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経カテーテル心臓弁で躍進:エドワーズライフサイエンス

* 米エドワーズライフサイエンスはMD+DI誌の“メドテック・カンパニー・オブ・ザ・イヤー 2016”に選出されました(関連記事)。

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の大手であるエドワーズライフサイエンスは、経カテーテル僧帽弁置換術(TMVR)でも同じく成功を収めることができるだろうか?

ByMarie Thibault(オリジナルの英文記事はこちら

CardiAQ-Edwards 経カテーテル僧帽弁のCEマーク取得に向けた臨床試験が予定されている

2016年だけでもエドワーズライフサイエンスはTAVR分野で、米国でのSapien 3生体弁の適用拡大(外科手術に中等度のリスクのある患者への)、日本でのSapien 3の承認、毎期の売上増といった多くの勝利を記録した。先駆的なSapien生体弁がCEマークを取得した2003年に初めて同社がTAVR市場に参入したことを考えれば驚くべきことである。

さらに印象的なのは、TAVRは同社の経カテーテル心臓弁分野での成功のはじまりに過ぎないことである。現在同社は、今後さらに同社を成長させる可能性のあるTMVRにも注目している。

TAVRでの勝利に向けて

主に外科手術用の心臓弁で知られていたエドワーズライフサイエンスが、どのようにして低侵襲手術機器の先駆者になったのだろう?会長兼CEOであるMichael Mussallem氏は、最初のSapien生体弁から継続的に改良を行ってきたことを強調する。

「私たちのアプローチは、早く試行し学習し改良していくことです。最初の治療法がすぐれていれば、よりよいものに改良していく機会があるのです」

反復に注力することは恩恵をもたらした。同社は第3世代のTAVR製品であるSapien 3を販売し、米国では、この低侵襲手術は、当初適用とされていた手術が不可能な患者よりも重症度の低い患者にも適用となった。2016年4月に同社は、手術リスク中等度の患者を対象とした臨床試験PARTNERⅡによりSapien 3生体弁は、外科手術に比較して、全死亡と障害を残す脳卒中の低い発生率(術後30日時点で2.0%対8.0%、1年時点で8.4%対16.6%)となり、優位性を示したと発表した。

「PARTNERⅡの結果によってSapien 3は、重篤な大動脈弁狭窄を有する手術リスク中等度患者の治療の新たな基準になりました」とVinod Thourani医師(Emory Heart and Vascular Center、Structural Heart and Valve Centerの共同所長、Emory Hospital Midtownの心臓胸部外科手術部長、Emory University School of Medicineの心臓胸部外科手術部門の外科教授)はリリースで述べている。

この輝かしい成績の後に規制当局からの承認が続いた。8月にはSapien 3生体弁は手術リスク中等度の大動脈弁狭窄患者を対象とした使用についてFDAの承認を得、9月には同様の適用拡大でCEマークを取得した。どのような患者が中等度かには主観的な判断が含まれるが、術後30日以内での手術による死亡リスクが3%以上の患者とされた。

StifelのアナリストであるRisk Wise氏の分析では、FDAによる適用拡大の承認時点で、新たな適用患者によって2020年までに米国のTAVR市場は6億ドル増加し、21億ドルにまで拡大すると見積もられる。

また、TAVRは地理的にも市場を広げており、2016年3月にSapien 3は日本で承認された。同社はTAVR治療をより多くの患者に普及させることによって継続的に改良していくという方法を続けていくようだ。さらに、手術リスクの低い患者に対するIDE(治験医療機器に対する一部規則の適用免除)試験、PARTNERⅢは2016年初頭に始まっており、約1,300名の患者を集める予定だ。

エドワーズライフサイエンスはそこに立ち止まらない。Mussallem氏はMD+DI誌にSapienのプラットフォームを拡大し続けると語っている。

「使いやすさを高めることができるか?手技をよりシンプルに、効率性を高めることができるか?患者の合併症を減らすことができるか?患者の全体的な結果と経験を改善することはできるか?」と彼は問いかけている。

同社は、2016年の第3四半期までに、前年比40%を超える順調で強力なTAVRの売上増を記録している。

次なる挑戦、TMVR

もし今日のTAVRの大手企業が10年前に外科手術用の心臓弁の会社として知られていたなら、これからの10年でこの会社がTMVRの会社として認識されるようになることはありうるだろうか?

Sapienと同様、エドワーズライフサイエンスはTMVRを最初に上市することを目指している。TAVR市場は2021年までに50億ドルにまで到達すると予測されるほど巨大だが、TMVR市場はそれより大きくなる可能性がある。2015年9月にBMO Capital MarketsのアナリストであるJoanne Wuensch氏は研究ノートで、TMVR市場は「TAVR市場より4.5倍ほど大きい可能性がある」と書いている。

同社がTMVRに注目するのも当然だ。

「TMVRは私たちが注目し、当社の戦略が最優先している分野です」とMussallem氏。

この目標に向けて、エドワーズライフサイエンスは2015年にCardiAQ Valve Technologies社を買収したが、TMVRに関心を示しているのは同社だけではない。2015年にアボットは、ヒトに初めてTMVR機器を移植したTendyne社を買収し、買収オプション付きでCephea Valve Technologies社に投資した。メドトロニックもこの分野に参入しTwelve Inc.を買収した。他にも、この分野にはNeovasc社やCaisson Interventional社といった企業も進出している。

これまでのところ、同社は先頭グループに属している。TMVRプラットフォームの初期段階のフィージビリティ・スタディを英国で進行中であり、CEマーク取得に向けた試験を開始する予定があることを2016年7月に発表した。規制に関するプロセスのためわずかに遅れたが、2017年にはこの試験は開始される予定である。

RELIEF CE Mark試験は、欧州およびカナダの約15施設で行われる単一群試験である。機能性および変性による僧帽弁逆流の患者が、経心尖および経中隔アプローチでTMVR機器を移植される。試験対象となるシステムにはCardiAQプラットフォームの強化と、エドワーズライフサイエンスの最新の細胞技術、サイズの拡大、新しいデリバリーシステムが含まれる。

最近アボットの経営陣は同社のTendyne機器のCEマーク試験が進行中であると話しており、他社もそれほど遅れていない。いくつかの会社ではフィージビリティ・スタディで患者に移植を行っている。

先駆者ゆえの不利

TMVRの場合、先頭を走ることは有利だろうか不利だろうか?TAVRでの教訓から、Mussallem氏はそれが困難でありうることを認めている。

「先頭を走ることが偉業であることは明らかです」と彼はいう。「私たちはそこに不利があることはわかっています。既存の道がないので、道を自ら作っていかなければなりません。あらゆる側面で不確実性の中に進んでいかなければなりません。誰かの後について2番手で進むことの方が簡単なのです」。

この困難のためにエドワーズライフサイエンスが立ち止まることはなかった。Mussallem氏は、医師との関係性を築ける、何が必要かを決めるために規制当局と連携できるといった利点も指摘する。「先頭を走ることの価値と私たちがそれを望む理由は、もっとも多くをいち早く学べるポジションに立てることです。私たちは最先端の議論が好きです。それによって多くを学び、私たちの目的意識を強くすることができます」。

TMVRはまだTAVRと比較できるものではない。産業界や医師の世界から同様に注目を集めているものの、治療について多くのことがわかっておらず、販売されるまでにはまだ数年かかると多くの人が予想している。アナリストたちは市場のセグメンテーションを含む課題を特定しており、送達性、固定性、耐久性といった課題を解決しなければならないと指摘している。また、TMVRの開発者はこの方法が外科手術と比較して劣っていないことを証明する臨床データを集めなければならない。

「外科手術によるすぐれた長期の結果と、僧帽弁への経カテーテルのアクセスを難しくしている解剖上の問題のため、高いハードルがあると私たちは考えています」と先述のWise氏は研究ノートに記している。

エドワーズライフサイエンスは自社が直面するこのような課題を認識している。

「技術的課題、患者の選択、臨床導入までのタイムラインといったことには忍耐強い、継続的な投資が求められます」と同社広報のHeather Chambers氏は書いている。

Wells Fargoのアナリスト、Larry Biegelsen氏が書いているように、同社に有利に働く動向の1つは、医師の間でTMVRを移植する際の経中隔アプローチに関心が高まっていることだ。経中隔の手技は経心尖の手技に比べて、より複雑であるものの、低侵襲であると考えられる。Biegelsen氏によると、経中隔アプローチはCaisson Interventionalが現在用いており、他社も追随する可能性があるが、エドワーズライフサイエンスは経中隔アプローチを用いて移植を行った最初の会社だという。

「私たちは患者にとっての最善のソリューションは経中隔アプローチだと考えており、これが継続的な開発の焦点になります」とChambers氏も書いている。

リーディング企業を目指して

克服しなければならないハードルはあるものの、エドワーズライフサイエンスはTMVRに関して強気である。

「私たちには情熱があります」とMussallem氏は2016年度第3四半期の業績発表で述べている。「情熱がなければCEマークの取得に向けた試験をはじめられないでしょう。解明しなければならないことはたくさんありますが、私たちが答えを知るための唯一の方法はよい経験を積み重ねることです」。

このたたかいは困難ばかりではない。Chambers氏によると、保険償還については、TMVRはTAVRのような血管内心臓弁置換と同じ診断関連分類に区分されることが予想されるという。

また、僧帽弁置換の他にも、同社は排他的買収のオプション付きで、僧房弁修復を手がけるHarpoon Medical社に投資を行っている。Mussallem氏は弁修復を、僧帽弁逆流に対する潜在的な“ツールキット”の一部と記載している。

経カテーテル心臓弁製品が大きな注目を集めている一方で、エドワーズライフサイエンスは救急医療、外科手術用心臓弁製品のリリースも継続している。2016年8月には、FDAは手術用の大動脈弁であるIntuity Eliteバルブシステムを承認した。続いて、将来のvalve-in-valve移植を可能にするVFitテクノロジーを組み込んだInspiris Resiliaに対するCEマークも取得した。医師が低血圧のアラートを受け取れるAcumen Hypotension Probability Indicatorも10月にCEマークを取得した。

「私たちは関連するすべての分野でリーダーになることに努めています」とMussallem氏。

エドワーズライフサイエンスがこのような努力を継続できるかは時間が証明してくれるだろう。

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