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米国医療機器規制の最新動向:Medtecセミナーレポート

米国医療機器規制の最新動向:Medtecセミナーレポート

By:Medtec Japan編集部
 
Medtec Japan 2017のセミナーでは、海外諸国の市場動向と法規制の最新動向を解説するプログラムを企画している。米国の法規制の最新動向については、DEKRAサーティフィケーション・ジャパン株式会社の肘井一也氏(同社医療機器事業部マネージングディレクター)より講演があった。

まず、米国の法規制の基礎として、体制と特徴、製品区分(リスク)ごとの申請アウトライン、提出資料、ガイダンス文書、QSR査察、審査料金などについて解説があった。その後、最新の文書やニュースに基づいて主要な動きが紹介された。


データ活用の推進構想:NEST

最近の動きの1つはNEST(National Evaluation System for Health Technology)である。これは、FDAが医療機器の評価と販売許可に関する確かなエビデンスをより効率的に得るために構築することが提案されているもので、製品のライフサイクルすべてにおいて統計的かつシステマティックに製造業者および市場からのデータを収集し活用する。製品登録や電子カルテ、保険申請等のデータをビッグデータとして活用し、患者への情報提供と機器のイノベーションに役立てるものと考えられている。

NESTが提案されている背景としては、患者へのベネフィットとなるタイムリーな導入と、安全性データの確保というジレンマがある。市販前試験のみでは不確定のリスク/ベネフィットが残るため、市販後のデータをこれまで以上に広範に活用しようというコンセプトだ。これにより厳密な市販前試験と効果的な市販後評価のバランスをとることが目指される。

2012年から構想され、2015年からはPlanning Boardによるレポートが作成されるようになった。最新の2016年のレポートでは、NESTを運用するにあたっての推奨事項などが提案されている。Coordinating Centerを中心に様々なステークホルダーがデータを共有し、ステークホルダーと公的機関が相互にコミュニケーション可能なプラットフォームを形成するイメージが示された。また、販売前/後のエビデンスの有効なバランスを見直し、より積極的な安全監視システムの構築を目指すPhase 1、クラスⅡ機器のデータ収集の強化や、ITシステムの統合や患者を仲介させたデータ共有手法の促進などを模索するPhase 2のデモ・プロジェクトが提案されている。

医療機器のエビデンス収集の課題と対応という観点からステークホルダー調査も行われている。医療機器製造業者からは、承認に必要なデータ収集やMDR(有害事象)報告の効率化への期待、臨床研究者からは、患者の縦割りトラッキングや効率的なリアル・ワールド・エビデンス(実臨床での治療結果、安全性データなど)の利用への期待、保険業者からはより価値に基づいた支払のためのヘルスIT活用への期待などがあげられた。

その結果に基づき、FDAの医療機器・放射線保健センター(CDRH)ではNESTの確立を2016年~2017年の戦略的プライオリティのトップ項目の1つとしている。NESTの開発と実施に予算を獲得することや、具体的なデータベース登録件数の数値目標も示されている。

革新と規制緩和を求めて:21st Century Act

次に紹介されたのは昨年(2016年)12月に成立した“21st Century Act”(21世紀の治療法)である。NESTは医療機器を対象としたデータベースだが、本法の適用範囲は医薬品と医療機器である。背景としては、米国がヘルスケア革新のワールドリーダーとなるべきという考えや、過去の投資対効果が芳しくないという反省がある。主な目的と考えられるのは下記だ。

  • ヘルスケア革新の推進
  • 治験/承認システムの緩和化
    • Unmet Medical Needsに対する研究の促進
    • NIH(米国立衛生研究所)予算を大幅増加
    • 臨床試験の加速化/標準化
    • 医薬品、医療機器のFDA承認規制を緩和
    • 患者の経験データの活用

世界的な規制の厳格化の流れに反する動きとして注目すべきである。また、多くの点で上述のNESTと共通の方向性があることから2013年から討議開始した本法案からFDAによるNESTの構想に少なからず影響があったことが推測される。

医薬品について主なトピックは、臨床試験データの共有化/標準化、患者の経験データの構築および活用、ブレークスルー的な薬品の承認の迅速化、希少疾患用に新規適用が認められた薬品の排他性期間の延長など。

医療機器関連では、ブレークスルー的機器の優先審査、品質システムの第三者評価、科学的証拠として市場経験(市販後監視)データ・公的な文献・他国データの活用、特定のクラス1/2医療機器の規制緩和、人道的見地からの特殊な機器の申請免除の変更(対象患者数を4,000名から8,000名に増加)、IVD製品のCLIA免除の研究ガイドラインなどのトピックがあげられる。

21st Century Cures Actがもたらす影響について、本法による勝者(Winner)と敗者(Loser)をまとめた記事が紹介された。勝者としては、製薬会社、医療機器製造業者、NIH、リアル・ワールド・エビデンスがあげられている。敗者としてはFDAと従来の臨床試験方法であるランダム化臨床試験があげられている。

ただ今後の実際の影響力については、1月に誕生したトランプ政権の動向やFDA長官がいまだに決まっていないなどの状況から不透明な部分が残ると肘井氏は付け加えた。

第三者機関審査や510(k)免除などを含め、今後もフォローを

さらに、21st Century Cures Actの影響からか最近FDA文書の発行が活発になっており、その中から注目すべき動きが紹介された。

1つは昨年9月に“510(k) Third Party Review Program Draft Guidance”が発行された第三者機関審査についてである。国際的な品質管理システムに関する第三者機関審査の枠組であるMDSAP参加への対応、第三者機関審査に対するFDAの考えが示された。第三者機関は認証を行うのではなく、認証を行うFDAに対して推薦を行う(あくまで認証を行うのはFDA)枠組が維持されることが明らかになった。

また、21st Century Cures Actでも要求されている510(k)申請免除製品について、3月14日に候補となる製品のリストが米国官報で発表された(5月15日までパブリックコメント募集)。FDAの限られたリソースを高リスク製品に集中するねらいが明らかになったが、510(k)が免除されてもQSRが適用となる場合などがあるため、製品ごとに注意深く見ていく必要がある。

まとめとして肘井氏は、米国では国際的な動きに逆行する規制緩和を実施する方向性が示されていること、今後21st Century Cures Actに基づいてFDAからガイダンス等の発行が増えると予想されること、関係者は米国情報を注意深くフォローすべきであることを指摘して締めくくった。

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