2017/09/25
9月7日、東邦大学と東京工業大学は、東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科 高井雄二郎准教授と東京工業大学工学院システム制御系 塚越秀行准教授の研究チームが、1本の極細構造のチューブ内に流体圧を印加することにより、ミミズのような蠕動運動を生成する仕組み(Mono-line Drive)を開発したと発表した。
By:Medtec Japan編集部
この仕組みを用いることによって、将来、気管支内を自走して肺内の目標の病変まで自動的にたどりつき、病変の採取や治療が行えるオートガイド・ロボットの開発を目指す。
● 背景
肺がんを代表とする呼吸器疾患において、診断および治療の精度を高めるためには、肺内病変の生体検査が不可欠だ。現在は気管支鏡検査による用手的生検を行っているが、気管支の分岐が末梢に行くほど多岐かつ細くなるため、それを確実に選択し推進する微細な移動調整が難しいという課題がある。施行医による技術差もあり、確実に病変に生検鉗子を到達させることが難しく、診断精度が十分とは言えない。
● Mono-line Driveについて
気管支内視鏡で十分な検査を行うためには、肺内の目標まで確実に到達させることのできる器具と仕組みの開発が必要だが、そのために克服すべき課題とされているのが、極細で分岐が多岐に渡る気管支内でも生検鉗子を確実に目標に進められる仕組みだった。
今回開発したMono-line Driveは、1本のチューブ内への加減圧だけで複数のチャンバーに進行波を生成するように設計されており、これにより、気管支のような極細な構造の中を蠕動運動で進むことが可能になった。Mono-line Driveには、推進方向を選択するための湾曲機能や、管路径の変化に適応するための屈曲推進機能も搭載されており、気管支モデルを用いてこれらの有効性を確認した。
画像1 Mono-line Driveの動作原理 |
画像2 分岐部での方向操舵 |
画像3 気管支モデル内の搬送実験 |
● 今後の展開
推進可能な分岐確度の拡大や、カメラ等を搭載し気管支内部の情報収集等を行い、生体検査や治療に活用できる機能の開発と、器具の実用化を目指す。