遠隔医療からAI、ビッグデータ、アプリ活用まで新しい医療の可能性を凝縮:IoMTサミット レポート

医療分野に特化したIoT研究を学際的に推進する一般社団法人IoMT学会は、2017年12月9日(土)に年次学術総会として「第2回IoMTサミット」を開催した。テーマは「医療におけるデジタルユビキティへの変革」。前回(関連記事)に続いて医療×IoTによる新しい医療の可能性を凝縮したイベントとなった。

ByMedtec Japan編集部

同会代表理事である順天堂大学眼科の猪俣武範氏の開会の挨拶の後、セッション1 Opening SessionではIoMTに関するホットな話題について3名のエキスパートが講演。京都大学の中村正裕氏は「IoMTへの期待~社会実装に向けて~」と題して、最小限の負担でデータ収集、フィードバックや経験の共有を可能にするといった特長によりIoTを応用した医療には、患者自身がボトムアップで実現する究極の個別化医療の可能性があると論じた。

次に京都府立医科大学眼科/デジタルハリウッド大学大学院の加藤浩晃氏が国内の遠隔診療の現状と展望を解説。現状では対面診療を補完するものとしての位置づけで解禁が示されたが保険診療上のメリットは大きくない。未来予測として、政府の期待もあり2018年の診療報酬改定では遠隔診療を評価しようという動きや、ルールとなる遠隔診療のガイドライン作成の動きがあることを紹介した。

続いてインターネットのセキュリティ診断を提供する株式会社ロードマップの守井浩司氏が「IoT機器を狙うサイバー攻撃の手口」として、サイバー攻撃の種類や現状、実際の手口、院内セキュリティの重要性について講演。ハッキングが簡単に習得できること、ハッカー人口が急増している現状を印象的に紹介し、まずは医療従事者のセキュリティ意識を高めることが重要と指摘した。

セッション2 遠隔診療の今では、実際に遠隔診療、遠隔医療相談のサービスを提供している3社が現状や課題について講演。遠隔診療サービス「ポケットドクター」を提供しているMRT株式会社の小川智也氏は、海外の先進事例を紹介しながら日本ではデバイスやデータ、それらを一元的に管理するプロセスの連携が不十分という課題を解説した。

オンライン健康相談「ファーストコール」を提供している株式会社Mediplatの真鍋歩氏は、チャット(24時間365日対応)とテレビ電話による医療相談ができる「ファーストコール」を紹介し、病院の機能分化が十分に進んでいない状況で、障壁の低いコミュニケーションであるチャットを生かしたサービスにより医療インフラを整えるような役割をイメージしていると説明した。

オンライン診療アプリ「CLINICS」を提供する株式会社メドレーの川田裕美氏は700を超える導入例から現状と課題を紹介。ビデオ診察を主とするCLINICSの特長や病院や診療科に合わせて使用されている実態、エビデンスの蓄積や保険診療上のメリットなどの課題を語った。

セッション3 ResearchKitを用いた臨床研究ではAppleが提供する医学研究向けのアプリ実装を支援するオープンプラットフォームResearchKitを用いた研究が紹介された。順天堂大学の吉村祐輔氏はResearchKitをもとに自ら開発したアプリ「ロコモニター」を紹介。アプリ公開後幅広く参加者を集めロコモティブシンドロームの実態把握が進んでいること、同じくAppleが提供する健康管理アプリの開発キットCareKitを組み合わせて新機能を加えた新バージョンや英語版の計画などを紹介した。

順天堂大学眼科の猪俣武範氏はReserchKitを利用して開発したアプリ「ドライアイリズム」を使った臨床研究について発表。研究の背景・経緯とこれまでの研究で示されたドライアイ重症化と関連の高い生活習慣などを示した。2017年11月には英語版を発表しており世界的に疫学研究に近い研究を目指していること、花粉症のアプリも開発を進めていることを紹介した。

まばたきや目の動き、姿勢を検知し眠気や集中度をモニターできるメガネ「JINS MEME」(関連記事)を展開する株式会社ジンズからは井上一鷹氏がResearchKitなどを使った研究や、集中度を高めるために設計したオフィス「Think Lab」を紹介。働き方改革につながる集中度をキーワードに研究機関や企業と連携を進めている状況を語った。

セッション4 ランチョンセミナーでは日米で様々な研究開発・創業実績をもつアクシオンリサーチ株式会社の佐藤友美氏が登壇。未病段階からAIやビッグデータを活用して健康度や疾患リスクを予測し視覚化する取り組みなどを紹介した。

セッション5 特別講演では株式会社ミナケアの山本雄士氏が「集約から分散へ -拡張する医療-」と題して講演を行った。医療が患者の生活の場に分散していく技術進化が起こりつつあるなか、技術が先行する開発ではなく、どのような医療を実現したいか、提供したい価値から出発した開発への期待を明解に語った。

セッション6 AI/ビッグデータ/その他では、まず医用画像の読影AIサービスを開発するエルピクセル株式会社の島原祐基氏がベンチャー設立の背景とこれまでの開発状況を紹介。最近の北米放射線学会(RSNA 2017)で発表した医療画像診断支援技術「EIRL」(関連記事)や、動画による画像診断への応用など今後の展望を紹介した。

次に日本IBMの岸本拓磨氏がコグニティブシステムIBM Watsonについて、自然言語処理の強みを生かした、患者の訴えを聞いての診断サポート、文献検索、障がい者のコグニティブアシスタントなどの応用例を紹介した。

リーズンホワイ株式会社の塩飽哲生氏は医療連携を効率化するドクター間のコミュニケーションツール「ホワイトリンク」、株式会社情報医療の草間亮一氏は人工知能を活用したヘルスケア・データソリューション事業「AI」、木村情報技術株式会社の木村隆夫氏は製薬企業のコールセンター業務を担うAIチャットボットについてそれぞれ課題を交えて紹介した。

セッション7 スマートデバイス/スマートホスピタルでは、同学会理事でもある柳川貴雄氏が、自身が代表をつとめる一般社団法人在宅健康管理を推進する会が提供する医師による医療機器を使う見守りサービス「見まもりブレイン」を紹介。最近保険診療が認められた携帯型心電計(イメージワン社製duranta)による連続心電図検査のメリットについても取り上げた。

メディカルローグ株式会社の野口宏人氏は、医療機関の業務負担軽減をもたらす問診入力アプリ「pre put」、株式会社リクルートホールディングスの西沢眞璃奈氏は、調剤薬局と患者をつなぐコミュニケーションチャット「すこやくトーク」、株式会社Miewの刀禰真之介氏はAIを活用した企業向けストレスチェックのサービスを紹介した。また、虎の門総合法律事務所の村上博氏は最近の国内特許の調査からヘルスケア分野のIoT特許の動向について発表した。最後に株式会社エクスメディオの物部真一郎氏らは、D to D(ドクター to ドクター)の診療相談を支援するアプリ「ヒポクラ」とAIを応用したサービス、さらに共同研究を進めている皮疹のクラス鑑別AIを紹介した。

セッション8 治療アプリ・デジタル療法では、まず禁煙治療アプリ(関連記事)の開発を進めている株式会社キュア・アップの佐竹晃太氏が国内外の法規制、エビデンス動向をまとめた。海外では禁煙、2型糖尿病、高血圧、肺癌、薬物依存などの治療にアプリを使う研究が発表されていると紹介した。

続いて、株式会社HIKRI Labの清水あやこ氏がニュージーランドで開発されたうつ病の認知行動療法をサポートする心理ケアゲーム「SPARX」と研究結果、同社で提供している日本語版について紹介した。東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座の脇嘉代氏は、開発を進めている2型糖尿病の自己管理支援システムDialBeticsの国内ならびにイタリアでの研究成果について発表した。最後にサスメド株式会社の上野太郎氏より、臨床試験に非常にコストがかかる現状を解決する可能性のあるモバイル医療データの利用について、ブロックチェーンなどで臨床試験に耐えうるデータの信頼性を高める取り組みが紹介された。

閉会時には再び代表理事の猪俣氏が挨拶し2018年3月日本語版ジャーナルの発行予定も明らかにした。IoTの医療応用は着実に事例を増やしており、学会としてますます深みと広がりを増すことを期待させるイベントとなった。

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