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高性能コンフォーマルなパリレンコーティングを医療機器に

ByMEDTEC Japan編集部

医療機器のコーティングとして長年の実績をもつパリレンコーティングを提供するSpecialty Coating Systems〔2016年1月にKISCO株式会社により買収(関連記事)〕は、医療機器の特性に合わせた様々なコーティングを開発している。

元々は航空機の結露などによる電子部品のリーク対策で開発されたコーティングで45年以上の歴史をもつ。

パリレンとはパラキシリレン系ポリマーの略称で、日本パリレン合同会社の登録商標。基本となるパリレンNは直鎖構造をもち非常に結晶性が高い。

特長は、生体適合性と生物学的安定性、バリア特性(液体・気体)、薄膜(0.05~75μm)、耐薬品性、絶縁耐力、コンフォーマル(ピンホールフリー、ボイドフリー、エッジ部へのコート)、細部浸透性など(下写真)。金属真空蒸着に似た独自開発の気相蒸着重合(VDP)で蒸着される。

結晶性が高く絶縁耐力に優れ、周波数に依存せず低い誘電率・誘電正接特性をもっているパリレンNに加え、パリレンNのベンゼン環上の水素1つを塩素に置換した構造のパリレンCは電気的特性と物理的特性のバランスがよく、湿気や腐食性ガスに対するバリア性に優れている。

さらに最も新しいグレードであるパリレンHTは、パリレンNのα水素原子をフッ素で置換している。高い温度特性(短時間なら450℃まで使用可能)、紫外線に対する耐久性により過酷な条件下での長時間の使用を可能にしている。またパリレングレード中で摩擦係数と誘電率が最も低く、隙間浸透力がもっとも優れている。

パリレンN、C、HTのいずれも、細胞毒性、感作性、刺激性/皮内反応、急性毒性、体内埋め込み(2週、12週、24週)、血液適合性(溶血性およびPPT)、発熱性を確認するISO-10993の生物学的試験要件を満たしている。また、USP分類Ⅵへ認定済、米FDAのDrug & Device Master Fileにも登録済みだ。

上記の生体適合性、生物学的安定性に加えて、バリア特性、絶縁性、潤滑性を生かして以下のような医療機器に使用されている。

埋め込み型の医療機器

冠動脈ステント、神経刺激装置、人工蝸牛殻、ペースメーカの表面不活性化用途に採用されている。パリレンは部材と体液との接触を遮断して部材を保護するとともに、コーティング表面は生体適合性を示す。薬剤溶出性ステントでは、パリレンCコーティングの上にさらに薬剤を含むコポリマーをコーティングするが、パリレンCはこの工程でプライマーとして重要な役割を担っている。

エラストマー製品

カテーテルや医療用シール、注入器部品などの医療グレードのシリコーンやゴム材には柔軟性の高いコーティングが求められる。パリレンはこの用途に用いられ、材料表面の摩擦および粘着性を低減し、変色や異物の付着を抑制する。

医療用成型機器

パリレンは潤滑性が高いため、ワイヤマンドレルなど医療用成型機器の離型材として用いられる。パリレンコーティングは剥落が生じないため、型の寿命を大幅に延ばす。また機械的に堅牢で化学的にも不活性なため、成型物に不純物が混入することもない。

薬剤容器

パリレンのバリア特性と潤滑性は、プレフィルドシリンジや薬剤容器等に適している。ミクロンレベルのパリレン被膜は、薬剤と直接接触する基材からの成分溶出や薬剤による基材への影響を防止する。また、パリレンの不活性な被膜は静摩擦係数・動摩擦係数の値が近く、ブレークアウト力(静止摩擦力)を打ち消す。

医療用電子機器

医療用電子機器は湿気や体液、バイオガスなどによって故障を起こすことがあるが、パリレンによって回路・デバイスを保護することにより、使用中のトラブルを防ぐとともに機器の寿命を延ばし、修理コストを下げることができる。パリレンはEUの有害物質使用規制(RoHS)に準拠している。

ライフサイエンス分野では、細胞培養機器などでのコーティングにも導入されており、新たな応用分野への訴求も進めている。

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