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二層検出器搭載スペクトラルCTの有用性

ByMEDTEC Japan編集部

7月19日、株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンは昨年日本に初めて導入された二層検出器搭載型CT装置「IQon(アイコン)スペクトラルCT」に関するプレスセミナーを東京で開催。通常のCT画像とともに、任意のX線エネルギーでの画像が得られる同機の最大の特徴とそれによる臨床上の有用性が紹介された。


二層検出器がX線を分光

まずフィリップス エレクトロニクス ジャパン フィリップスCTマーケティングの髙瀨英知氏が同機の技術的特徴を解説。X線CTでは、エネルギー(波長)に幅のあるX線を放出し、ガドリニウム系の検出器がX線を受けて発光し、その光をフォトダイオードが電気信号に変換することで画像が得られる。放出するX線はエネルギーの幅があるのに対して、検出するのはある一定のエネルギーに限られている。このため、X線のエネルギーによって吸収率が変わる物質があるにもかかわらず、一定のエネルギーしか検出しないため異なる物質を同じように映してしまうという課題がある。

それに対して、白色光をプリズムで分光すれば様々なスペクトルの光が得られるように、X線の検出器を工夫すれば様々なスペクトルのX線画像を得られ、より多くの情報を得られるのではないかというアイディアがあった。

そこで、上層に低エネルギーのX線を検出するイットリウム系、下層に高エネルギーのX線を検出するガドリニウム系の検出器を組み合わせることで、高・低エネルギーのX線を分離して電気信号に変換し、2つの信号により任意の単一エネルギーの画像を数学的に合成する2層検出器を開発。16列のNano Panel Prism検出器としてIQonスペクトラルCTに搭載した。これで光を分光するようにX線を分光できることになった。

これにより同機では、通常のCT画像に加えて、40keV~200keVでの画像(161種類)に加え、造影剤であるヨードの集積をみるヨード密度強調画像や、原子番号で色分けする実効原子番号画像、造影剤の影響を除去できる仮想単純画像など、追加169種類のスペクトラル画像を提供する。現時点で海外50台、国内6台が稼働しており、採用件数を順調に伸ばしている。

患者にやさしい検査と的確な診断・治療を

次に熊本中央病院放射線科の片平和博氏が実際の臨床経験に基づいたIQonスペクトラルCTのメリットの一部を紹介した。同院は同機を昨年導入し、すでに5,000件の超える診断実績がある。

まず大きいのは造影剤を減らせることだ。X線CTの造影剤として使われているヨードは腎機能が低下した患者ではより一層腎機能を悪化させるおそれがあり、造影に十分な量を使えない場合が多い。特に高齢者や急性の心血管疾患で搬送される患者では、腎機能が悪化している場合が多く、治療方針の決定にとって重要な情報となる高精度な造影CT画像を得られるか、放射線科の役割が大きくなる状況が多い。造影剤をあまり入れられず十分な画像が得られないケースもある。

IQonスペクトラルCTでは、X線のスペクトラルで多様な画像が得られるため、少量の造影剤でも診断や治療にとって重要な画像を提供できる。

例えば、大量の下血と急激な貧血がある患者では、動脈性の出血が疑われ造影CTで速やかに出血部位を探すことが求められる。腎機能低下もあり規定量の造影剤が使えない場合でも、IQonスペクトラルCTでは通常の4割の造影剤で十分な血管造影を行うことができ、適切な診断と治療を行うことができた。また、腎機能低下した胃癌患者の腹腔鏡手術では、術前に減量した造影剤で3D CT画像を得て血管の位置を確認し、血管を避けて手術を行うことができた。

同院の実践では、造影剤を規定量の4分の1とするプロトコルで十分な画像が得られるとともに、腎機能低下もきたさないことが示されている。

次に、造影剤を注入する際の注射針を細くできるメリットもあげられた。造影CTを行う場合、造影剤を急速・大量に静脈から注入する必要があるため一般的に太い注射針(20G)を用いる。そのため、高齢者など血管が細い患者ではうまく注射針を刺すことができず、検査を断念しなければならないこともある。

IQonスペクトラルCTでは、細い注射針(22Gなど)で造影剤を従来より少量で、遅い速度で注入しても、十分な画像が得られる。

その他、MRIの方が有利といわれる脳梗塞の診断でもIQonスペクトラルCTで適切な診断ができることや、緊急度の高い腸管虚血や絞扼性イレウスでもヨード画像を組み合わせて適切に診断できること、造影剤の影響を除外する仮想単純画像を使って転移腫瘍と血栓を区別できること、分光情報から原子番号ごとに色分けを行う実効原子番号画像で結石の種類を鑑別できることなども紹介された。

片平氏は、これらはメリットの一部としながら、IQonスペクトラルCTの有用性を、造影剤が減らせたり注射針を細くできたりするなどの患者にやさしいというメリット、さらに1回の検査で多くの情報を得られ多くの情報から的確な診断ができるメリットとまとめる。これまでMRIは濃度分解能、CTは空間分解能にすぐれるとされ、MRIは空間分解能を高める方向で高性能化が進んでいる。これに対して、IQonスペクトラルCTはエネルギー分解能を高めることでMRIに対抗できる装置になっているという。

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