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医療・福祉分野での3Dプリンティング応用

医療・福祉分野での3Dプリンティング応用

By:Medtec Japan編集部

横浜国立大学では丸尾昭二教授(大学院工学研究院システムの創生部門)を中心に「3D造形ものづくりネットワーク」を設立し、丸尾氏らが開発したフェムト秒レーザーによるマイクロ光造形法をはじめとする「超3D造形技術プラットフォーム」の技術開発と、それを用いた高付加価値製品の実用化を目指している。7月29日に設立1周年記念シンポジウムが開催され、医療・福祉分野での3Dプリンタの活用として、医療・福祉ロボット、再生医療用培養装置、口腔外科分野での応用について講演があった。


医療・福祉ロボットの新展開

まず、同大学院工学研究院知的構造の創生部門の下野誠通准教授より「医療・福祉ロボットの新展開」と題した講演が行われた。

近年、手術用ロボットやリハビリ支援ロボットが少しずつ普及しつつあるが、今後の課題として下野氏があげるのは、人間の感覚と同様に力を感じたり伝えたりすることができる力触覚技術。これにより、これまでのロボティクスでは難しかった力強くも柔らかい動きを実現でき、例えば手術用ロボットで術者が指先で微妙な力加減を感じながら優しく対象に触れることが可能となり、リハビリ支援ロボットで力のデータから定量的な運動機能評価をすることが可能になる。下野氏は力触覚機能を持つ医療用デバイスなどの開発を目指している。

また、手術には鉗子開閉・直動・ピッチ・ロール・ヨーといった多様な運動機能が必要なため、運動多様化と多自由度をもたらすアクチュエータの開発も進めている。下野氏はこのようなアクチュエータの試作で光造形による3Dプリンタを活用しており、円弧形リニアモータの屈曲したボビンや、直動と回転という2つの運動ができる二自由度モータでらせん状に溝を入れたボビンの試作などに有用だったという。

このように3Dプリンタは独創的なモータやロボットの試作に有用だが、金属やモータに使う磁性材料を扱えるようになるとさらに可能性が広がると下野氏は指摘した。

微細加工を用いた再生医療用培養皿

次に、同大学院工学研究院機能の創生部門の福田淳二准教授より再生医療分野での微細加工技術、光造形3Dプリンティングの応用が紹介された。

現在、再生医療では培養したiPS細胞などをいかに生体内に生着させるかが課題となっており、開発競争も激化している。組織工学の観点から、細胞を球状に集めるスフェロイド、円柱状にするシリンドロイド、シート状にする細胞シートなどを作製し、生体内に注入する試みが行われている。

福田氏の研究室では、酸素透過性を高めたスフェロイド培養器を開発し、効率のよいスフェロイド培養を実現した。培養皿は約4cm四方で直径500μmの小さいくぼみを1,700個程度作るが、酸素透過性を高めると膵ベータ細胞ではインスリン遺伝子の発現量、肝細胞ではアルブミンの分泌量が上昇した。また最近では、この技術を活用して、毛髪を生み出す毛包原基を大量に培養することに成功し、大きなニュースとなった。

さらに、電気化学を利用して細胞を培養皿から脱離する方法も開発しており、これらをマイクロ光造形と組み合わせて、テーラーメード細胞シートの実用化を目指している。現在、内視鏡手術などでは組織切除後の癒着や閉塞が問題となっているが、組織の切断面を再建するために患者個々人に合った細胞シートが有用ではないかと考えられている。福田氏らは、患者の臓器に合わせて光造形でモールドを作製し、表面で細胞シートを培養、それを電気化学的に脱離して術部に移植する方法の研究を進めている。

口腔外科から見た3Dプリンタへの期待

最後に横浜市立大学医学部の廣田誠准教授より、口腔外科での3Dプリンタ応用の現状と今後の期待について講演があった。

3Dプリンタで作製した立体モデルを手術支援に使うことは保険診療でも認められるようになり、廣田氏も特に顎の手術時には患者のCT画像を画像処理ソフトウェアでSTLに変換し3Dプリントで石膏モデルを作製している。

実際に3Dプリントを手術支援に使う例として、粘液腫のため下顎骨を大きく切除し腓骨を使って下顎骨を再建した症例が紹介された。PCのソフトウェア上で、切除した状態から腓骨をどのように加工して下顎骨を作るかシミュレーションを行い、腓骨の骨切りと折り曲げ用のガイドを3Dプリントで作製する。以前は術中に再建部位に合うように腓骨を加工していたため、術前にここまで準備ができるとかなりの時間節約につながる。

また、顎骨の治療のために骨補填材を入れてチタンメッシュで土手を補強するケースで、骨の欠損部分から3Dモデルを作り、それに合わせてチタンメッシュをあらかじめベンディングしておく方法も紹介された。以前は術中に試行錯誤することがあったが、この方法により大幅な時間短縮ができる。

このように3Dプリンタを使った手術支援により正確な手術と手術時間の短縮が可能になっている。今後は、セラミックやチタン、あるいはその組み合わせの材料を用いて、3Dプリントによる臓器自体の造形(口腔外科では顎骨)が期待されると締めくくった。

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