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米国・アジアの医療機器規制の最新動向:Medtecセミナーレポート

米国・アジアの医療機器規制の最新動向:Medtecセミナーレポート

2018年に10周年を迎える医療機器開発展示会・セミナー“Medtec Japan”では、9月に神戸と東京で医療機器ビジネスセミナーを開催。恒例となる国内外の最新医療機器規制を解説するセミナー〔座長:昌子久仁子氏(テルモ株式会社取締役 顧問)〕には、医療機器メーカーや関連業者を中心に多くの聴講者が集まった。

ByMedtec Japan編集部

“21 Century Cures Act(21世紀の治療法)”、トランプ政権の影響など進捗著しい米国の状況、さらにアジア諸国の最新情報については、DEKRAサーティフィケーション・ジャパン株式会社の肘井一也氏(同社医療機器事業部マネージングディレクター)が登壇し解説した。


21st Century Cures Actのインパクト

クラスごとに行われる医療機器規制では、患者への侵襲性の高くリスクの高い機器には販売前に治験が求められるなど市場化へのハードルは高くなっている。4月のセミナーでも解説した通り(関連記事)、比較的厳格な規制を設けている米国でも、市販後の市場監視(post-market surveillance:PMS)の役割を大きくして、製造業者の規制対応の負担を軽減化していこうという大きな流れがある。

その流れを象徴するものとして、米国はヘルスケア革新のワールドリーダーであるべきという考えや、これまでの投資対効果が十分でないという背景から昨年制定されたのが“21st Century Cures Act”である。主な目的は下記のものである。

● ヘルスケア革新の推進
● 治験/承認システムの緩和化
 ○ Unmet Medical Needsに対する研究の促進
 ○ NIH(米国立衛生研究所)予算を大幅増加(48億ドル/10年の予算)
 ○ 臨床試験の加速化/標準化
 ○ 薬、医療機器のFDA承認規制を緩和
 ○ 患者の経験データ(Real-world Evidence)の活用

18章(titles)約1,000頁にも及ぶ原文は米立法情報提供システムで閲覧可能。医療機器に関係する主なトピックとしては、ブレークスルー的機器の優先審査、これまでFDAが担っていた品質システム(QSR)の第三者評価の導入、科学的証拠としての市場経験(市販後監視)・公的な文献・他国データの扱い、特定のクラス1、2医療機器の規制緩和、人道的見地からの特殊な機器の申請免除などがあげられる。まだ制度として具体化しているとまでは言えないものの、市販後の患者データ(real world evidence)をビッグデータとして蓄積しFDAが活用していこうという方向性が示されている。

5月にはFDA長官にScott Gottlieb氏が就任したが、かねてからFDAの規制緩和を求める持論を展開しており、FDAからも同法の方向性と一致した動きが進められると予想できる。6月には同法に従いFDAより活動計画と基金割当が提出された。医療機器に該当する“Title III Development”“Subtitle F – Medical Device Innovation”には2025年までに10億ドルを超える資金が割り当てられた。

活動計画の一例として、人道的見地からの規制適用免除の項目では、以前は患者4,000名以下の疾患が対象だったが患者8,000名以下の疾患にも拡大されることも示されている。

510(k)免除

“21st Century Cures Act”に示唆された規制緩和だが、まず7月に1,003種類の機器を対象に510(k)申請の免除が発表された(関連記事)。免除には、製品コードが同じである製品群のすべてが免除になる場合と、製品群の一部が免除になる場合があり、後者の一部免除製品には新しい製品コードが設けられた。

例えば、鼓膜聴力検査器という製品群のうち、ANSI S3.39に適合する製品は新たに製品コード“PTP”として510(k)免除対象となり、それ以外の製品は従来通り“NAS”として510(k)申請が必要となる。また、眼底カメラも510(k)免除対象となったが、データベースと接続するような製品は従来通り510(k)申請が必要である。

このように条件によって免除が決まっている製品群もあるので発表された表の免除条件をよく確認するなどして対応することが求められる。

NEST

4月のセミナーでの解説(関連記事)の通り、医療機器に関するビッグデータを構築しようという構想のもと計画されているのが“NEST(National Evaluation System for Health Technology)”である。患者により広く最新の情報を提供し、治療の判断に役立て、機器のイノベーションと患者のアクセスの架け橋になるものとされている。“21st Century Cures Act”で言及されている患者の経験データの活用をこのNESTが担っていくと考えられる。

背景としては、タイムリーな市場導入が期待される一方、安全性データの確保には時間とコストがかかるというジレンマの中で、厳格さを求めると数が不十分な市販前試験と、現状で有害事象の報告に課題があるもののデータベース活用の有効性が見えてきた市販後評価のバランスを見直していこうという考えがある。

約5年前から構想が練られており、“Coordinating Center”を中心としたネットワークとしてデモ・プロジェクトもはじまっている。NESTの確立はFDA CDRH(医療機器・放射線保健センター)の戦略的プライオリティのトップ項目の1つとされており、“Real-world Evidence”の使用増加とデータベースへの登録増加には具体的な数値目標も設定されている。今後NESTの活用に伴うガイダンス等の発表が予想されるため、関係のある業者は注意深く見ていく必要がある。

アジア各国の医療機器規制動向

ASEAN諸国の医療機器規制の整合化の取り組みであるAMDD(ASEAN医療機器指令)については、シンガポール、ラオス、ベトナムの3カ国で批准が済んだものの、7カ国で批准準備中である。各国はあくまでAMDDをガイドラインとして自国の法規制に落とし込んでいくことになるため、各国の法規制への対応が必要になる。各国の法規制やAMDDの最新状況は、IMDRFのアジア組織であるAHWP(Asian Harmonizaton Working Party)のホームページが参考になる。

ここではベトナム、マレーシア、インドの3カ国で最近新たな動きがあったので紹介する。特にベトナム、インドでCEマーキングを行っていない製品を販売している業者は規制のハードルが上がっているため要注意である。

・ベトナム
今年初めに通知が発表され、これまでの比較的シンプルなルールから変更され、新たなクラス分類と登録方法などが示された。A~Dのクラス分類が設定され、ベトナムの医療機器分類に従うものと、それではカバーされないものは日本、アメリカ、欧州などのクラス分類ルールに従うとされた。クラス分類ごとの登録が必要となり、クラスAは既に期限(2017年6月末)が過ぎ、クラスB~Dの登録期限は今年12月末となっている。登録にはクラスごとに要求事項が定められており、該当する業者は対応が求められる。

・マレーシア
今年7月に通知が出され、以前“Fast Track”として駆け込み申請された案件について正式な対応期限が示された。登録要件の全面施行は2018年1月1日からとされ、現在申請中の案件については今年10月31日までに第三者認証機関にあたるCABの審査を完了、規制当局であるMDAの申請を完了するとされた。

・インド
世界の大きな市場の中で唯一、医療機器に関する近代的な規制枠組が設けられていなかったが、従来の“Drugs and Cosmetics Act”に代わって、2018年1月1日より施行される規則として“Medical Device Rules”が制定された。規制対象の医療機器として23品目が示され、GHTF(Global Harmonization Task Force)と同じクラス分類(クラスA~D)が示された。クラスごとに必要なライセンスと臨床評価、QMSなどが示された。

またクラス分類リスト案として医療機器462品目のクラスが示されているが、上記の23品目に入っていない製品も462品目のリストには入っていることは要注意である。Medical Device Rulesには安全と性能の基本原則案も示されている。


セミナーではこの後、本年5月に発効した欧州医療機器規制(MDR)についてテュフズードジャパン株式会社から田淵栄子氏(同社MHS事業部法規制・品質保証責任者)が解説。大きな流れとして、米国では開発の迅速化、欧州では規制の厳格化という対照的な動きが浮き彫りになった。その後、両セッションを通じての活発な質疑応答が行われた。

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