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米国医療機器開発のトレンド in 2016

米国医療機器開発のトレンド in 2016

2016年に医療機器業界で目立ったコンセプトやアイデアを振り返ってみよう。

ByChris Newmarker(初出はMD+DI誌2016年12月号)

「危機」という漢字には「危(danger)」と「機(opportunity)」という字が使用されている。実際、混乱は大きなチャンスをもたらすものだ。

この例は現在の医療機器業界にも当てはまるだろう。ビジネスモデルの変化からサイバーセキュリティ、大統領選挙まで、多くの不確実性に医療機器業界が直面している。さらに、3Dプリンティングからデジタルヘルスまで、医療機器をより個人化し、よりインタラクティブに、より有益なものにするイノベーションが集積しつつある。

以下に医療機器にとって危険でありながらもチャンスをもたらすであろう最近のトレンドを紹介しよう。

1.量(volume)より価値(value)重視へ

「量より価値へ」というトレンドは2016年10月にミネアポリスで開催されたAdvaMedカンファレンスで繰り返し聞かれたことだった。世界中の医療制度は患者に対してより効果的・効率的な管理を目指しており、出来高払いを見直しつつある。

典型的なのはメドトロニックの「スマート」インスリンポンプの例だ。同社のインスリンポンプは競合製品より低いコストでよい結果をもたらすことを証明するデータを使うことができるため、同社は米大手の保険会社であるUnitedHealthcareのインスリンポンプの指定業者になることができた。

2.リスク管理

医療制度が価値ベースのモデルに移行するのに伴い、医療機器メーカーはますます顧客とともに負担を負わなければならなくなってきている。

「顧客とリスクを共有するか?これが現在課題となっています」とジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器事業エグゼクティブ・バイスプレジデントのGary Pruden氏はMD+DI誌の姉妹サイトであるQmedに語っている。「成果を改善することが重要ですが、実際は『うまくいかなかったら何が起こるだろうか?…また、リスクを共有できるだろうか?』といった問題が出てきています。これがパートナーとベンダーの違いになります」。

ジョンソン・エンド・ジョンソンや他の大企業は既に、医療機関とリスク共有に関する契約を締結しはじめている。今後このような契約が増えることが予測される。

3.ソリューションの販売

患者や医師はますます医療機器メーカーに対して、機器自体だけでないものを要求するようになってきている。この結果変わりつつあるのは、メドトロニック、Stryker、GEのような大企業だけではない。

最近のPwC Health Research Instituteのレポートによると、多くのメーカーは「患者にリアルタイムで関与し、医師の能力を改善し、1つの機器を超えた価値を体現するサービスを提供するというエコシステムに到達しつつあります」。このレポートによると、10大医療機器メーカーの半数は実際の機器を超えたサービスを販売しており、7社は「サービスに基づいた提案」への移行を成し遂げている。10大メーカーのすべてが顧客に対する教育訓練を提供している。

4.デジタルヘルスへの期待とつまづき

米国のオバマケアやその他の先進国の改革によって、医療機関は、いかに効果的・効率的に患者を管理するかにより関心をもつようになってきている。そこで、デジタルヘルスはますます重要度を増しており、ベンチャーキャピタルも注目している。実際、2016年7月に出されたベンチャーキャピタルのデータベースであるCB Insightsは、デジタルヘルスのスタートアップが記録的な額の資金を集めつつあると報告している。

EP Vantageによると、2016年のベンチャーキャピタルによる巨額の投資には、ロシュが主導した、がん治療のソフトウェア企業であるFlatiron Health社への投資が含まれる。その他には、技術志向の保険会社Oscar社とフィットネス・トラッカーのJawbone社もそれぞれ1億ドルを超える金額を調達した。

しかし、「スマート」医療技術が障害に突き当たることもある。2016年のこのような例の1つはProteus Digital Health社である。同社は大塚製薬と連携し、大塚の抗精神病薬であるAbilifyを患者が服用したかをトラッキングする技術を錠剤に組み込んだ。4月にFDAは同社に追加情報を課したため開発ステップを一歩戻ることになった。

5.深刻化するサイバーセキュリティ

家庭であれ病院であれ、医療機器がネットワークにつながるのに伴い、ますますハッキングへの脆弱性が高まっている。多くのハッカーが医療データで金稼ぎを狙って、ランサムウェアでの攻撃を行っており、セキュリティへのニーズが非常に高まっている。

投資家はサイバーセキュリティが医療機器メーカーの収益を脅かしつつあることに注目しているようだ。2016年夏には、アクティヴィスト投資会社であるMuddy Waters Capital社とサイバーセキュリティ会社であるMedSec社が、セント・ジュード・メディカルの植込み型心臓デバイスには大きなサイバーセキュリティ上の問題があると主張し、サイバーセキュリティの問題がさらに切実さを増した。8月25日にはセント・ジュードの株価が5%近く下落し、その後両陣営による公的な論争が続いた。セント・ジュードはMuddy Watersを名誉棄損で告訴した。

優勢に立つのがどちらの陣営にしろ、機器メーカーがサイバーセキュリティを深刻に考えはじめなければならないことは確かである。

6.好調な3Dプリンティング

2016年は3Dプリンティングが医療機器業界で成熟した最初の年として記憶されるかもしれない。試作や、外科医の準備を助けるために患者の解剖モデルを提供する目的では、既に積層造形は重要な役割を担っている。

「私たちのグループでは、3Dプリンティングは大部分、機器それ自体よりも付属品で使われています」とセント・ジュード・メディカルのRPおよびシミュレーション・システムのシニア・マネージャであるDave Broman氏はいう。

「解剖モデル、新たな工具、セールスデモ製品やシミュレータといった開発サイクルの全体にわたって3Dプリンティングは使われています」

これ以上のことを行おうとしている機器メーカーも出てきた。例えばStrykerは、3Dプリントによる整形外科インプラントに成功し、アイルランドのコークに3Dプリンティングのプラントを製造している。

「彼らは市場を変えるための代替ソリューションを見つけるための投資を行っています」とLayered Manufacturing and Consultingの社長、Shannon Van Deren氏は述べている。

「Strykerは非常に画期的なことをやっていると思います。他の有力企業もこの分野に注目しており、後れをとりたくないため、どの企業も変わりつつあります」。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ヒューレット・パッカードとGoogleが支援する3Dプリンティング企業Carbonと提携を結んだ。Carbonの高速CLIP(連続液界面製造)では超高性能ウレタンから物体を成形する。

また課題は残っている。専門家によると、医療における3Dプリンティングの使用に対する保険償還は現状では結果論であり、いくつかの3Dプリンティング・プロセスは研究室での使用にとどまっている。

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