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最新規格IEC 60601-1-2:2014の試験対応

By:白井秀泰(沖エンジニアリング株式会社EMC事業部EMCグループ)

1.はじめに

近年、EMC(電磁的両立性)や製品安全に関する規格要求は増加する傾向にあり、設計段階からの規格対応の必要性が高まっている。

本稿ではIEC60601-1-2:2014(第4版)の主な変更点及び設計段階から検討した方が良い内容について述べる。

2.EMCの医療規格動向

医用電気機器のEMCに関する国際規格としてIEC 60601-1-2が定められている。日本国内では今年4月からJIST0601-1-2:2012(第2版)が移行期間を経て強制適用となった。一方、米国や欧州は表1のように最新版IEC 60601-1-2:2014(第4版)の適用が既に開始され、強制適用の時期も決められている。日本国内においても、JIS化の検討後、適用開始が見込まれている。

表1 各国の規格動向(クリックで拡大)

米国や欧州に向けて開発した医用電気機器は、2019年1月1日からIEC60601-1-2:2014(第4版)の規格への強制適用が迫っている、製造業者は規格対応の準備をしておかなければならない。

3.第4版の主な変更点

第4版の主な変更点を図1に示す。リスクマネジメントが要求される背景には、使用環境に避けることのできない電磁妨害源が存在することを想定しており、その電磁妨害源が存在しても医用電気機器の基礎安全と基本性能に影響しないことをリスクマネジメントによって確認する。リスクマネジメントの実施は、製造業者が意図した使用の電磁環境を決め、その電磁環境で、基礎安全と基本性能を保ち続けることに影響するおそれのあるリスクを抽出し、EMC試験によってリスクが受容できるか判定し、リスクマネジメントファイルにまとめる。次に主な変更点と試験内容について説明する。

図1 第4版の主な変更点(クリックで拡大)

使用環境別のイミュニティ規定
医用電気機器は、使用する電磁環境に存在する電磁妨害源(最大レベル)によって引き起こされるリスクを試験によって確認する。そのため、使用する環境に応じたイミュニティ試験レベルを適用することになる。その考えから、図2のような3つの環境に分類されている。

図2 意図した使用環境例(クリックで拡大)

例えば、携帯形医用電気機器は自動車内、病院内や住宅環境内での使用も考えられるため、それらすべてを使用環境とした場合は、自動車規格の試験も検討しなければならない。

医用電気機器は、意図した使用環境によって試験内容が異なるため、注意が必要である。

環境別による試験要求項目
IEC 60601-1-2第3版と第4版の試験要求項目を表2に示す。大きな変更として、静電気放電試験のレベルが大幅に高くなった。また、放射イミュニティ試験では試験周波数及び変調信号が追加され、試験レベルも高くなった。自動車内で使用する製品には、過渡サージ試験が追加された。

表2 試験内容の変更点(クリックで拡大)

4.第4版のイミュニティ試験の対応

4.1 静電気放電(IEC 61000-4-2)

静電気放電試験は、静電気を帯電した人体が電子機器に触れた場合に生じる静電気放電に対する耐性を評価する試験である。

静電気放電試験の考え方
住宅環境に医用電気機器を使用する場合、静電気の発生する条件は湿度や使用者の着用素材などにより発生電圧が異なるため、規格要求である15kVを超えることもあり規格要求以上の試験レベルも検討が必要である。

IEC 60601-1-2第4版で静電気放電の試験レベルは大幅に高くなっているため、製造業者は製品の設計段階から静電気放電に対する耐性を考慮した設計が必要となる。

4.2 放射イミュニティ(IEC 61000-4-3)

放射イミュニティは、携帯電話等の無線機器からの放射や、電子機器からの不要輻射に曝された場合の耐性を評価する試験である。

表3 第4版の要求周波数と携帯電話利用周波数(国内)の比較表(クリックで拡大)

放射イミュニティ試験の考え方
表3はIEC 60601-1-2第4版で要求される周波数と日本国内の携帯電話利用周波数を比較したものである。表3よりIEC 60601-1-2第4版で要求される周波数は日本国内の携帯電話で使用されている周波数と異なっている。このような場合、日本国内向け医用電気機器の試験としては、差分の周波数を試験するか検討が必要である。

4.3 過渡サージ(ISO 7637-2)

過渡サージ試験は、自動車の点火系システム、オルタネータ、電気モーター類など自動車内部で発生した過渡的な妨害電圧の耐性を評価する試験である。

写真1 過渡サージ試験器
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過渡サージ試験の考え方

自動車の電源を使用する医用電気機器は、過渡的な妨害電圧の試験の検討が必要である。過渡的な妨害電圧は、発生するノイズ現象(点火系システム、オルタネータ、電気モーターなど)によりノイズ成分等が異なるため、注意が必要である。

 

 

5.OKIエンジニアリングの取り組み

OKIエンジニアリングでは、IEC 60601-1-2:2014(第4版)の試験対応はもちろんのこと、JAB認定試験所として信頼性の高い試験を提供している。更に、規格・試験を熟知したエンジニアによる技術支援で、高信頼性の医用電気機器の開発をサポートしている。また、医療機器に関わる企画、設計、試作評価、認定試験、量産製造等の全プロセスにおいて、それぞれ必要となる設計・開発支援、信頼性評価・解析及び各種試験サービスをワンストップで提供している。

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