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空気圧制御による手術支援ロボットの開発

空気圧制御による手術支援ロボットの開発

医療関連の新製品開発はリスクが高く企業には大きな負担となるため、新たな仕組みとしてオープンイノベーションが期待されている。そこで大学発のシードを新製品開発にまでつなげる意義は大きい。

By:Medtec Japan編集部

今回、大学発ベンチャー(東京医科歯科大学・東京工業大学)として“力覚のある”手術支援ロボット開発を目指すリバーフィールド株式会社の原口大輔氏(代表取締役社長)に話を聞いた。


──2014年に創業されましたが、そもそものきっかけは?

2000年代はじめから東京医科歯科大学と東京工業大学では医工連携のコンソーシアムがありました。当時、米Intuitive Surgical社の手術支援ロボットda Vinciが日本でも注目を集めはじめていましたが、「da Vinciにはない力覚を伝える機能を実現できないか」というアイディアが医師の方々からあがっていました。

一方、当社の創業メンバーである川嶋健嗣(現・東京医科歯科大学教授)が当時研究を行っていた東工大の研究室では、得意とする空気圧の精密な制御技術が手術支援ロボットに生かせるのではと考え、医師らとの共同研究がはじまったのです。

──空気圧制御のメリットは?

電動の装置を使うと機器が大きくなることや、力覚を検知するのに力センサを使う場合にはセンサを手術環境や体内で使えるのかという問題があります。空気圧制御では装置を小型にセンサレスで設計できます。体内に入る部分に機構を追加したり、滅菌や洗浄への対応などを考えたりしなくてよいというメリットがあり、手術支援ロボットに適していると考えられます。

──ベンチャーを立ち上げられたきっかけは?

私は2010年に東工大川嶋研究室に大学院生として加わりました。2011年に東工大のイベントで声をかけていただいた、ベンチャーキャピタルの株式会社ジャフコの方とともに、文部科学省の「START」プロジェクトに応募しました。ジャフコに事業プロモーターになっていただき、STARTに採択され2年半の資金援助を受け、その後も資金が得られる目途が立ったことから2014年に会社を共同設立しました。

──その後の資金調達は?

これまで3回にわたってベンチャーキャピタルや事業会社に第三者割当増資を行っています。創業から現在まで累計総額19.5億円を調達しております。これを資金に2020年までに手術支援ロボットの製品化を目指します。

──開発体制は?

東京医科歯科大を中心とする医師の方々に試作機の評価を行っていただいており、それを受けての設計改良、薬事面での対応などを会社で行っています。さらに先進的な次世代技術の研究開発も、大学(東京医科歯科大学 川嶋研究室および東工大 只野耕太郎研究室)と連携して行っています。

──要素技術はどのように集められているのでしょう?

大学や自社でできる空気圧制御やソフトウェア以外の部分で多くの企業様と連携しています。まだまだ必要な技術はありますからこちらから探したり、ご提案いただいたりしています。特に内視鏡や電気メスなど手術に関わる様々な機器の開発ノウハウをお持ちの企業様との連携を望んでいます。

──人材はどのように確保を?

研究としての要素が高い部分は大学と連携しますが、医療機器はもちろんロボットシステムなどで製品化の経験のあるエンジニアが不足しています。採用活動は継続的に行っています。

内視鏡ホルダ「EMARO」

──医師からのフィードバックで意外なことはありましたが?

研究段階の話ですが、力覚を感じる程度に相当な個人差があることに驚きました。これに対しては、個人の特性に応じて力覚の提示比率を変えたり、あるいは視覚情報とうまく組み合わせることで効果を高めることができます。力覚情報のあるロボット手術に一度慣れていただければ、力覚は術者にとって手放せない必要不可欠な機能になると考えています。

──手術支援ロボットに先行して2015年に内視鏡ホルダ「EMARO」を上市されています。これはどのような経緯で?

内視鏡ホルダも手術支援ロボットの一部として開発していましたが、研究試作機が医師から高評価だったため、先行して製品化を行うことになりました。頭部のジャイロセンサと足元のスイッチを使い、執刀医自身が内視鏡を直感的に操作できるようになり、手術の効率化につながります。自分で思い通りに視野を調整できる、手振れがないといったメリットに加え、空気圧制御のため動きが柔らかく、装置も小型化・軽量化できるというメリットがあります。

現在までに8つの医療機関・施設に導入いただいています。EMAROで業界に参入し臨床現場とのつながりができたこと、保守も含めた製品のライフサイクル上の一通りの業務や業界のルールなどを経験できたことは、今後の製品開発にあたっても大きな意義があります。

──2020年までに手術支援ロボットを上市されるとのことですが、今後の展望は?

空気圧で力覚をもたらす点の優位性は確信していますし、ロボット手術の大きな課題といわれているコスト面でも貢献できることを目指しています。

手術ロボットの製品開発にあたっては、システムの有効性、安全性、臨床評価などについて、協力医師およびPMDAと相談しながら進めております。

──ありがとうございました。

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