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iPS細胞のライブ輸送用デバイス

iPS細胞のライブ輸送用デバイス

2016年の伊勢志摩サミットでは、iPS細胞由来の心筋シートがライブ展示され話題を呼んだ。大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科学が作成した心筋シートを輸送し、ライブ展示を可能にしたのが株式会社サンプラテック(本社:大阪市)の技術だ。

By:Medtec Japan編集部

今回「再生医療Japan 2017」(10/11~13@パシフィコ横浜)のサンプラテック・ブースでもiPS細胞由来の心筋シートをライブ展示(右写真)。培養液の中で自律拍動する様子は生命の不思議を感じさせる。

心筋シートの展示用には、アクリルケースと熱を一定(24℃)に保つ潜熱蓄熱材、CO2濃度を一定に保つCO2ガス濃度調整剤(カルチャーパル®CO2)を組み合わせる。これにより電源や制御装置なしに数日間の展示が可能になる。

iPS細胞を輸送する場合は、同社のディッシュカバー、二次容器、網状クッション、CO2ガス濃度調整剤と、厚みのある真空断熱材などで作った専用の定温輸送ボックスで持ち運ぶ(下写真)。潜熱蓄熱材は36℃に保つものを用いる。

定温輸送ボックス 二次容器と潜熱蓄熱材

同社ではこれらのiPS細胞のライブ輸送に関する製品を「iP-TEC」としてシリーズ化。一次容器(ディッシュやプレートなど)にかぶせるシリコーンラバーのカバーは、細胞毒性がなく(粘着剤不使用、米国薬局方USP クラスⅥ、ISO10993-5対応)、CO2透過性が高く、シール性能も十分で安心なライブ輸送を可能にする。

二次容器は気密性、剛性にすぐれたポリカーボネート製でCO2ガス濃度調整剤を使用すれば内部のCO2濃度を約5%に保つことができる。その他、潜熱蓄熱材に加え、温度保持能力と強度にすぐれた各種輸送用ボックスをそろえる。iP-TECの「プレミアBOX-V8.5」と潜熱蓄熱材を組み合わせれば約150時間恒温環境を維持できる(室温が25℃の場合)。

元々プラスチック製の理化学機器を製造販売していた同社では、京都大学のiPS細胞に関する技術の事業化を行う株式会社iPSポータルから、iPS細胞をどのように輸送したらよいかと相談を受けたことをきっかけに輸送容器やボックスなどの開発をはじめた。一次容器・二次容器、輸送用ボックスのカスタマイズに応じるなど、顧客の要望に応じて適切なライブ輸送を提案できるのが強みだ。

iPS細胞由来の心筋シートは現在、阪大や阪大発ベンチャーのクオリプス株式会社などが協力し、第一三共などがクオリプスに出資して開発が進んでいる。心筋シートとしては、患者自身の骨格筋芽細胞を用いるテルモのハートシート(関連記事)が先行して製品化されているが、iPS細胞由来の心筋シートには、他家細胞を用いるためストックができ、コスト面も含めたメリットが期待されている。対象は重症心不全患者とし、安全性の確立と臨床試験での検証を経て2022年の実用化を目指している。

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