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画像診断におけるAI活用の現状と展望

ByMEDTEC Japan編集部

医療分野でのAI活用に期待が高まっており、日本国内ではAIを用いた診療支援の保険診療上のインセンティブ付けの検討も厚労省ではじまっている。「画像センシング展2017(6/7~9@パシフィコ横浜)」では、メディカル分野の招待講演として、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター超音波応用開発研究部の中田典生氏が登壇し、画像診断におけるAI活用の国内外の最新状況を紹介した。


AI活用が画像診断の第4の革命に

冒頭に中田氏が紹介したのは“Data Science Bowl”。毎年ターゲットを変えて、世界中のデータ・サイエンティストがディープラーニング(DL)のアルゴリズムを競うコンテストで、今年のテーマは胸部CT画像から肺がんを検出するというテーマだった。

最新のAI技術者が医用画像に注目している状況だが、医用画像を扱う放射線科の歴史を振り返ってみるとDLの活用はX線の発見、CTの発明、MRIの発明に続く第4の革命になると考えられている。

中田氏が放射線科医が行ってきた「読影」の歴史を踏まえて指摘するのは、読影がデータを解釈して情報(インフォメーション)を生み出す行為だということだ。新たな技術を活用するにあたっても、こうした背景(データとインフォメーションが区別されること)への理解が重要だという。

日本はCTMRI大国だが放射線科医不足

次に放射線科の観点からみた日本の医療事情の特殊性が紹介された。最近のデータでは、CTでは台数、人口100名当たりの台数とも日本が世界1位。世界のCTの半数以上、欧州全体よりも多くのCTが日本にある。またMRIでは台数は世界2位(1位は米国)、人口100名当たりの台数は世界1位だ。

それに対して、CT、MRIで撮影した画像を読影する放射線科医は世界各国に比べても圧倒的に少ない。つまり、データからインフォメーションを生み出す仕組みが不足しているということであり、国や厚労省でも課題意識は非常に高くなっている。

最新の米国学会での未来予測

中田氏も参加した米医用画像情報学会(SIIM)が開催する2016年9月のカンファレンス(Conference on Machine Intelligence in Medical Imaging)では、画像診断のAI活用について肯定派と否定派の立場から未来予測が行われた。

肯定派からは、乳腺マンモグラフィーと胸部X線単純撮影では5年以内、CT、MRI、超音波診断のある部分は10年以内、ほとんどの画像診断は15~20年以内にAIによる診断に置き換わると主張された。

一方で否定派からは、AIのアルゴリズムでは思考の過程が一般の医師や患者には理解できないブラックボックスになっている、作られたアルゴリズムが正しいかを証明するために長い時間がかかる、診断まで行うAIをFDAが承認するには相当な時間がかかるといった主張がなされた。

AIDLの要素となる技術の進化

CT、MRIをスクリーニングして医師が発見できないような病変を発見するためにDLの開発が進められているが、DL以前に1980年代からニューラルネットワークを用いたコンピュータ支援診断(CAD)は行われていた。

DLの源流は、日本の福島邦彦氏が開発した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の原型である「ネオコグニトロン」であり、人間の大脳の視覚野をシミュレートしたモデルだった。

この技術がCV(computer vision)として研究が進み、最近では画像認識では人間よりエラー率が低いことが示されている。さらにより効率的に画像認識ができる「転移学習」が注目されている。

また、CVほどではないものの、自然言語処理(NLP)も進化している。CNNと再帰的ニューラルネットワーク(RNN)と組み合わせて、CNNで認識した画像に自動でキャプションを追加する試みが行われている。応用すれば読影に使えるのではと考えられている。

さらに強化学習(RL)の分野では、囲碁のトップ棋士に勝利したGoogle DeepMindのAlphaGoが脚光を浴びた。同社は今後は医療分野に特化すると表明しており、英国で医療機関との連携を行っている。

国内外のAI医療応用の近未来

日本政府は2016年の未来投資会議などでAI活用に言及し、近い将来の診療報酬改定でAI活用へのインセンティブ付けを目指して、厚労省では「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」で検討がはじまっている。保険診療に組み込むためには、AIを用いた診療支援技術を医療機器として承認する必要があるため、それに向けてガイドラインの作成を目指している。

米国では、ピッツバーグ大学メディカルセンター(UPMC)のような企業化した大規模な医療機関において医療機器メーカーと提携しAIを用いた読影サービスをグローバルに展開しようという動きがある。一方で、“Project AiAi”のようにオープンソースのCADアルゴリズムをインドやベトナムに提供しようという動きもある。日本でも規模の大小はあるものの様々な企業の取り組みが進んでいる。

最後に中田氏は、ハーバード大学/マサチューセッツ総合病院のKeith Dreyer氏の“Man with AI”と“Man without AI”の図式を引用し、ここしばらく(30年くらい)は人間とAIの対決ではなく、AIを使う人間とAIを使わない人間の対決の図式が続くのではないかと締めくくった。

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