ペースメーカとICDをMRI対応にする新しい方法

MRI対応ではない標準的なペースメーカや植込み型除細動器(ICD)で治療を受ける患者が特別なプロトコルに沿って安全にMRI検査を受けられる方法が研究されている。

By:Kristopher Sturgis(オリジナルの英文記事はこちら

心血管系の植込み機器で治療を受けており、MRI検査の必要がある患者にとって意義深い新しい研究がNew England Journal of Medicine誌に発表された。この研究ではMRI対応となっていないペースメーカとICDが、特別なプロトコルでは安全にMRI検査で使用できる可能性が示された。

スクリプス研究所のRobert J. Russo医師によると、この結果から心血管系の植込み機器で治療を受ける多くの患者のリスクが過大視されていることが示唆されるという。

「米国で推定200万人、それ以外の世界でさらに約600万人の患者がMRI非対応ペースメーカやICDによってMRIが禁忌となっています」と彼は説明する。「今回の結果から、標準的な心血管機器を植込まれた患者の誰もジェネレータの交換やリードの摘出といったリスクにさらされるべきではないこと、適切に実施されモニターされる非胸部MRI検査について不正確に認識され過大視されているリスクのためにそれへのアクセスを否定すべきではないことが示唆されます」。

この研究では、磁場強度1.5テスラのMRI検査のリスクを評価するために、1,246名の患者の標準的なペースメーカおよびICDの性能が検証された。1,500回以上のMRI検査が同一のプロトコルで実施された。患者は、MRI検査の前に可能なら機器を非ペーシングモードに設定して非侵襲の検査を受けた。MRI検査の後に機器は元の設定に戻され、正常に動作するかが確認された。

全1,246名の患者の検査で、MRI検査中に機器が故障した患者はいなかった。危険な心調律障害をきたした患者もいなかった。6名の患者で心房細動あるいは心房粗動が報告されたが、どの患者も比較的短時間で自然に終息した。また、1名の患者でMRI検査後のジェネレータ交換が必要になったが、これは検査前にショック機能が残されていたためだという。

Russo氏によると今回の研究は2004年、ICDを植込まれた50歳の患者が神経系の疾患が疑われ、脳のMRI検査が必要になったことが出発点になっているという。この患者はICDのためにMRIができないとされたが、その後2001年以降に製造されたジェネレータの安全性に関する新情報が出た。Russo氏と彼の同僚たちは新しいプロトコルでMRI検査を行うことを決めた。これがきっかけとなり彼らは、MRI検査に適切にプログラムされた植込み機器で治療を受ける患者の有害事象の発生率を調べる研究に着手した。

包括的な研究によって一貫性のある結果が出たことで、次の疑問は、これらの植込み機器がMRIと安全に使用することができるとなればペースメーカやICDの業界にどのような影響があるかという点になる。

ボストン・サイエンティフィックのKenneth Stein氏はこの研究結果は機器メーカーにとって明るいニュースだという。

「これらの知見は、MRIと医療機器に対しての、またMRI環境下の危険を軽減するために使用できる技術的向上とプロトコルについての私たちの理解の進歩を裏付けるものです」とStein氏。「今回のMagnaSafe研究の共同スポンサーとして、私たちは研究成果の成功をうれしく思います。またこの論文を前進させた研究者たちの努力を祝福したいと思います」。

Stein氏は、ボストン・サイエンティフィックは革新的な心血管系植込み機器の開発・製造メーカーとして機器のあらゆるリスクを慎重に調査しているが、今回の結果は現行の規制やガイドラインを変える可能性があると付け加えている。

「これらの発見は現在MRIの使用が認められていない古い機器で治療している多くの患者にとって心強いものです」と彼はいう。「今回の結果は非常に特別なプロトコルが実施される場合だけに適用となることは強調しなければなりませんが、このようなデータをもとに規制当局や保険者が現状のガイドラインの変更を検討する可能性があると思います。ボストン・サイエンティフィックとしては、当社の現状および将来の心調律管理(CRM)機器の大多数について条件付きMRI対応とのラベリングを得ることを目指していきます。

このような発見はこのアプローチに対する私たちの自信を強めるものです」。

研究チームのリーダーとしてRusso氏は、今回の発見が、従来型の植込み機器で治療を受けており、他の診断や治療でMRIを必要とする患者に希望を与えるものであることに同意している。研究チームは最新の研究情報をすべての関係者が利用できるようにしようと努力している。

「私たちは情報を要求したすべての機器メーカーに研究結果を共有しましたが、ペースメーカ業界が何を計画しているかはわかりません」と彼はいう。「条件付きMRI対応というFDAのラベリングは興味深く、変化が大きいプロセスです。最新のプロセスでは動物やヒトでのテストを必要としない、コンピューターによるモデリングが重視されています。私は、FDAが、いくつかの評価が確立されたジェネレータやリードの組み合わせに対して、条件付きMRI対応のラベリングを遡及的に与えるために、今回のデータを利用してほしいと望んでいます」。

Russo氏は、研究チームは臨床的に胸部のMRI検査が適応となる患者へのリスクを調査しはじめるとともに、ペースメーカやICDに対するMRIに関連するリスクを評価する調査を継続すると述べている。また、より強磁場のMRI検査のリスクを評価するために3.0テスラのMRI磁場における機器の性能の検査もはじめる予定だと述べている。

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