ウェアラブルに求められる5つのセンサ

5つのセンサだけで多くのことができるウェアラブルの診断機器を考えることができる。

ByNigel Syrotuck(オリジナルの英文記事はこちら

ウェアラブル機器は人気を集めているが、実際何の目的で装着するのだろう?大部分の一般消費者は、日常生活で運動を心掛け、自らの運動をトラッキングするというフィットネス目的にフォーカスしている。したがって、ウェアラブル機器は全般的な健康改善や病気の予防のために使われており、病気の診断や治療に有用なものではない。これらのフィットネス・トラッカーは一般家電市場で急速に増えているものの、近いうちに医療用ウェアラブル(medical wearable)がそれらを超えて成長するだろうと予測される。フィットネス用ウェアラブルが私たちの健康に大きな影響を及ぼしたように、近い将来、医学的な状態を治療あるいは診断するための医療用ウェアラブルは、私たちの医療上の治療や診断についての考え方を根本的に変えるだろう。

既存の医療機器は特定の状態を診断あるいは治療することを目的としている。その一方で、健康用機器はユーザーが様々な健康指標をモニターできるよう全般的な情報をもたらすように設計されている。興味深いのは、活動量、睡眠、心拍などわずかな指標によってこれを行おうとしていることである。

医療機器と健康用機器という2つのコンセプトを合体させ、多くの目的のための幅広い生体情報を集め、医学的な意味をもたせることができる全体的なヘルス・プラットフォームを構想するなら、一般的な健康状態と同様に、医学的な健康状態をモニターできることになる。

既存の、商業的に利用できるセンサと関連技術を使ってこのようなプラットフォームを作ることに、技術的に大きな問題はない。また、フィットネス用ウェアラブルを受け入れたことのある市場にとっても、このようなプラットフォームを理解し受け入れることは大きな飛躍ではない。多くの先進機器にとって、採用されることが“アキレス腱”だと考えると、これは大きな利点である。5つほどの既存のセンサを組み合わせるだけで、有病率が多い様々な医学的な状態を診断したり、モニターしたりすることができるかを考えてみよう。

よいプロジェクトのはじまりにそうするように、このようなトータル・ヘルスモニタリング・プラットフォームによって何を実現したいかを立ち止まって考えてみよう。まず、もっとも有病者の多い病気や状態をリストしてみる。1が、非侵襲のウェアラブル機器でうまく診断できる一般的な疾患のリストである。

では、1の病気のすべての症状を集めてリストし、それらを検知し定量化するために必要なセンサを探してみよう(2)。

:気分変動はそれ自体が症状をもつ(バイタルの変動など)

以下の5つのセンサを用いて、少なくとも1の太字にした13の一般的な病気を診断することができる。

  • 6軸加速度センサ
  • 血圧モニタ
  • 心拍/SpO2モニタ
  • 呼吸モニタ
  • 皮膚水分モニタ

上記の症状について、定量的な測定値を示すこれらのセンサによって、2にリストしてある項目以外の何を測定できるだろう?3にこれらの症状を示す。

ここまで来て、この演習の真の結果を見ることができる。たった5つのセンサを備えたプラットフォームによって、死亡や慢性疾患の原因になる46もの一般的な病気を診断することができるのだ。実際に、私たちがこれらの病気の少なくとも1つを罹患する確率はほぼ100%と非常に高い。かぜや後鼻漏のような誰もがかかる病気を除いても、いずれかを罹患する確率は99%以上である。

トータル・ヘルスモニターは単に症状を示す測定値を集めるだけではなく、それらを上表のような表に参照させる必要がある。もしある人が咳やくしゃみをして発汗しているなら、副鼻腔炎の可能性がある。高血圧、頻拍、発汗の症状があるなら、過度のストレスがあるか、妊娠しているか、甲状腺系の病気の可能性がある。

多くの要素をモニターすることにより、このプラットフォームは症状を比較診断し、ランク付けすることもできる。これはプラットフォームの知識基盤に基づいて様々な病気の可能性を比較することによって可能になる。例えば、もし低血圧で、出血のある開放創があれば、医師は低血圧を伴う一般的な病気と診断せずに、まずは止血するだろう。同様に、多様な症状の全体像は、自動診断プラットフォームが正確な診断を行う確率を高める。他の例としては、うつのモニターに特化したウェアラブルは、うつの症状として活動量の低下を検知するかもしれないが、それが発汗や高血圧のような他の症状も測定できれば、肥満の可能性があるという診断を行うだろう。この比較診断の性能は、単一の目的しか持たない機器にはない特徴である。

センサの入手可能性:この5つのセンサは既に業界で定着しており、入手しやすく、比較的に安価である。多くのセンサは数十年にわたって開発を重ね、医療向けセンサ市場で確固たる地位を築いている。さらに、毎年MEMS市場が成長を続けるにつれ、センサの価格は下がると予想される。また、うそ発見器型のガルヴァニック・センサは歴史が長く、非侵襲的に気分や気分変動を測ることができることは覚えておくべきだろう。さらに、ウェアラブルやセンサ、植込み機器の市場が成長するにつれ、センサの質と入手可能性は高まり、価格は下がっていく。

データの取得:すべてのデータは抽出され処理されなければならない。定義によって、ユーザーの健康記録に情報を入力し、市販後調査を提供し、更新を可能にするために、デジタルヘルス機器はクラウドに接続する必要がある。スマートフォンは処理の負荷軽減と、ユーザーがどこに行ってもほぼ無料で電池からの電力供給を可能にするすぐれたワイヤレス機器であることが示されている。

市場の利点医療アプリケーション以前の、ユーザーの全般的な健康情報をモニターするプラットフォームと同様に、トータル・ヘルスモニターは将来の開発を支援するために他の要因に関するデータも収集できる。例えば、心臓病のモニターとして販売できる一方、不安障害に関する匿名データも収集することができる。これらの情報によって、不安レベルをモニターするように機器を調整する、臨床試験に利用する、2重の適応で販売することもできるなどの利点も生まれる。

まもなく、これらの性能を備えた多機能ウェアラブルが現れはじめるだろう。これによって患者と消費者は、一段とレベルの高い予防ケアを達成でき、全体的で手頃な方法で自らの健康を管理することができるようになる。

■ 筆者Nigel Syrotuckは医療機器設計会社StarFish Medical,(本社:カナダ・ヴィクトリア)の機械エンジニア。

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