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医療用プラスチックの動向:Medtec Japan 2017レポート

医療用プラスチックの動向:Medtec Japan 2017レポート

By:安田武夫(安田ポリマーリサーチ研究所 所長)

医療機器の設計・製造に関する「アジア最大級」の展示会・セミナー、Medtec Japan 2017、医療用エレクトロニクス展、医療ICT・在宅医療展、介護・福祉ロボット&機器 開発展、検査キット完成品&開発展が2017年4月19日(水)から21日(金)の3日間、東京ビッグサイトで同時開催された。

出展社数は544社/団体、会期中の来場者は、約32,561人で盛況裡に終了した。本稿では、この展示会で注目されたプラスチックなどの展示を写真とともに紹介する。


写真1 生分解性ポリエステル
RESOMER(エボニック ジャパン)
写真2 ポリ乳酸の成形品
(コービオンジャパン)
写真3 PEEK製三つ孔チューブ
(ダイセル・エボニック)

1. 生分解性ポリエステルRESOMER(エボニック ジャパン)

 写真1に示す。RESOMERには、PGA(ポリグリコール酸)、PLA(ポリ乳酸)、PLGA〔ポリ(ラクチド-グリコリド)共重合体〕などがある。PLA/PGAは、体内でエステル主鎖の加水分解により無害で非毒性の化合物に分解される生分解性ポリエステルであり、外科縫合糸や生体吸収性インプラントとして利用されている。さらに薬品のカプセル化やDDSへの利用にも大きな関心が持たれている。

2. PLA(ポリ乳酸)の成形品(コービオンジャパン)

 写真2にコービオンジャパンのPLA製の医療用のボルトやインプラント等の成形品を示す。これも、生分解性を活かした用途である。

3. PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製三つ孔チューブ(ダイセル・エボニック)

 写真3に示す。内視鏡用またはカテーテルに使用される。三つ孔にすることで、1つのチューブに最大3通りの機能を働かせることができる。内視鏡処置具はフレキシビリティが要求されてきたが、最新の検査や治療方法では同時に耐キンク性のある適度な剛性が求められる。PEEKは高い耐薬品性と適度な剛性、および弾力性があり、最先端の医療現場のニーズに応えられる21。歯科用PEEKの用途例、PEEKのカールチューブ、医療用PA12(ポリアミド12)等も展示した。

写真4 チューブ・カテーテル
〔HTP-MEDS(日立金属)〕
写真5 カテーテルの挿入器具
(Martech Medical Products, Inc)
写真6 PSU製医療用コネクタ(ODU)

4. チューブ・カテーテル〔HTP-MEDS(日立金属)〕

 写真4に示す。カテーテルは、最近の医療現場では非常に重要な役割を果たしている医療器具である。日立金属は、2016年にカテーテル用チューブのメーカーのHTP-MEDS(米国)を買収した。その業務内容を展示した。

5. カテーテルとその挿入器具(Martech Medical Products, Inc.

 写真5に示す。カテーテルの挿入用器具は、フッ素樹脂〔PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)〕が使用されている。PTFEの良好な潤滑性によりカテーテルを滑らかに挿入できる。生体適合性、衛生性にも優れることも生かしている。

6. PSU(ポリスルホン)製医療用コネクタ(ODU

 写真6に示す。各種医療機器の接続用のコネクタで、PSUが使用されている。過酷な滅菌処理に耐え、耐クリープ性、電気絶縁性、寸法安定性、衛生性に優れたことなどを生したものである。多くのコネクタを展示した。

写真7 PVDF製配管コネクタ
(アラム)
写真8 セラミックパッケージ
(京セラ)
写真9 高柔軟FPC(太洋工業)

7. PVDF(ポリフッ化ビニリデン)製配管コネクタ(アラム)

 写真7に示す。治療時に使用する医療用配管チューブのコネクタである。PVDFの特徴である耐熱性、耐薬品性、耐水性、衛生性に優れていることを生かしている。その他、PP(ポリプロピレン)、PSU(ポリスルホン)等のコネクタ等の配管材料を展示した。

8. セラミックパッケージ〔京セラ(UBMグループの同時開催展「ヘルスケアIT 2017」に出展)

 写真8に示す。血流センサなどの多くのセンサを支えるのがセラミックパッケージである。キャビティ構造を持ち、気密封止や真空封止が可能な小型表面実装ができる。セラミックスは剛性が高く、熱膨張係数が小さいため、センサなどの実装にも適している2

9.高柔軟FPC(フレキシブルプリント基板)(太洋工業)

 写真9に示す。柔軟性に優れたポリウレタンベースのFPCである。最近話題となっているウェアラブル機器に向いている。人体への応用のため、耐熱性は不要であるが、身体に合わせて曲がる柔軟性を生かしている。ポリイミドベースなど多くのユニークなFPCを展示した。

写真10 COP製マイクロ流路
チップ(日本ゼオン)
写真11 医療用途向け
ワイヤレス給電装置(TDK)
写真12 GF強化PA66製鉗子
(吉川化成)

10. COP(シクロオレフィンポリマー)製マイクロ流路チップ(日本ゼオン)

 写真10に示す。透明性の良好なCOPを使用した医療用マイクロ流路で、医療関連の基礎実験に使用可能である。COPを使用した各種医療器具を展示した。

11. 医療用途向けワイヤレス給電機器(TDK

 写真11に示す。同社保有の磁性体を使用したワイヤレス給電装置で、ハウジングはABS樹脂が使用されている。防水が必要な医療機器・設備やウェアラブル機器などの防水・防塵対応、洗浄改善のためのワイヤレス給電に使用される。その特徴は、

  • 要求に応じた幅広い(5~200W)の電力伝送にカスタムで対応
  • 最大200mmのコイル間距離での電送が可能
  • 水中・多湿環境下での電源コネクタ―対応

12. GF強化PA66(ポリアミド66)製鉗子(吉川化成)

 写真12に示す。鉗子は、主に手術器具として使用されるもので、物をつかんだり、牽引したりすることに使用する医療器具である。GF強化PAが使用されている。強度、剛性、生体適合性などが採用理由であろう。ディスポーザブル器具である。

写真13 同種材レーザー
溶着接合
(浜松ホトニクス)
写真14 PFAビードレス溶着
(陽和)
写真15 PEEKの着色品
(サンケミ)

13. 同種材レーザー溶着接合(浜松ホトニクス)

 写真13に示す。同種の熱可塑性樹脂を透過性樹脂、吸収性樹脂の2種類を使用するとレーザーを当てるだけで溶着できる。この写真は、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、GF-PA66(ポリアミド66)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、GF-芳香族PA(ポリアミド)同士の溶着例を示した。異種材接合(エラストマー、熱硬化性接着剤)の接合例も展示した。

14. PFA(ポリテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)ビードレス溶着(陽和)

 写真14に示す。溶着が困難であったフッ素樹脂であるPFAの溶着である。溶接工法とは異なり、対象物同士の接合面を加熱溶融し、加圧することによって一体化させる接合方法である。接合部分は、母材と同等の強度が得られる。

その特徴は、

  • 溶着部の内側にできるビード(接合部の盛り上がり)を最小限に抑制する溶着技術である
  • 高い信頼性で、きれいな仕上がりとなる
  • 省スペース・コンパクト化となる3

PTFE溶着も紹介していた。

15. PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の着色品(サンケミ)

 写真15に示す。PEEKは元来、着色性があまり良好でないため、鮮やかな着色が難しい材料である。同社の優れたコンパウンド技術により、ダイセル・エボニック社のPEEKは美麗な着色が可能となった。その他、PAEやPA12に造影剤入り着色品ペレットも展示した。

写真16 3Dプリンタで
製作した
人工臓器
(丸紅情報システムズ)
写真17 超音波霧化機(本多電子) 写真18 皮膚貼付用テープ(3M)

16. 3Dプリンタで製作した人工臓器(丸紅情報システムズ)

 写真16に示す。近年、試作品の作成が手軽な3Dプリンタが話題になっている。医療関連の臓器の作成は3Dプリンタの最もよい適用例である。CTやMRIなどの医療機器の進歩で患者さん固有の臓器の3Dデータが容易に得られる。3Dプリンタを利用し、実物モデルが作成できる。それを使用した模擬手術も可能となった。3Dプリンタは優れた試作装置だが、長い成形、成形品の強度不足等の問題である。医療関連用途ではこれらの問題がそれほど大きくならないので、今後ますます利用されることが期待される。東レエンジニアリング、八十島プロシードなども展示した。

17. 超音波霧化機(本多電子)

 写真17に示す。超音波によって液剤を微粒化して噴霧する装置である。消臭除菌効果のある液剤をタンクに入れた場合には、病院・障害者施設・介護施設の廊下、企業の喫煙室・会議室、学校・塾・保育施設の教室、ペットショップ、飲食店・カラオケルーム、ホテル等の客室・喫煙室等の消臭除菌に使用される。その他では、霧を使った演出、保湿等に使用される4。ハウジングにABS樹脂が使用されている。

18. 皮膚貼付用テープ(3M

 写真18に示す。PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにシリコーン系の粘着剤を使用したものである。医療用途生体センサやウェアラブルセンサ用に使用可能である。シリコーン系粘着剤は、高価であるが、特定の使用条件下で相応の価値がある。それは、皮膚に貼付したときの負担の少ないことで、ISO 10993に基づく生物学安全性を検証している。親水処理フィルム製品等も展示した。

写真19 環境センサ
(オムロン)
写真20 結束バンド
(ヘラマンタイトン)
写真21 PVCの真空・圧空
成形品(荒木製作所)

19. 環境センサ(オムロン)

 写真19に示す。温度、湿度、気圧、照度、紫外線、音圧、加速度を計測するためのセンシング機能と無線通信機能を持ち、小型パッケージに搭載した複合型センシングコンポーネントである。設置するだけで周囲の様々な環境情報をリアルタイムに収集する。ユーザーは無線で接続したネットワークを介してクラウドサーバー等に収集した環境情報をデータ送信し、スマートフォン等で遠隔管理できる。ハウジングはABS樹脂である。

20. 結束バンド(ヘラマンタイトン)

 写真20に示す。PA(ポリアミド)製の抗菌・防カビ等の効果を発揮する結束バンドのインシュロックである。大腸菌・黄色ブドウ球菌にも抑制・防止効果がある。特徴は、

  • 一般的生活環境で、検出頻度の高い2,000種類以上のウイルスや細菌、藻類に抗菌作用
  • 細菌だけでなく71種類のカビにも効果発揮
  • 使用している抗菌・防カビ剤は様々な毒性試験で安全性が実証されている

21. PVCの真空・圧空成形品(荒木製作所)

 写真21に示す。PVC(ポリ塩化ビニル)系材料のシートを真空・圧空成形した各種医療器械のハウジングなどの成形品を展示した。温和な成形条件で大型製品が成形可能なことが特徴である。日本成工なども同様なものを展示した。

その他の興味ある展示としては、

  • LED照明付き透明高機能樹脂製鈎(安井)
  • ヒューマンビジョンコンポ(オムロン):100万人以上の顔情報が支える画像センシング技術
  • 防汚タイプのフッ素表面処理剤(NOK)
  • PBT製フットスイッチ(国際電業)
  • フッ素樹脂製各種医療用器具(サーパス工業)
  • PPS製医療機器部品(タカシン)
  • プラスチック製医療用フィルター(日本ポール、GVSジャパンなど)
  • PGA等を使用した注射針(山田精工など)
  • 医療機器用トレイ(イーストマンケミカル)
  • 各種医療用チューブ(古河電工、ニチアス等)
  • 医療用PE製不織布(旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社)

等が挙げられる。

Medtec Japanは、医療機器の設計・製造に関する「アジア最大級」の展示会の名に恥じない展示会に発展した。少子高齢化がますます進む中、iPS細胞、DDSなど医療関連技術の進歩も期待される。本展示会もそれに合わせて進歩していくであろう。

著者紹介:1970年に東北大学大学院を修了し三菱化成工業(現:三菱化学)に入社。その後同社などでプラスチック(ポリマーの研究も含む)関連の業務に従事。1998年に安田ポリマーリサーチ研究所を創設し、プラスチック関連の執筆や講演活動を行う。


参考文献

  1. プラスチックスエージ, MAY 2017 p.27
  2. URL:http://www.kyocera.co.jp/prdct/semicon/semi /smd_pkg/
  3. URL:http://www.yohwa.co.jp/technology/ beadless.html
  4. URL:https://www.honda-el.co.jp/product /jm200.html 
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