MEDTEC Online

ロボットとITを生かした医療技術・世界観の共有

ロボットとITを生かした医療技術・世界観の共有

ByMedtec Japan編集部

通信や画像解析、AI・機械学習といった情報技術の発展は目ざましい。これらの技術を生かして医療技術や医師の“世界観”をデジタル化し共有可能なものにして、医療の質の向上を目指そうという構想を“医デジ化”として提唱しているのが、電気通信大学の小泉憲裕氏である。

東京大学で機械工学を専攻し光石衛教授のもとロボットの医療応用で研究を進め、2001年には岡山大学と共同で遠隔操作により医師が超音波診断を行うロボットを世界で初めて開発・臨床応用した。それ以来、一貫してロボットを使った超音波診断・治療システムの開発に取り組んできた。

近年では、画像処理や機械学習の技術を取り入れ、超音波画像で遮蔽された領域を補って可視化したり、臓器の領域を示したり、病変を評価したりするロボットビジョンのシステムを開発している(下写真)。超音波診断装置を使って的確な診断を行える医師は日本国内で7,000人程度と言われており、このシステムで画像や画像を見る方法を多くの人で共有できれば、遠隔診断や医師の負担軽減、医療レベルの大きな底上げにつながる。

小泉憲裕氏のスライドより転載

また、超音波治療の患部追従システムも開発している。集束超音波治療法(HIFU)は一部のがんに対して行われているが、患者の呼吸などの体動で患部が動くため、患部に合わせて超音波を当てるためには患者に一時的に呼吸を止めてもらう必要があった。そこで、2方向から超音波を当て画像処理することにより、体動を補償し患部を追従しながら超音波を当て続けられるシステムを開発した(下写真)。これまでの研究で体動の約90%を補償でき、呼吸性体動では1mmの精度で追従できることが示されている。この超音波画像をガイドとして使えば、超音波ガイド下で行う様々な手技の容易化にもつながる。

小泉憲裕氏のスライドより転載

その他、超音波を使った内臓脂肪面積の計測にも取り組んでいる。メタボリックシンドロームや肥満症のスクリーニングには内蔵脂肪面積の計測が有効と考えられているが、正確な計測ができるCTは被ばくやコストの問題、簡易な方法として広く行われているウエスト周囲径やBMIの計測では感度が低く見逃しの問題がある。そこで、超音波を使って簡便に内蔵脂肪面積の推定を行う方法を開発した。近い将来の実用化を目指して医師や企業と研究を進めている。

小泉氏は、ルネサンス期にイタリア・フィレンツェの大富豪MEDCI(メディチ)家がパトロンとなって様々な芸術や活版印刷に代表される技術が花開いたことを引き合いに〔その影響力は“MEDCI effect(メディチ効果)”と呼ばれる〕、近年のITと医療・バイオテクノロジーの融合状況を“Me-Dig IT(メディジット)効果”と呼んでいる。

研究室にはプログラミングをはじめ、IT(なかでもロボット技術)に関してきわめて能力の高い学生が揃っており、小泉氏自身は東大時代から10年以上にわたって心臓外科医の月原弘之氏との共同研究を継続しており、毎週1度のペースでの濃密なミーティングを続けている。企業との連携も含め、研究室がプラットホームとなって様々な人材と技術をつなげることで化学反応を起こし、“医デジ化”イノベーションを推進していく。

カテゴリー: