マーケット分析

医療機器業界の M&A in 2016

医療機器関連の大手企業は2016年、より小さな企業の買収とビジネス・ユニットの再統合に数十億ドルを費やした。これにより業界の勢力図は変わりつつあるが、いくつかのケースでは計画通りにいかなかった。

ByMarie Thibault(オリジナルの英文記事はこちら

医療機器業界にとって、2016年も10億ドル以上の大規模取引を含む合併や買収がさかんに行われた年となった。このような動きによって、様々な機器分野で勢力図が変わり、技術領域も全体的に再編された。これらの変化に加えて、2つの取引は期待通りに進まなかった。このような出来事はすべて、医療機器業界の刺激的で急速な変化につながっている。

波乱を呼んだ取引

2016年の初めには、法人税での利点を伴う合併の今後についての不確かさが医療機器業界に影を落としていた。2015年11月、ファイザーとアラガンは約1,600億ドルでの合併計画を発表したが、2016年4月、米財務省は節税につながる可能性のあるコーポレート・インバージョンを難しくする一時的な規制を発表した。その2日後には両社は合併を中止し、ファイザーはアラガンに対し1.5億ドルの契約解除料を支払った。

2016年3月、キヤノンは東芝メディカルシステムを約60億ドル(売上35億ドルの1.7倍)で買収することを発表。この買収によりキヤノンは、粉飾決算がスキャンダルになった東芝本体から、世界でもトップレベルのメディカル・イメージング事業を手に入れた。キヤノンと東芝は独占交渉を進めたが、キヤノンのライバルである入札者の富士フイルムは不信感を抱いた。日本の公正取引委員会が問題視したプロセスがあったと報じられている

2016年2月にはアボットがAlere社を58億ドル(売上25億ドルの2.3倍)で買収する計画が発表されたが、すぐに台本にない展開になった。3月にはAlereは米国外国腐敗行為法に関する米国司法省の大陪審召喚状を受けたことを発表した。4月下旬にAlereは、「Alereが合併契約で行った様々な記述、保証、条項の正確性」に懸念があるという理由で、アボットから3,000~5,000万ドルの契約解除料で契約を中止しないかという申し出があったことを発表した。さらに、司法省によるAlereの請求記録の調査、FDAによるクラス1に指定されていた同社の血液凝固モニターと試験紙のリコールという悪いニュースが続いた。8月下旬には、Alereは取引を完了するようアボットに訴訟を起こした。10月にAlereの株主は取引を承認したが、11月にアボットは契約違反があったとしてAlereに対し訴訟を起こした。12月上旬にアボットは、合併の中止を求める訴状を提出したことを発表した

アボットのもう1つの大規模買収

さらに2016年4月、アボットはセント・ジュード・メディカルを250億ドル(売上55億ドルの4.5倍)で買収すると発表した。2016年末に完了予定のこの買収により、アボットは心血管および神経調整分野で最大手に踊り出ることになる。経カテーテル大動脈修復・置換術、冠動脈ステント、心調律管理、経皮的冠動脈インターベンションといった心血管分野の製品で業界1位あるいは2位の地位に立つことが期待される。

また、セント・ジュード・メディカルは2015年に左心補助循環装置(LVAD)のHeartMateをもつThoratec社を買収したため、アボットはLVADの大手2社のうち1社を間接的に獲得することになる。もう1社の大手LVADメーカーであるHeartWare社は2016年6月にメドトロニックに約11億ドル(売上2.76億ドルの4倍)で買収された。この2件の買収はLVAD分野に長期にわたる影響を及ぼすだろう。

2016年10月、アボットとセント・ジュード・メディカルは合併に伴い両社の事業の一部をテルモに売却することを発表した。リリースによると、11.2億ドルの売却により、アボットの心臓用カテーテルイントロデューサーキット(Vado Steerable Sheath)とセント・ジュード・メディカルの止血デバイス(Angio-Seal、Femoseal)をテルモに譲渡するという。

他にも2016年9月に、アボットは医療用光学事業をジョンソン・エンド・ジョンソンに43.25億ドル(売上11億ドルの3.9倍)で売却した。これにより、一般用眼科製品Tylenolをもつジョンソン・エンド・ジョンソンは、白内障手術やレーザー屈折矯正手術製品を得ることになる。

整形外科関連企業の多様化

整形外科のStryker社とZimmer Biomet社は2016年、買収を通じて製品の幅を広げることに注力した。StrykerはBain Capital Private EquityからPhysio-Control International社を12.8億ドル(売上5.03億ドルの2.5倍)で買収し、CPRアシスト機器、モニター、自動体外除細動器を救急医療ポートフォリオに加えた。また、StrykerはMadison Dearborn PartnersからSage Products社を27.75億ドル(売上4.4億ドルの6.5倍)で買収し、院内感染のような“never events(起こってはいけない事故)”を予防するディスポーザブル製品を加えた。

Zimmer BiometはフランスのLDR Holdingを10億ドル(売上1.65億ドルの6倍)で買収することを発表した。この買収によって同社の脊椎ポートフォリオに頚椎椎間板置換術(CDR)機器であるMobi-Cが加わることになる。この買収が発表された2016年6月時点で、Mobi-Cは1レベルおよび2レベルの両方でFDAから治療適用を承認された唯一の機器だった。7月に同社は、CEマークとFDA認可を取得しているロボット支援神経手術システムであるRosa BrainをもつフランスのMedtech SA社の買収を発表し、これにより手術ロボット市場にも参入した。

診断機器市場の動き

大手の診断機器メーカーも大規模合併に乗り出し、この分野にも変化があらわれてきている。2016年9月、Cepheid社とDanaher社は、Danaherが分子診断企業であるCepheidを約40億ドル(売上5.39億ドルの7.4倍)で買収する形で合併することを発表した。この買収によりDanaherの50億ドル規模の診断事業が強化され、2桁の売上増をもたらすと期待される。

サーモフィッシャーサイエンティフィックも2016年に臨床検査・診断分野に多くの投資を行った企業である。2016年初頭に同社はAffymetrix社を約13億ドル(売上3.5億ドルの3.7倍)で買収することを発表した。この買収により同社は細胞分析、遺伝子分析などの事業を取得する。さらに5月には同社は電子顕微鏡大手のFEI社を42億ドル(売上9.3億ドルの4.5倍)で買収することを発表。この取引は当初の予定より早く9月に完了した。

他にもサーモフィッシャーはIllumina社に300億ドルの買収を持ちかけたというニュースがあったが、取引は成立しなかったと考えられる。

2017年に予想されるのは?

トランプ政権で大きな変革が予想されるため、2017年のM&Aの見通しを予測するのは難しい。他の多くの業界と同じく医療機器業界も、その動向について注意を払うべき業界となるだろう。

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