MEDTEC Online

破損やアレルギーの懸念が少ない脊椎内固定器具

破損やアレルギーの懸念が少ない脊椎内固定器具

ByMedtec Japan編集部

1月4日、国立大学法人東北大学金属材料研究所は、同研究所 千葉晶彦教授、山中謙太助教らの研究グループが開発した「いわて発高付加価値コバルト合金:COBARION®」を用いた脊椎内固定器具(下写真)が、医療機器製造販売承認を取得したと発表した。

今回販売承認された脊椎内固定器具(写真提供:センチュリーメディカル株式会社)

コバルト合金は強さと硬さ、そして優れた耐食性・耐摩耗性を兼ね備えていることから、人工関節や歯科材料等、様々な医療用デバイス、インプラントに使用されている。今回器具に使用した「COBARION®」はヒトの金属アレルギーの主原因ともいわれるニッケルの含有量を極限まで低減したため、アレルギーの懸念が少ない金属素材であることが最大の特徴。今回の販売認証を受け、今後「COBARION®」の生体材料としての使用拡大が期待される。

本研究開発は厚生労働省「革新的医療機器創出促進等臨時特例交付金」を財源に、東北大学金属材料研究所、岩手医科大学、センチュリーメディカル株式会社が参画した「岩手県革新的医療機器等開発事業」を通して行われた。開発された脊椎内固定器具には株式会社エイワで製造されたコバルトクロム合金素材(COBARION®)が用いられている。

製品概要

(1) 名称

一般的名称:脊椎内固定器具
販売名:CMI コバルトクロムロッド

(2) クラス分類 Ⅲ(高度管理医療機器)
(3) 申請者名 センチュリーメディカル株式会社
(4) 承認年月日 平成 28 年 8 月 22 日
(5) 使用目的、効能又は効果 脊椎観血手術において、脊椎の矯正及び骨癒合、骨組織の修復までの一時的な固定を補助する固定用内副子であり、骨に直接把持するスクリュー(ネジ)やフック、ワイヤーなどと連結させる構成品の1つ。主な適応症例としては、脊椎側彎症、脊椎変性すべり症、脊椎後彎症などに併用される。
(6) 形状・構造及び原理等 (1) 原材料:コバルトクロム合金
(2) 外観、形状、及び構造:上写真の通り

製品化の経緯

脊椎内固定器具は骨組織が修復するまでの一時的な固定を補助する医療機器として脊椎の治療(脊椎側彎症など)によく使用されているが、現在国内で使用される脊椎内固定器具は米国製を中心に輸入品が90%以上を占めている。しかし日本人、特に若い女性患者には形状が合わず、術後の脊椎内固定器具の皮下突出や褥瘡形成の問題が生じているため、日本人の体格に適した国産品の開発が期待されている。

また、脊椎内固定器具の構成部材の1つである脊椎ロッドはチタン合金製が主流。脊椎側彎症の矯正固定手術中には、医師が矯正固定形状に脊椎ロッドを曲げる操作が行われるが、チタン合金はスプリングバック(金属を曲げ変形し、除荷した際に、弾性変形により元の形状に戻ること)が大きく、元の形に戻りやすいため操作性に劣るという問題があった。

さらに、脊椎側彎症といった脊椎ロッドに高負荷がかかる脊椎固定症例においては、疲労破壊に起因したロッド破損が散見され、より高強度で破損し難く、より安全に使用できる脊椎ロッドの開発が求められてきた。

このような背景から、岩手医科大学整形外科講座(当時。現・いわて脊椎側弯センター センター長)の山崎健准教授は、脊椎内固定器具の強度や形状の課題を解決すべく、千葉晶彦教授(現・東北大学金属材料研究所)が中心となって開発した「いわて発高付加価値コバルトクロム合金:COBARION®」に着目し、「COBARION®」を用いた脊椎内固定器具の開発を金属材料研究所とセンチュリーメディカル株式会社と共同で開始した。

2012年度からは岩手県より「革新的医療機器等開発事業」の補助を受け開発が進められた。千葉教授と山中謙太助教の研究グループは、難加工性である本合金の直径5 mm 程度のロッド形状への加工プロセスについて研究を行い、作製したロッド材の力学特性や耐食性の評価を行うことで、「COBARION®」の製造を行う株式会社エイワと共に高強度で疲労特性に優れるロッドの製造プロセスを確立。ロッド素材の試作と山崎准教授による評価を繰り返し、強度と曲げ操作性に優れた最適な特性を持たせることができた。

「いわて発高付加価値コバルト合金 COBARION®」について

「いわて発高付加価値コバルト合金:COBARION®」は、東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授(開発着手当時:岩手大学)が約20年前から開発を始めた合金で、その後、文部科学省・経済産業省・釜石市などの支援を受けて完成した。

コバルト合金は、耐熱用途以外にも、整形外科分野における人工関節などに使用される生体用合金として開発されてきた経緯があり、その用途に適した極めて高い強さと硬さおよび優れた耐食性・耐摩耗性を兼ね備えた金属素材だ。しかし、素材の製造には、合金元素としてヒトの金属アレルギーの主原因ともいわれるニッケルを添加することが不可欠だった。

「COBARION®」は、従来の生体用コバルト合金の持つ特徴はそのままに、ニッケルをその製造段階において極限まで減らすことに成功し、従来の生体用コバルト合金よりも「生体に優しい」ことが特徴。本技術は2010年5月に株式会社エイワ(釜石市)が立ち上げた金属事業部に技術移転され、商標「COBARION®」を取得し、製造販売を行っている。

2012年にはJIS規格適合材として人工関節用素材が株式会社エイワから初出荷され、最近では歯科用素材等にも採用されている。2012年3月からは医療用途以外にも適用を広げ、一般産業向けのさまざまな用途に適した合金開発を進めた結果、樹脂成形用金型や宝飾品等の多数のコバルト合金が生み出された。

カテゴリー: