新技術

医療技術に関する欧州特許出願の状況

医療技術のイノベーターは、昨年(2016年)の欧州特許庁の年次報告書における特許権保護ランキングの首位を維持しており、医療技術は引き続き商品化の点で他分野をリードしていることがわかった。

ByThomas Prock(オリジナルの英文記事はこちら

2016年、欧州の特許申請件数では、デジタル・コミュニケーション、バイオテクノロジー、製薬関連技術といった分野よりも医療技術に関するものが多かった。申請件数でコンピューター・テクノロジーを上回った2007年以来、医療機器が先頭を守っている。

2016年の医療技術に関する欧州特許申請件数は、過去最大であった2015年の12,531件から2.1%減少し12,263件になったものの、他の技術分野に対するリードを失いそうにない。10,915件のデジタル・コミュニケーションが2位、10,657件のコンピューター技術が3位である。

この10年で異なるヘルスケア関連技術の間での特許出願件数の差は毎年拡大しており、医療技術がバイオテクノロジーや製薬技術を引き離しつつある。1は、ヘルスケア関連技術について世界各国からの欧州特許申請の分野のトレンドを示している。

図1 ヘルスケア関連技術分野における欧州の特許申請の推移(2007年~2016年)

この図では、過去10年間で医療技術に関連する特許出願件数が毎年平均約4%ずつ増加していることが示されている(2010年の山とその後の谷は特許ルールの変更に伴うものであり、その後回復している)。

医療機器分野で2016年に申請された欧州特許出願のうち、41%は欧州(5,023件)から、38%は米国(4,606件)からの申請である。このデータは、医療技術の研究開発は欧州より米国でより活発であることを示唆している。なぜなら申請者は、外国で特許を保護する前に国内市場で自分の発明を保護する傾向があるからだ。米国からの申請が欧州からの申請よりわずかに少ないだけという事実がこれを示している。

図2 世界各国・地域からの医療技術関連の発明に関する欧州特許申請の推移(2007年~2016年)

医療機器分野の上位10社のうち3社(首位のフィリップス、6位のサノフィ、9位のフレゼニウス)が欧州企業であり、5社(2位のメドトロニック、3位のジョンソン・エンド・ジョンソン、5位のボストン・サイエンティフィック、7位のプロクター・アンド・ギャンブル、10位のベクトン・ディッキンソン)は米国拠点である。米国のヘルスケア市場はハイレベルな研究開発で知られているが、その他に欧州特許申請件数で多いのは日本(全体の9%で4位のオリンパスを含む)、韓国(全体の2%)、中国(全体の1%)である。

これらの市場からの申請件数は過去10年間で増加してきたが、上位の米国と欧州に入れ替わりがあるほかは、順位に大きな変化はない。米国は2015年の17%の増加によって首位になったが、2016年はほぼ2014年の水準に戻った。

図3 欧州5カ国からの医療技術関連の発明に関する欧州特許申請の推移(2007年~2016年)

欧州では過去10年間、ドイツの企業や申請者が申請件数でトップを走っている。オランダが2位だが、その90%はフィリップスによるものだ。その他、スイス、フランス、英国がトップ5を争っている。

EPO(および世界知的所有権機関)によって定義されている医療技術カテゴリーにおける個別技術には、化合物、包帯、理学療法機器、医薬品の調製と投与、化学療法、電磁波治療、歯科、獣医学、一般診断、手術に関する装置が含まれる。EPOはそれぞれの技術の応用製品レベルでのデータは公表していないが、2003年以来の応用製品のレビューからは、出願件数が多いのは、インプラントやそれを体内に植込む装置や方法に関する分野であることが示唆されている。もう1つ重要な領域は、滅菌または消毒のための方法、装置、化学的処理である。

今回の統計は1年全体の出願数を反映したものだが、欧州の特許権保護を求める英国の申請者の数がやや減少している兆候がみられる。しかし、これが英国のEU離脱の決定によるものとは考えにくい。

欧州特許の審査と付与を行う欧州特許庁はEUの機関ではなく、ノルウェー、スイス、トルコ、アルバニアを含む非EUの多国間協定である欧州特許条約に基づいている。したがって、英国のEU離脱後も、申請者の拠点が英国であれ他国であれ、英国での特許権保護は欧州特許制度を通じて行われる。

著者紹介:Thomas Prock, partner at Marks & Clerk in London, is a Chartered (UK), German, and European patent attorney.

→ 海外市場の最新動向セミナーはこちらから
〔4月21日(金) Medtec Japanセミナー〕

カテゴリー: