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再生医療産業化に向けたFIRMの取り組み ─日本の製造業のノウハウを結集して世界をリードへ─

ByMEDTEC Japan編集部

再生医療の業界団体である一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)は2011年に14社が参加し発足した。再生医療の産業化を目的とし、2014年の法整備(医薬品医療機器等法、再生医療安全性確保法の施行)後には、さらなる産業化促進のために、有志企業が集まり産業化相談や業者の紹介などを行う「再生医療産業化拠点実証タスクフォース(RMIT)」をスタートしている。

2016年には会員企業は200社を超えた。最近多くのライフサイエンス企業・団体が集まりつつある東京・日本橋の「日本橋ライフサイエンスビルディング」に入居するFIRMを訪ね、再生医療の産業化への取り組みや現状、課題について、FIRM運営委員会委員長の横川拓哉氏に話を聞いた。

産業化を目指して

FIRMが他の業界団体とは異なるのは、再生医療がビジネスとして成り立っているのはごく一部で、産業が確立しているとはいえない点。

FIRMの会員企業の多くも再生医療で利益を上げているわけではない。将来に投資するという狙いが強い各企業の持ち出しにより組織されている。産業が確立し、企業が集団で政府への働きかけや消費者への対応を行い、ビジネスを効率化するという他の業界団体とは大きく異なる。

「産業化のためには、企業が製品を作って売り、その利益を再投資して新たな開発を行うというサイクルができなくてはなりません」と横川氏。「企業が利益を出して、患者さんにも利益となる治療を提供する。これを実現することがFIRMの大きな目標です」。

FIRMでは産業化のための課題に応じて、(1)サポーティングインダストリー部会、(2)標準化部会、(3)規制制度部会、(4)医療経済部会の4部会を設けており、会員企業はいずれかの部会に属し、課題の共有と解決に向けた議論を行っている。

安全性の確立を

再生医療には国も力を入れている。iPS細胞の発見やそれを使った臨床研究に代表されるように研究面で日本は世界をリードしており、文科省はさらなる研究促進に向けて積極的に支援している。一方、医薬品や医療機器のような輸入超過を招かないよう、経産省は迅速な産業化により世界をリードできるよう支援を打ち出している。また、現状の再生医療製品が非常に高額なため医療経済への懸念はありながらも、例えば慢性疾患の治療で、これまでとは異なる画期的な治療が期待されるため、厚労省も規制面の体制づくりに積極的に取り組んでいる。

2014年の法整備は官民学の動きの1つの成果となった。FIRMや、FIRM設立以前に再生医療の製品化に取り組んだ企業、この分野の研究・治療技術を牽引する再生医療学会と行政とのディスカッションにより法整備が進められたという。

旧薬事法の改訂となった「医薬品医療機器等法」は、再生医療製品を医薬品や医療機器と同じく厚労省の承認を得て保険診療下で販売するための枠組みとなった。

新たに成立した「再生医療安全性確保法」は、再生医療を医師の自由診療として医師法下で実施する枠組みだ。細胞培養加工施設の届出や申請を義務化、リスクの高さによって審査を義務化するなど、以前アンダーグランドで行われていたことを可視化できる制度となった。

「FIRMとしても自由診療で行われている再生医療を底上げし、安全性を確保できる体制づくりを目指しています」(横川氏)。

世界への発信と国際交流

標準化部会では、経産省の受託事業として日本発の国際標準化に積極的に取り組んでいる。最近では、細胞等の輸送仕様設計プロセスに関する提案をISOに行い新業務項目として承認された(関連リリース)。

欧米の団体は枠組みづくりが得意なため主張も強力だという。「ISOの会議ではそれに対抗できる交渉力のある人が当たっています。技術的知識に加えて、標準化に関する専門知識、英語力が求められます。サポーティングインダストリー部会の方々と緊密に連携して厳しい交渉の場に臨んでいます」(横川氏)。

PMDAも日本の規制のメリットを世界にアピールしており、ICH(医薬品規制調和国際会議)などで積極的に発言している。

もちろん産業化でも世界をリードする必要があり、FIRMの国際委員会では輸出と輸入の両面を視野に活動している。まだ世界的に見ても製品が限られるため、有望な治療法を世界の患者に届けるためだ。そのために企業間のビジネスマッチングや業界団体同士のパートナーシップづくりに取り組んでいる。また、海外の企業を誘致し、法規制が整備された日本で臨床開発を進めてもらいたいという狙いもある。

国際委員会に所属しこのような活動の最前線にある横川氏も、日本が世界をリードしていると感じている。

製造業の活躍とベンチャー育成がカギに

サポーティングインダストリー部会は、周辺産業のバリューチェーンの整備と活性化を目的とし、CPC、自動培養装置、試薬・培地、輸送、器材・材料、検査機器のワーキンググループを作り、基準づくり(FIRM基準の策定)に取り組んでいる。

「規格品を大量に製造する医薬品と異なり、患者に合わせた製品をつくる細胞を用いた再生医療では製造工程が複雑なため、周辺の製造業のノウハウによってビジネスが左右される可能性があります」と横川氏。「そうなると日本の製造業の出番かもしれません」。

また、今後の課題として横川氏はベンチャー育成をあげる。特に大学発のベンチャーをもっと増やしたいという。そのためにはベンチャーキャピタルとのマッチングをより活性化する必要があり、交流イベント(関連リンク)を開催している。さらに、海外企業に日本でパートナーを探してもらうことにも可能性がある。

今後のブレークスルーとして1つの可能性は「慢性疾患や一般疾患(common disease)にも再生医療製品が使われ普及すること」(横川氏)だ。

英国、カナダ、オーストラリアなどでは再生医療の産業育成を国家的に強力に進めており、世界的に競争は激化している。引き続き国の支援も必要で、そのためにも日本の医療がどうあるべきか、再生医療がどのような変革をもたらすかという観点から、広く再生医療に関心をもってもらうことが重要だという。

今後もFIRMでは積極的な発信とディスカッションを通じて、再生医療の産業活性化と新たな価値の創出に取り組んでいく。

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