活用できるようになるか、デジタル・ヘルスのエキスパートが語った。

ByMarie Thibault(オリジナルの英文記事はこちら

ボストン子ども病院を訪れると、ICUのナースステーションやPCカートにおなじみの周辺機器があるのに気づくだろう。それはアマゾンが開発したAIアシスタント、アレクサ対応の機器である。同病院はアレクサ対応機器の最初のヘルスケア機能の開発を含む音声サービスの研究を全米に先駆けて行っている。

KidsMD Alexa skill”は、発熱などの子どもの様々な症状に関する質問に答えるためのリソースや支援ツールを親が利用できるようにするために開発された。同病院のMatt Murphy氏は、この取り組みをテクノロジスト(ソフトウェア開発者と機械学習の専門家)と臨床家(clinician)の連携と表現している。

「親が質問をするとシステムが反応しデータや症状の情報を返します。それを親が読むことができます」とMurphy氏は説明する。

KidsMDは同病院の音声プラットフォームへの取り組みの第一歩にすぎない。Murphy氏のチームは院内で使えるアレクサによる音声サービス技術も開発している。「同じプラットフォームの中で様々な独立した取り組みができるのがよいところです」とMurphy氏はいう。「私たちにとってアレクサは、病院環境で音声を幅広く使う実験を行える初歩的なプラットフォーム以上のものなのです」。

音声プラットフォームはまだHIPAA(医療保険の相互運用性と責任に関する法律)に適合していないため、音声コマンドを通じて患者の個人情報を利用することはできない。しかし、受診のスケジュールを見たり予約したりするための情報を提供するために音声サービスを使う方法があるとMurphy氏は指摘する。「患者のすべての医療情報をオンデマンドで利用できるようにする前に、HIPAA準拠の枠組にしなければならないのは確実です」とMurphy氏。ボストン子ども病院にはこのようなアプリケーションを開発するプロセスに関わる様々なステークホルダーがいる。2016年末には患者、親、ソーシャルワーカー、臨床家、その他の人々が病院環境における音声サービス技術を開発するためのハッカソンに参加した。そこで開発された技術の1つは、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)で治療を受ける子どもの親に対して、ラインの消毒や薬剤の変更などの家庭での問題について指導するためのものだった。

患者の個人情報の問題に関わらなくても、広い倉庫内で特定の機器や薬剤の場所をガイドするというような、音声を生かせる様々な分野がある。Murphy氏によると、開発チームでは検査情報などに関してICUの看護師をサポートする音声技術を開発中だという。これは、投薬量や特定のプロトコル、メンバーの電話番号、その他の有益な情報を参照できるICUで使われる音声コマンドの開発につながった。

医療用の音声プラットフォームの活用を検討するなかでMurphy氏のチームは有益な教訓を得た。例えば、病院は騒音が大きい場合があり、音声機器が指示を聴き取れなかったりユーザーが機器の反応を聴き取れなかったりする。「臨床の環境で働く人たちが言っていることを捉えられるよう機器の位置を最適化するなど多くの調整を行いました」とMurphy氏はいう。これにより、様々な機器の設置場所を実験し、部屋の中のどこでユーザーが音声技術を使用するかを検討した。

Murphy氏によると、開発チームでは、臨床ユーザーから音声技術のサポートを得るもっともよい方法は、簡単に迅速に情報を得られるようなプラットフォームを使うことだとわかったという。必要な情報を得るために、大量のバインダーや紙をめくったり、インターネットで検索したりする代わりに、医師はスマートスピーカーのAmazon Echoに問いかければ答えが得られる。「こうしたことを最初に開発すべき技術として優先することは非常に重要で、臨床家もこれによりプラットフォームを評価してくれるのです」とMurphy氏。

もう1つの教訓は、情報の伝達方法(音声 vs 視覚/文字)によって情報の最善の提示方法が変わることだ。音声プラットフォームで得られる情報は、ユーザーにとって優先すべき情報として認識される。「音声はすばらしいインターフェースですが、段落を読み上げるように情報を伝えられません」。

この点に対処するため、開発チームでは音声技術のユーザー体験を再考するためのアドバイスを設計者に求めている。「会話を通じてのプロトタイピングか、ウエブ開発で使うようなワイヤフレームを通じてのプロトタイピングかを考えることは、私たちにとってオンデマンドで有用で使いやすい技術を作る方法になりました」とMurphy氏。会話での情報伝達には、特定の医療用語や医薬品の発音を厳密にコード化することが求められる。

ボストン子ども病院の取り組みによって、医療における音声技術応用の大きな可能性が見えてくる。「患者について処理すべき情報が大量にあるため、音声には、患者に関する診療記録やその他のリファレンスデータを扱うインターフェースやインタラクションを進歩させる可能性があります」とMurphy氏。「音声コマンドでこうした情報を引き出せることは非常に有望であり、医療における音声技術の将来になると考えています」。

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