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医療機器の放射線滅菌の現状と展望(1)

医療機器の放射線滅菌の現状と展望(1)

By:河合政利、梅景 聡(株式会社コーガアイソトープ営業部)

1.はじめに

日本における放射線滅菌の最初の工業用施設は、1969年に栃木県でガンマ線照射施設が建設され、1971年にディスポ注射器、注射針のガンマ線滅菌が認められた。以来、ガンマ線滅菌は、医療機器、実験動物飼料、容器・包装資材および衛生材料など多くの製品に用いられている。特に医療機器は、1997年に医薬監第1号で滅菌バリデーションが義務づけられ、2010年には医療機器の国内出荷額の29.5%1となった。現在では、ディスポ製品以外に再生系、動物由来・生体由来医療機器およびインプラントなど多くの医療機器がガンマ線滅菌製品となっている。

ガンマ線滅菌は、製造工程の最終段階での処理となるため各製品の製造工程を変更することなく、製品を個包装後、梱包した状態で処理ができる。そのため、自社で設備を設置しなくても委託すれば滅菌処理ができ、透過力が強いため梱包形状に制限を受けずに処理ができる。

本稿では、ガンマ線滅菌の特徴、医療機器の滅菌保証および利用例を紹介する。

2.ガンマ線滅菌の特徴

■ 特徴

ガンマ線は、紫外線や赤外線、テレビ・ラジオの電波と同じ電磁波(光)の一種である。X線は、ガンマ線とは発生場所が異なるが、ガンマ線と同じ波長領域となる。ガンマ線は、X線と同様に物質への透過力が強いため、ガンマ線滅菌は次のような特徴がある。

・包装、梱包形態を選ばず最終梱包で滅菌できる
放射線滅菌は、包装・梱包形態を選ばず、最終梱包で滅菌ができる。最終梱包は、ガスおよび蒸気が浸透する構造を考慮する必要がない。また、照射は開封せずに行うため、異物の混入がない。

・高密度の製品でも処理できる
ガンマ線の透過力を活かし、高密度の製品や金属、液体および粉体も中心まで滅菌ができる。

・残留物がなく、照射後すぐに使用できる
密封されたコバルト60線源による既知のエネルギーのガンマ線照射により、放射能が生成、残留することはない。放射線滅菌は、ガス抜きや乾燥時間が必要なく、滅菌後すぐに使用できる。

表1にガンマ線滅菌と各滅菌方法との比較を示す。表1に示すように、上記の特徴の他にガンマ線滅菌は、処理中の温度上昇がほとんどない、照射後は線量確認のみで出荷できる、といったものが挙げられる。

表1 各滅菌法の比較
各滅菌法の比較

一方、ガンマ線照射により、一部の高分子を使用した製品の物性変化や着色といった変化が起こる問題がある。製品への影響の度合いは、材質や線量により異なるため、事前に試験を行い、どの線量まで問題ないかを確認する必要がある。現在では様々な耐放射線材料が開発されており、新製品の検討段階で滅菌方法も踏まえた材料選択を推奨する。また、高分子の劣化対策として、脱酸素や冷凍照射で照射の影響を抑えることもできる。

専用照射容器
図1 専用照射容器

■ 照射装置

当社では、放射線源にコバルト60を使用し、そのコバルト60線源から自然に発生するガンマ線を照射している。照射方法は、専用の照射容器(図1参照)に最終梱包製品をカートンケースのまま充填する。照射容器は、図2の照射装置までコンベヤにより搬送される。搬送された照射容器は、ガンマ線を均一的に照射するために、コバルト60線源の周りを、横に4列上下に2段、一定時間で移動している。製品の密度により照射容器内線量分布(低線量域~高線量域)は異なる(図3参照)が、最大線量値と最小線量値の比は1.1~1.6倍程度である。

照射装置 照射容器内線量分布モデル図
図2 照射装置 図3 照射容器内線量分布モデル図

 

(1) (2)滅菌保証、医療機器の利用例 →

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