新技術

グラフェンを用いた安価な診断機器

研究者らは、1つわずか5ドルという安さで多様な診断装置の作製に使用できる、個別の血液細胞を捕捉・分析する方法を見出した。

グラフェン酸化シートを加熱することで特定の化合物をシート表面に結合させることができる。その化合物は、DNAやタンパク質、細胞を含む特定の分子を選択的に結合する。この画像では処理済のシート(右)では未処理のシート(左)と比較して2倍近く効率よく細胞を捕捉することが示されている。

By:Kristopher Sturgis(オリジナルの英文記事はこちら

MITと台湾国立交通大学の研究者らがチームを組んで、グラフェンシートを使用して医療および生体試験用に少量の血液試料から個別の細胞を捕捉・分析する、新たな費用対効果の高い細胞分析法を開発した。この新しいシステムは、通常の医療施設や医療機器のないリソース不足の地域で使用できる、多様な低コストの診断試験を開発するために用いることができる。

このシステムは、特定の化合物を分離できる一連の酸化グラフェン特殊処理シートを使用する。その後酸化グラフェンは、比較的低い温度で材料を加熱できる技法である低温焼鈍(low‑temperature annealing)として知られるプロセスを使用して加熱される。この技法によって酸化グラフェンはシート表面上で特定の化合物に結合する。そしてこれらの化合物は例えばDNAや多様なタンパク質、さらには細胞全体など特異的に選択された分子に結合することができ、様々な診断試験に使用することができる。

このシステムで使用される酸化したグラフェンでは、研究者らが何年にもわたって試みてきたグラフェン独自の機械的および電気的性質を活用することを目指している。一度は驚きの素材として期待されたグラフェンは、次世代の革新的なナノエレクトロニクス装置を先導する素材となると考えられた。しかし、大規模な製造が困難なため、エレクトロニクスにおけるシリコンを代替するには至っていない。これらの困難にもかかわらず、研究者らは徐々にこの素材の新たな利用法の発見をはじめている。

今回の発見では、酸化グラフェン基板を使用して、より標的化した診断装置の作製に利用できる、特定の細胞と分子を捕捉する新たな取り組みが示唆されている。これらの新しいグラフェンシートの新規性は素材の処理後の性質にあり、それが特定の細胞および分子の捕捉時により高い成功率を達成することを可能にした。

これを示すために、研究チームは、特定のがんのバイオマーカーとして使用できる特定の免疫細胞をすばやく捕捉することができる分子を使用した。研究チームは、酸化グラフェン処理済シートは、全血試料から細胞を捕捉する時、通常の未処理の酸化グラフェンを使用して作製された装置と比較して約2倍近く効率がよかったことを示すことができた。

このシステムは細胞捕捉プロセスにおけるより標的化されたアプローチを可能にするだけでなく、試料の冷蔵や温度管理されたインキュベータを必要とすることなく、標準環境下で細胞および生体分子を捕捉・評価することができると研究者らは述べている。つまり、多様な診断装置の大量製造を1つ当たり5ドル未満で可能にし、リソースが限られた地域でPOCT(臨床現場即時検査)に使用できることを意味している。

チームはこの技術の探求を続けながら、スライドガラスに載せて顕微鏡で調べられる、様々な疾患の検査にこの方法を使用することができる単一装置を作り出すことを目指している。また、チームはこの方法が細胞レベルで最もまれな疾患の検出にさえも使用できるようになることを期待しつつ、細胞および生体分子の捕捉時の効率向上にも取り組んでいる。

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