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中小ものづくり企業5社による国産スパイナルシステムへの挑戦(2)

薬事が大きなハードルに

──昨年(2016年)9月に薬事承認を取得、11月に保険診療適用となりました。

田中 経済的な負担はもちろんですが、医療機器に求められる法的要求事項を満たすことの困難さにおいて薬事の問題は中小企業にとって最も大きなハードルだと思います。

後藤 当社の歴史でも届出のみで販売できるクラスⅠの開発がほとんどで、クラスⅢで薬事承認を申請したのは20年以上前という状態でした。そこで、最新の薬事対応について改めて一から勉強することになりました。コンサルタントを利用しアドバイスをいただくとともに、自分でも様々なセミナーや講習会に参加し、社外から情報収集につとめました。

クラスⅢにもなると薬事対応に非常にコストがかかります。承認申請だけでなく、体内に埋め込まれるインプラントでは長期的な品質と安全性を確認するための試験も必要ですので、コストが積み重なっていきます。例えば、強度などを評価する機械的安全性試験は1回600万円ほどかかります。またこの試験を実施するまでに何度も試作を繰り返し、その都度必要な強度試験、機能試験を重ねるため費用は更にかさみます。

薬事の申請においては単に書類を揃えれば良いというものではありません。必要な記載事項は定められているものの、各々の記載内容に関しては当然のことながら申請する製品の特性に合わせた記載内容にしなければなりません。これについてはコンサルタントを利用した申請書作成を行い万全を期したつもりでした。しかしいざ申請に際し、同様の製品に関して申請経験ある薬事担当者に意見を求めたところ、資料の構成や並び順、文章の表現方法に至る細かい点までアドバイスを頂きようやく満足できる申請書の完成に至りました。やはり申請する製品に精通していることが重要であり、そういう方の成功例、失敗例の意見も取り入れつつ、申請する製品の特性を如何に適切に審査する方に伝えられるかが重要だと感じました。

「RENGスパイナルシステム」の工具類(左)と滅菌包装済みのインプラント(右)

● 社外から情報収集し、様々な選択肢から道をひらく

後藤 製品の開発から薬事の申請に至るまで1つの正しい道というものがあるようで実はありません。富士山を登る道がたくさんあるように、いろいろなアドバイスをもらいながら迷いながら自分で道を切りひらいてきたという感じです。

また当社はQMS(品質管理システム)としてISO 13485を取得していましたが、クラスの高い医療機器を開発するには更なる体制づくりも必須になりますので、この点もハードルになると思います。実際、RENGスパイナルシステムの承認申請にあたっても審査を行うPMDA(医薬品医療機器総合機構)の立ち入り審査を受けました。

PMDAでは後発医療機器に関して申請から承認まで4カ月という目標を持っていますが、それ以上の期間を要しています。私たちも申請後に差し戻し(照会事項)を何度も受けましたが、結果としては4カ月を切る期間(3カ月3週間)で承認を得ることができました。申請書作成に万全を期したことが功を奏し、差し戻しがあっても大きな変更は要求されず、都度コンサルタントとの連携も密に何れも速やかに対応できたことがよかったと思います。

田中 また今回、当社では滅菌製品の扱いも初めての挑戦でした。

後藤 滅菌・洗浄・包装については鈴与株式会社、フジモリ産業株式会社のご協力が大きかったです。特に洗浄・包装に関しては決まった枠にはめるものではなく、製品の構成、形状に合わせてオリジナルの仕様を決めなければならず試行錯誤の毎日でした。放射線滅菌は鈴与株式会社とパイプの太い日本照射サービス株式会社を利用しました。この3社はMedtec Japan 2017においても共同ブースで出展を行っており、洗浄・包装から滅菌に至るまでのトータルサービスにより、早期製品化に大きな役割を果たしたと言えます。

──情報収集ではどのような機会が役に立ちましたか。

後藤 セミナーや講習会、その他お付き合いのある会社の薬事担当者に会いに社外に出ていって、同じような経験をされた方に直接お話を聞くことは非常に参考になります。

金子 先ほど後藤がいったようにゴールに向かって1つの決まったルートがあるわけではないですから、多くの人の話を聞くことは非常に重要です。薬事のコンサルタントや弁理士でも一人の人の意見を絶対と思わずに、自分たちに合った正解は何なのかを探すことが大事ですね。多くの選択肢を自分たちで探してきたから、道がひらけてきたという側面はあると思います。

RENGパートナーズ」の今後とメッセージ

──さて、製品についてはどのような評価ですか。

田中 後発品でありながら新製品として選ばれる製品とするために、使い勝手の点で医用工学者、見栄えの点で工業デザイナーに協力を依頼しました。販売はKiSCO株式会社(本社:神戸市)に委託しており、現在までで手術実績は20例ほどです。日本人の手になじみ、シンプルで取り回しのよい製品としておおむね好評価をいただいています。価格は保険適用で脊椎スクリューが10万円、ロッドが35,900円と決まりました。使用される平均数量から1回の手術で約50万円の売上となります。

──今後の課題は?

金子 まだまだ外国製品との差を感じています。サイズバリエーションや一部性能面で「やはり外国製のほうが…」という声を聞いています。さらに製品の競争力を高めていかなければと思っています。

追加・改良の作業はすでに始めており、次は海外展開もできる製品を目指しています。また今回の開発をベースにして次の製品開発へ挑戦したいと考えています。

──今後医療機器開発に挑戦しようとしている方々へ、アドバイスはございますか?

田中 私たちが製造してきた医療器械では、長く実績のあるものが評価されています。新しい製品を作って終わりではなく、その後もユーザーの評価を聞いて改良を重ねていかないと、長く使っていただく製品になりません。1つの製品について、しつこく掘り下げていくという気持ちで、医療機器開発に取り組んでいただきたいと思います。

後藤 今回の開発では、すべての課題で失敗したのではというくらい多くの失敗をしました。失敗のたびに、いろいろな経験者の方にアドバイスをもらって、あきらめずに前に進んできたことが成果につながったと思います。

──何か失敗があった後のリカバリーはどのようにされていましたか。

金子 全員で情報を共有し、即時対応に努めました。どの会社も前向きに対応に取り掛かっていただいたことがよかったと思います。

──会合はどのくらいの頻度でされていましたか。

金子 必ずしも全社参加ではないですが3年半で58回です。年3回は全体会議として全社が集まりました。

──Medtec大賞の審査では、田中医科さんのマネージメントがすぐれていたのではという声もありました。ご自身で手ごたえはありましたか。

田中 そうですね。よくも悪くも物事は誰かが決めないと前に進みません。誰も決定を行わずに長い時間を過ごしてしまうことがないようにしました。

今回よかったのは、いったん決めたことに対しては各社が従ってくれ、何か失敗があればすぐにじゃあこうしよう、とスピーディに対応してくれたことです。

──業界の方々や異業種の方々にもこのような企業連携による開発はとても参考になると思います。今回そのご苦労の一端をお伺いできたことで、医療機器の開発者や今後開発を志す方々に大変心強く、ためになるお話になると思います。ありがとうございました。

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