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医療機器関連の注目技術 in 2017

MD+DI誌では業界の専門家に2017年にどのような医療技術が大きく飛躍するかをたずねた。

経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)システムの適応拡大から生体吸収性ステントまで、2016年に医療技術は大きな飛躍をとげた。2017年には何が待っているだろう?私たちは業界の専門家にいくつか予測をお願いした。2017年にビッグニュースになりそうな医療技術について、彼ら自身の言葉をここに紹介する。

クローズド・ループ・システム

「クローズド・ループ」治療システムは、生物学的状態がリアルタイムで継続的にモニターされ、ある生理学的状態を維持あるいは達成するために継続的に治療が調整されるシステムだ。

もっともわかりやすい例は、糖尿病患者に対して、連続的な血糖モニタリングと、インスリン投与を最適化するインスリンポンプを組み合わせる「人工膵臓」システム。もう1つの例として、てんかんやパーキンソン病といった脳神経疾患に対する、脳深部刺激(DBS)治療のクローズド・ループ・システムがあげられる。

自動調整システムには、上記のわかりやすい利点以上のメリットがある。例えば、パーキンソン病患者に対する継続的なDBS治療の効果は経時的に減衰し、最終的にはなくなってしまうが、(継続的な刺激ではなく)患者の実際の必要性に基づいたレジメでは、刺激の頻度と強度(用量)が変わるので、治療効果は機器の電池寿命と同じくらい持続する可能性がある。

メドトロニックは、世界初のハイブリッド・クローズド・ループの糖尿病治療システム、MiniMed 670Gを2017年春に米国で販売開始する予定だ。このシステムは血糖モニタリングをインスリン投与に結びつけるアルゴリズムを用いており、糖尿病患者によるインプットが少なくても血糖コントロールを効果的に行うことを可能にする。米国での糖尿病の有病率の高さや“世界初”であることから、この製品の発売は注目を集めるだろう。

メドトロニックのActiva PC+Sシステムは
標的化されたDBS治療を行いながら脳活動
を検知し記録する

メドトロニックは人工膵臓分野で先頭を走っており、さらにクローズド・ループのDBSシステム、Activa PC+Sシステムの開発を進めている。このシステムには標準的なDBS治療と、脳内の特定の部位の電位を記録するセンサが含まれる。このデータを集めることは、クローズド・ループのアルゴリズム開発の足がかりになる。他にも疼痛のような慢性疾患の治療に向けて開発中のシステムがある。Neuropace社もある種のてんかん患者を治療するための承認済システム、RNSシステムを製造している。

2017年には、様々な疾患を対象としたクローズド・ループ・システムの臨床試験が増えていくと考えられる。

—Herb Bresler, Senior research leader, consumer, industrial, and medical products, Battelle

個別化医療(personalized medicine

多くの分野で個別化へのトレンドがみられる。大きく進展した分野の1つはヒトゲノム・マッピングと薬物治療に対する個人の反応に対する研究だ。技術力とヒトゲノムへの理解によって今やターゲット治療が現実のものになりつつある。

また、3Dプリンティングは、個人の特徴や患者のニーズに合わせて治療をテーラーメードすることに利用されている。3Dプリントで再現できるよう体内の臓器やインプラントをマッピングする技術も可能になった。3Dプリントで作製できる臓器や組織も実現間近である。さらに、通信技術とIoT(Internet of Things)によって、個人の行動を追跡しレポートする方法が生まれ、個別化されたヘルスケアにつながる治療が実現しつつある。

3Dプリンティングについては、CTやMRI画像を3Dプリンタと互換性のある立体リソグラフィーファイルとして取り込むことができるようになった。2016年に開催された北米放射線学会年次大会では、放射線画像機器・装置メーカーと3Dプリンターメーカーとの連携による発表が行われていた。

より長期的には幹細胞研究・治療に関する企業が画期的な開発をするかもしれない。例えばCelprogen社は、成人のヒト膵臓幹細胞を移植した可塑性ポリ乳酸材料による足場から3Dプリントによる膵臓の作製に成功したと発表している。

—Tor Alden, MS, principal, HS Design

手術ロボット

手術ロボットは大きなトレンドであり無視できない分野だ。手術ロボットへの注目は過去18カ月で高まりつつあり、2017年にはさらに大きくなるだろう。2017年には供給面と需要面での要因が合流すると考えられる。

供給面では、市場価値の高まりにより新規参入が増え、競争が激化するだろう。2015年と2016年に行われた企業による開発は、2017年の多くの製品化・商業化に向けた開発のステージになるだろう。また、従来の方法と比較した手術ロボットの安全性と有用性を示すエビデンスが集まりつつある。さらに、技術の進歩により、次世代のロボットシステムをサポートするイメージングやデータ分析のようなサービスの大幅な変革が可能になった。

需要面では、低侵襲手術への患者や臨床現場からの要求が高まっており、全般的な手術数も増加している。医療機関は、手術を合理化し医療制度への負担を軽減するソリューションを求めている。また保険者は、効率化技術を用いた価値(バリュー)ベースの保険償還モデルへ移行しようとしている。

インテュイティブサージカルは長年マーケットリーダーだが、Stryker、スミス・アンド・ネフュー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、メドトロニック、Zimmer Biometのような大企業がこの分野に参入し2017年のもっとも興味深い開発がみられるだろう。

Strykerは人工膝関節置換向けのMakoロボットシステムを2017年に上市するだろう

人工膝関節置換術に対するStrykerによるMakoロボットシステムは2017年前半のトップニュースの1つになるだろう。また、ジョンソン・エンド・ジョンソンとGoogleの支援を受けるVerb Surgical社から研究開発での新しい動きがあるだろう。

Mazor Robotics社のMazor XとMedtech社のRosa Spineシステムについては、その財務上の結果を比較したくなるだろう。Mazor Roboticsは2016年を通じてメドトロニックから数回の投資を受けた一方で、Medtechは7月にZimmer Biometに買収された。

スタートアップについては、英国のCambridge Medical Robotics社は2016年7月のシリーズAラウンドで2千万ドルを集めた。同社はモジュラーシステムを構築しており手術ロボット市場に参入しようとしている大企業の買収ターゲットとなっている。

—Dougal Adamson, Medical device industry analyst, BMI Research

センサ

2017年、私たちはセンサについて多くことを聞くようになるだろう。ウェアラブルはもちろんだが、センサはあらゆるものに組み込まれるようになっている。それはデータ収集のためだけではなく、よりよい成果を得る可能性があるからでもある。センサは驚異的な速度で進化しており、これまで以上に低消費電力が求められ、小型化、高速化、高感度化が進むだろう。応用分野はとどまるところを知らない。

データの可能性に加えて、革新的なセンサアプリケーション開発をもたらす主な要因は、治療から人間的なばらつきを排除することだ。これは介護者や医師がコントロールやフィードバックを失うということではなく、機器やシステムに正確性と一貫性を与え、医療者がより正確で情報に富んだ決定を行えるようになるということである。センサは従来臨床的決定を行うために人間の「判断」や「経験」が用いられていた領域で真価を発揮する。

過去5年間で、スタートアップや新興企業は多くの医療機器技術のブレイクスルーを開発してきており、革新的なセンサ技術も同様である。Briteseed社は、外科医が隠れた血管や尿管、胆管を見つけて避けることができるよう、腹腔鏡手術器具のアゴ部分にセンサを具えたツールを開発した。Output Medical社は、医療従事者がバッグを集めて尿量を推計しなくてすむよう、自動で尿量をグラフ化するセンサとアルゴリズムを開発した。尿量は健康の全般的な指標であり、集中治療室(ICU)の患者にとっては腎不全の最初の指標になる。また、IntuiTap Medicalの新しい技術では、医師はセンサにより脊髄穿刺針を挿入する際に皮下組織の「GPS」情報が得られる。

これらの企業はブレイクスルーを生み出しているスタートアップの一部にすぎない。今後ますます、これらの企業が大手企業に買収されるのを見るようになるだろう。多くの大手企業では、これらの技術の調査と買収のみに注力する部署を設けている。2017年には、革新的な技術を提供するこれらのスタートアップと大手企業による買収やライセンス契約が記録的に増加すると考えられる。

—Craig Scherer, Cofounder, Insight Product Development; director, Insight Accelerator Labs

より先進的なウェアラブル

2017年にウェアラブルの診断機器が注目を浴びるだろう。単に歩数や心拍数を測るだけでなく、開発中の最新ウェアラブルは、汗のようなサンプルから患者の生理的変化をより深く分析するという点でより「侵襲的」になっている。

2016年、ウェアラブル自体に重要な技術開発が行われた。データ収集や処理の専門知識が豊富なハイテク企業からも関心が集まっている。

AppleのCareKitは先進のウェアラブル
機器開発を加速化する

ウェアラブル技術をコア技術として開発しているCoreSyte社のようなスタートアップは、何を測定できるかという点で大きな進歩を遂げた。また、AppleはResearchKitとCareKitプラットフォーム、およびFDAと継続的にディスカッションを行っているという点で有力なプレーヤーとなっている。

2017年には、「侵襲的な」(つまり、歩数や心拍数のような単に「外的な」ものではない)測定ができる先進のウェアラブル技術を開発する企業に対して、連携や買収を発表する大企業が出てくると期待される。先進のウェアラブル技術と大規模データ収集・処理方法が結びつくと、このような開発の可能性が生まれるだろう。

—Nick Rollings, Principal engineer, Medical Technology Division, Cambridge Consultants

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