IoTを活用した都市型遠隔診療の効果実証研究を開始

ByMedtec Japan編集部

9月6日、ITベンチャーのポート株式会社(本社:新宿区)と東京女子医科大学は共同で、IoTを活用した「都市型遠隔診療」の安全性および有効性に関する実証研究を開始すると発表し、共同記者会見を行った(右写真)。

ポートは2015年11月に国内初の遠隔診療プラットフォームサービス「ポートメディカル」の提供を開始し、今年6月には宮崎県日南市と無医地区での遠隔医療の実証事業をスタート。代表取締役CEOの春日博文氏によると、遠隔診療への進出のきっかけは同社のメディア利用者(月間1,000万を超えるアクティブユーザー)から、医療・ヘルスケア分野はインターネット上でソリューションを見つけられるサービスが少ないという声が多かったことだったという。

今回の実証研究では高血圧診療を対象とする。東京女子医科大学の市原淳弘氏(高血圧・内分泌内科学講座 主任教授)からは、高血圧診療の現状と課題について解説があった。

日本で高血圧の患者数は4,300万人と推計されるほど一般的な病気となっているが、問題なのは脳卒中や狭心症、心筋梗塞など死亡に直結する病気につながる可能性がありながら、未受診率が約50%であること。その要因として通院する手間や病院での待ち時間などがあげられる。遠隔診療を活用した利便性の向上によって、受診率の改善に加えて、多くの患者で良好な血圧コントロールが得られ、長期的には高血圧が原因となる病気の予防により医療経済上のメリットなども得られる可能性がある。

ポートとしても、患者が通院継続のハードルを越えられず、症状を悪化させて、重大疾患に陥るケースが多い高血圧に着目。治療継続率を向上させることによって、重症化予防、健康寿命の延伸につながるという点で、「ポートメディカル」の有効性が高いと考えた。

高血圧遠隔診療は下図のイメージで、各プロセスは以下の通り。

  1. 血圧を測る
    患者はオムロン自動血圧計HEM-9200Tを用いて自己血圧測定を週3回以上実施し、自己所有の通信機器(スマートフォン等)を介して測定データを随時サーバーに送信。
  2. 血圧を診る
    担当医は定期的に家庭血圧データを参照して治療方針を決定。
  3. コミュニケーション
    担当医は電話に加え必要に応じてチャットやメールなどの通信手段を用いて所見と治療方針を伝える。
  4. 薬の配達
    担当医は、患者との意思確認をもって内服薬を処方。処方された内服薬はポートメディカルサービス(ポート社と患者の間で別途契約締結)により患者の自宅に郵送。
  5. 支払
    遠隔診療の費用はポート社が収納を代行。

※ オムロン自動血圧計HEM-9200Tはボタン1つで操作ができるシンプル設計、見やすく大きな液晶画面など使いやすさを追求した上腕式血圧計。Bluetooth通信機能を搭載し、測定データをポートメディカル血圧管理アプリに簡単に転送し、管理できる。

今回の実証研究が画期的なのは、東京女子医科大学病院の倫理委員会の承認も得たうえで、無作為割り付けの臨床試験として行う点だ。

東京女子医科大学の谷田部淳一氏(高血圧・内分泌内科 准講師)は臨床試験の概要を解説。これまで、高血圧に対して非対面型の遠隔診療(telemedicine)の安全性・有効性を検証した臨床試験は海外で行われており、従来型の対面診療より優れるという結果が示されている。日本では、家庭血圧測定の効果を検証した臨床試験はあるものの、遠隔診療をテーマにした試験は前例がない。今回の試験は、患者を「遠隔診療群」と「従来診療群」に無作為に割り付け1年間評価し、その後1年ごとに自由意思で再割り付けを行い、最長5年間フォローアップを行う。患者数は450を目標とし、生活習慣病の遠隔診療モデルのエビデンス構築の第一歩となることを目指す。

今回の研究が、地方での遠隔診療や糖尿病など他の生活習慣病の遠隔診療の効果検証のモデルとなることも将来的に期待されると矢田部氏。

ポートは2015年から医師を採用し社内で医学研究チームも始動させており、今回の臨床試験を通じて遠隔診療の仕組みをさらに改良し、医療機関との連携につなげていく考えだ。

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