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中小ものづくり企業5社による国産スパイナルシステムへの挑戦(1)

中小ものづくり企業5社による国産スパイナルシステムへの挑戦(1)

By:Medtec Japan編集部

今年のMedtec大賞は「RENGパートナーズ」が受賞

国内で新たに開発された優れた医療機器を表彰する「Medtecイノベーション大賞」は今年で第6回を数える。今回も多彩な製品が応募され、Medtec Japan 2017初日(4月19日)の最終審査は多くの聴衆を集めた。その中で大賞を受賞したのは、中小企業5社によって開発された整形外科インプラントシステム、「RENGスパイナルシステム」だ。ユニークな企業連携の仕組みでクラスⅢ医療機器に挑んだ点が評価された(関連記事)。

今回、この企業連携である「RENGパートナーズ」で取りまとめ役を担った株式会社田中医科器械製作所(本社:東京都北区)にお伺いし、代表取締役の田中一嘉氏、経営企画室室長の金子しのぶ氏、薬務部副部長の後藤広樹氏に、開発の経緯や開発過程における要点などを振り返っていただいた。医療機器開発を志す企業、人々にとって示唆に富む話となった(以下、敬称略)。


● 長年の製造業とディーラー経験を生かして国産インプラントを目指す

──まず御社のこれまでと今回の開発のきっかけについてお聞かせください。

田中 当社は手術用の鉗子や開創器などの医療用鋼製器械の製造では101年の歴史があります。また、約40年前から外国製の整形外科用インプラントの取次販売をはじめました。インプラントについてはディーラーとしての販売経験を通じて各社製品の構造や性質への理解を深めてきました。

そのなかで、自社の製造の経験や技術を生かして同じようなものの製造ができるのではないかという思いが大きくなってきました。医療機器は輸入超過で、特に整形外科インプラントでは外国製のシェアが非常に高くなっています。国産製品にチャレンジする意義は大きいと考えました。

「RENGパートナーズ」のロゴ。各社が最強技術を持ち寄って連なる「連(レン)」に由来する

2012年頃から準備をはじめ、以前から協力関係にあった会社を中心に声をかけ、4社(株式会社スズキプレシオン株式会社東鋼奈良精工株式会社株式会社湯原製作所)が集まりました。そして2013年6月に「RENGプロジェクト」を発足しました。

──計画当初からディスカッションを行い、開発コンセプトを練られていたようですね。

金子 医工連携の失敗例を学ぶなかで同じ失敗をしないようにと話をしていました。失敗例としてあがったのは、普通の小規模業者である我々が新技術・付加価値にこだわりすぎること、一部の医師のニーズに基づいた開発になっていること、既存製品の情報(ユーザーの評価など)を十分に把握していないこと、医師以外のユーザーも含めた現場事情を十分に把握していないこと、といったことです。

このような反省を踏まえ、私たちは、後発品で標準的な仕様の脊椎インプラントで、外国製品がもつ課題を1つでも解決すること、医師以外のユーザーからも選ばれる工夫を加えることを目標としました。

また、大きな課題となったのは、外国製品の特許の問題です。整形外科用インプラントには多くの特許があり、それらを侵害せずに国産の脊椎インプラントを作ることができるかという疑問がありました。

弁理士に相談し特許包囲網を回避

──特許の問題をどのように解決したのでしょうか。

田中 以前からお付き合いのあった創成国際特許事務所の弁理士さんに調査をお願いしたところ、脊椎インプラントに関連する特許は80件以上だとわかりました。3カ月かけて1つ1つの内容を確認していただき、対策することで回避ができるとの回答をいただきました。開発の具体化に向けて大きなステップになりました。

弁理士さんに将来の販売戦略も含めて相談し、最初から不可能と決めつけられるのではなく、柔軟に考えていただいたのがよかったと思います。

──行政の補助金は活用されましたか。

田中 経産省(当時)や自治体の補助金の活用を検討しました。平成25年度の「ふくしま医療福祉機器開発補助金」に採択されました。

原資が税金である補助金を利用するからには、利益を上げ開発費の回収にこだわろうという点も当初から意見を統一していました。

最初から「えんま帳」で各社の貢献度を記録

──各社の役割分担と事業化した後の利益の配分についても取り決めをされたとのことですが。

田中 役割分担については各社の強みがあり技術への信頼もありますから、当社から提案し、それを受け入れていただきました。

利益の配分については、曖昧なまま開発が進んで最終的にもめることを避けるため、初期段階で取り決めを行いました。当社の顧問弁護士に相談し、貢献度を測るための項目として、開発に必要な資源や作業の一覧表を作りました。この表をもとに各社の貢献度を点数化し、それを集計することで利益の配分率を決めるという形です。プロジェクト発足時からこの「えんま帳」に各社の実績を都度記録していきました。これを明文化して5社にてパートナーシップ協定を結びました。

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