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介護福祉・生活支援ロボットの法規制対応

介護福祉・生活支援ロボットの法規制対応

By:Medtec Japan編集部

近年日本では、ロボット技術を生かして医療や福祉に貢献しようという多くの企業の試みや国による開発支援が一定の成果として現れつつある。一方で、新しい製品分野であることから、品質や安全性をどのように保証するかという課題や、どのような法規制に対応すべきかという点でわかりにくさも生じている。介護福祉ロボット・生活支援ロボットの法規制対応への支援を行っている株式会社サン・フレア リサーチ&コンサルタント部門 部門長の佐藤英樹氏に、法規制の概要や対応の要点などを聞いた。

法規制上の位置づけは国内外で異なる

日本では、介護や福祉の場面で使用される機器には、(1)障害者総合支援法にいう「補装具」、(2)介護保険法にいう「福祉用具」、(3)薬機法にいう「医療機器」に該当するものがある。

ところが欧米では、日本のような医療機器と介護福祉機器の区別はなく、ほとんどの介護福祉機器も「医療機器」の範疇で規制を受ける。例えば、日本では「補装具」や「福祉用具」である車いすは欧米では「医療機器」である。

近年開発されている介護福祉ロボットについては、日本では上記の法規制上の「種目」に規定されていない。一方で、欧米の法規制上の分類では「医療機器」に含まれると考えるのが妥当だという(1)。

図1 介護福祉ロボット製品の分類の概要図

このような状況を前提として、自社の製品を国内外でどのように販売するかを考慮の上、規制対応スキームを決めておく必要がある。

ISO 13482の登場

日本でも欧米でも「医療機器」として介護福祉ロボットを製品化するなら、「医療機器」に対する法規制への対応が求められる。

では、日本で、あるいは日本と欧米で「医療機器」としてではなく介護福祉ロボットを製品化する場合にはどのような基準に従えばよいだろうか。

ここで視野に入れるべきは、生活の場において人間のごく近くで活用するロボットの産業化を進めるべく日本が主導的に取りまとめ2014年に発行した、ISO 13482(ロボット及びロボティックデバイス―生活支援ロボットの安全要求事項)である。ISO 13482では、適用範囲から医療機器としてのロボットを明確に除外し、以下の3つのタイプを分類して要求事項と指針を規定している。

  1. 移動作業型ロボット
  2. 身体アシストロボット
  3. 搭乗型ロボット

リスクアセスメントの観点が重要に

医療機器と生活支援ロボットの国際規格の違いをサン・フレアでは要求事項別に1のようにまとめている。

表1 適用規格の比較

要求項目 医療機器(医用電気機器) 非医療機器(生活支援ロボット)
リスクアセスメント ISO14971:2007 ISO12100:2010
製品安全(電気、機械、電磁両立性その他) IEC60601-1:2005+A1:2012
IEC60601-1-2:2007
ISO13482:2014
IEC60204-1:2009

 
生体への有害物質等 ISO10993-1:2009 ISO14123-1:1998
ソフトウェア・機能安全 IEC62304:2006 ISO13849-1:2006、またはIEC62601:2012
ユーザビリティ IEC60601-6:2010
IEC62366:2007
ISO13482:2014
品質マネジメントシステム(QMS) 規制要求事項≒ISO13485:2003 ※ソフトウェア安全要求事項ISO9001相当のQMSやIEC61508相当の設計管理

生活支援ロボットに対する規格では産業用ロボットで一般的な規格が多く、ISO 13482自体も系統的に産業用ロボットについての規格からの影響が大きい。また、開発段階の上流となる設計時からリスク要因を洗い出し、リスクの大きさに応じたリスク低減プロセスを適用するリスクアセスメントの観点は産業用機械や医療機器では早くから浸透してきたが、ISO 13482でも中心的に取り入れられており、この点は特にそのような開発プロセスに慣れていない企業にとって注意すべき点だという。他にも、生体への接触に関する安全性等も生活支援ロボットでは重要になる。

ISO 13482では、数値基準を検証者に委ねるなど、製品分類ごとの詳細な要件を具体化できていないという課題があるが、本規格からJIS化される際に数値基準が検討され、今年4月に発行されたJIS規格では製品分類ごとに指標や数値基準が盛り込まれた(JIS B 8446-1、JIS B 8446-2、JIS B 8446-3)。今後JISの基準がISO 13482にも反映される可能性がある。

規格以外の観点も提案しつつ開発支援を

日本でこれまでISO 13482を取得した機器は2の通り。認証機関はJQAに加えJIS発行とともにJETが加わった。

表2 日本におけるISO 13482取得機器(JQAのホームページより)

認証番号 認証日 認証取得者名 認証の対象(製品)
JQA-KC13001 2014年2月17日 パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社 Mobile servant robot(リショーネ)
JQA-KC13002 2014年2月17日 株式会社ダイフク Robotic device(エリア管理システム)
JQA-KC14001 2014年11月12日 CYBERDYNE株式会社 Physical assistant robot(HAL作業支援用(腰タイプ))
JQA-KC14002 2014年11月12日 CYBERDYNE株式会社 Physical assistant robot(HAL介護支援用(腰タイプ))
JQA-KC14003 2015年3月19日 CYBERDYNE株式会社 Physical assistant robot(HAL自立支援用下肢タイプ)
JQA-KC15001 2015年7月8日 RT.ワークス株式会社 Mobile servant robot(ロボットアシストウォーカーRT.1)
JQA-KC15007 2015年10月14日 本田技研工業株式会社 Physical assistant robot(Honda歩行アシスト)
JQA-DA16001 2016年7月14日 株式会社東芝 パワーアシストスーツ(試作製品)
※ 2013年2月27日にはCYBERDYNE株式会社の「ロボットスーツHAL福祉用」がISO 13482原案であるISO/DIS 13482の認証を取得。
※ 2016年4月20日にはパナソニック株式会社のHOSPI(自律搬送ロボット)がJETよりJIS規格とISO 13482を取得。

佐藤氏は生活支援ロボットの開発に際しての法規制対応スキームを2のようにまとめる。

図2 対応スキームまとめ

現状では医療機器としない限り生活支援ロボットとして特別に罰則を伴うような法規制は明確でないが、注意すべき周辺の法規制があると指摘する。例えば、医療機器ではないのに医学的な効果・効能を広告で宣伝することは薬機法違反となる(広告規制)。他にもPL(製造物責任)の問題は認識しておくべきである。

サン・フレアでは医療機器の法規制対応の経験を生かし、早くから介護福祉・生活支援ロボットに着目し、国内外の開発事例や規制動向をフォローしてきた。ISO 13482のような個別の規格への対応だけでなく、上記の広告規制を含め幅広い法規制対応について支援を行える点が強みだ。また、医療機器の海外規制対応の経験も豊富で、介護福祉機器の輸出や輸入を考えている企業にも的確なコンサルを提供する。

介護福祉・生活支援ロボットの分野は自動車、産業用ロボット、センサー等の電子デバイス、ITベンチャーといった異業種からの関心も高く、新規参入も多いと佐藤氏は感じている。今後も法規制の充実が予想されるとともに、海外展開もできるようなロボット開発の一層の活性化が期待される。

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