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ケンブリッジコンサルタンツ、最新医療機器のコンセプトデモを実施

ByMEDTEC Japan編集部

英国ケンブリッジに拠点を置く技術コンサルティング企業のケンブリッジコンサルタンツは、6月30日に東京で「イノベーションセミナー」を開催した。同日開かれたメディア懇親会では、世界市場で求められているイノベーションとその背景、イノベーションを醸成する環境、ケンブリッジコンサルタンツの取り組みなどについて講演があり、医療機器を含むコンセプトデモも行われた。

まず同社 CCOのRichard Traherne氏は「イノベーションのトリガーとなる」と題して講演。現在多くの産業分野で世界的な競争が激化し差別化の必要性が高まっており、企業にはイノベーションを求めるプレッシャーも高まっている。イノベーションを求めてケンブリッジ大学に集まるベンチャー資本も非常に大きくなっている。

1960年代にケンブリッジ大学の大学院生によって設立されたケンブリッジコンサルタンツは欧州のハイテク・クラスターの黎明期を支え、1980年代に成長を加速、1990年代には湾岸戦争やブラック・ウェンズデーといった経済停滞にもかかわらず成長を続け、多くのスピンアウトやM&Aを行っている。

現在、従業員の9割がハードウェア、ソフトウェアの設計・開発ができるエンジニア、科学者であり、他のコンサルタント企業と一線を画す技術コンサルタント企業として世界的にユニークな地位を確立している。同社が関係した代表的なイノベーションには、空港の管制システム、ワイヤレス・ペースメーカ、イリジウム衛星、Bluetooth通信、DNA解析・合成、ドミノ・プリンティングがあげられる。

Traherne氏は同社の経験からイノベーションを生み出すためのトリガーとして、“Human talent catalysts”、“Commercialisation catalysts”、“Technology convergence catalysts”の3つの触媒(catalyst)をあげた。これらを活用して、イノベーションが生まれるプロセスを育てることが重要とまとめた。

次に、同社の医療機器事業部外科・インターベンション機器グループ責任者であるSimon Karger氏が「医療機器分野のユーザーニーズと技術革新」と題して講演。イノベーションにはユーザーニーズへの洞察(insight)が必要だが、開発の初期段階だけでなく開発プロセス全体において洞察に基づいているか継続的にチェックを行うことが特に重要と強調した。そのためにも開発にかかわる様々な専門性をもつ人々がプロセスを通して綿密に連携することが求められる。

医療機器の分野は、イノベーションが求められながらも安全性の問題を避けられないため変化に非常に慎重という特徴がある。その中でも医療機器分野のイノベーションのドライバーとなる洞察は次の3点にまとめられる。すなわち、患者のアウトカム、コスト、スループット(治療する患者数など)である。医療機器の開発にあたっては、これらを改善するものとなるかを指針として常に立ち返って考えなくてはならない。

また近年、人口構造の変化などから中心型(大病院ベース)のケアから分散型(コミュニティベース)のケアというニーズの方向性も明らかになってきた。これに対応して新たな技術的ニーズも生まれている。同社が手がけた事例として、Karger氏は同社のチームがインドの医療状況に基づいて開発した手術システムを紹介した。インドでは設備の整った病院が少ないため、患者が病院に行くのではなく、外科医が持ち運んで地域を移動して手術を行える携帯型の手術システムを開発したのである。

コンセプトデモでは、医療機器関連では下記の3点が展示された。いずれも上記の洞察に基づいて最新技術を投入したコンセプト品である。

AR連動手術支援システム

マイクロソフトのHoloLensヘッドセットを使い実際の患者と、画像検査に基づき立体化した解剖画像やバイタルなどのAR(augmented reality、拡張現実)画像を重ね合わせて表示することで手術をサポートする。音声の指示やレンズ越しに指を動かすことで画面の切り替えや音声のon-offなどができる。将来的に実際の手術で使用されることを目指している。

AXIS:次世代の小型ロボット

患者の水晶体を除去し、人工のレンズに置き換える白内障手術をモデルとした小型ロボット。モニターを見ながらコントローラーの操作で精密な手技を可能にする。先端が1.8mmのアーム(1.0mmのワーキングチャネル)は細径ワイヤーとベアリングで滑らかに稼働する。摩擦を少なくし駆動機構の極小化する技術がカギで、白内障手術だけでなく他の手術にも応用可能と考えている。

感染症の迅速診断を可能にする小型NMRスキャナー

米国の医療機器スタートアップであるWaveGuide社と開発している、結核のポイント・オブ・ケア(POC)診断を可能にするNMR(核磁気共鳴)スキャナー(開発品)。従来、検体(痰)を検査機関に送って数週間かかっていた検査が、被検者がいる場所で数分で完了する。結果を医師に送信する機能もあり、操作はタブレット感覚。結核は中国やインド、南アフリカなどで増加しているが、従来の検査では結果が得られるまで時間がかかるため、陽性とわかった後の患者のフォローアップに課題があった。これを用いればすぐに患者を見つけ早期に治療を開始できる。検出技術を保有していたWaveGuide社だが、完成品にまでするノウハウがなく同社に連携を持ちかけた。POC検査あるいは“decentralized testing(検査室以外の検査)”は、例えば性感染症などの検査、人口が拡散している地域での検査でのニーズが高まっており同社も注目している。

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