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目指せ「スーパー日本人」:大阪大学COI

目指せ「スーパー日本人」:大阪大学COI

ByMedtec Japan編集部

文部科学省が2013年度に開始した「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」では、現在潜在している将来社会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿、暮らしのあり方を設定し、このビジョンを基に10年後を見通した革新的な研究開発課題を特定、それらを産学連携で実現することを目指す。

2013年にCOI(センター・オブ・イノベーション)拠点の公募が行われ、大阪大学では「人間力活性化によるスーパー日本人の育成拠点―脳マネジメントで潜在力を発揮できるセルフエンパワーメント社会の実現―」が採択された。

タイトルに示されている通りスケールの大きさとユニークさが際立っている。目標は個人のワーキングメモリーを強化し「流動性知能」を向上させることによって、潜在能力を常に発揮できる「スーパー日本人」を育成すること(下図)。

医療・ヘルスケアと教育分野で下記の6テーマ、13プログラムで研究開発が進んでいる。大まかには、ストレスなど脳の「状態検知」にもとづき、「活性化手段提供」、「活性化評価」を行い、「さらなる活性化」を目指すというストーリーだ。

  1. ストレスバイオマーカーの探索とストレス物質の新しい検出方法の開発
  2. 脳機能イメージング技術の開発と脳神経ネットワークのモデリング
  3. 装着感のないウエアラブルセンサとパーソナルDNAセンサの開発
  4. コミュニケーションの質の定量化と活性化
  5. 深睡眠と音楽による脳の活性化
  6. 脳の個性を活かした子どもの健やかな心の育成

ストレス状態の検知

COI企画推進室長の小倉基次氏によると、「状態検知」でポイントになるのは簡便さだ。一例は、街中などPOCT(point of care testing)で簡便に測れる呼気センサ。出勤途中や外出先で気軽に計測し、日々のストレスレベルや脳の活性レベルをチェックし、仕事に備えることを目指している。呼気ガス中のストレスマーカーを同定し、健常人でのテストを進めている。他にも涙液からのPOCTストレス診断法、超低コストのパーソナルDNAシーケンサーなども開発中であり、大阪大学が誇る免疫研究を軸とし、医脳理工連携の強みが活かされている。

また、今年1月には冷却シートを額に貼るような感覚で容易に装着できるパッチ式脳波センサの開発に成功したと発表した(関連記事)。これまでより容易に脳波データを取得できることで、脳と個人の環境などの関係について研究が進むことが期待される。脳情報通信融合研究センター(CiNet)がもつ7テスラMRIを使って脳機能を画像化することにより、うつ状態の検知と予測を行う研究も進められている。

睡眠や音楽による脳の活性化

「活性化手段提供」では、腸内フローラ改善や睡眠深度の改善などが研究されている。脳の活性化に睡眠を重視しており、ビデオカメラで睡眠中の体動を分析し、睡眠深度に応じてベッドなど環境を変化させる方法が研究されている。

また、ユニークなのは、脳の状態に合わせて音楽を自動作曲し、それを聞くことにより脳を活性化させるという研究。作曲だけでなく編曲・アレンジも重要と考えており、音楽のプロとの連携もはじめている。

コミュニケーションの質を向上

その他、サテライト金沢では、世界に2台しかない幼児用MEG(脳磁計)を使って親子でMEGを同時にリアルタイム計測することで、コミュニケーションと脳の状態の関係を解明しようという研究が行われている。これを活用すれば、個人の個性・才能を引き出すコミュニケーションが可能になるかもしれない。また、この知見をコミュニケーション・ロボットに応用することで、医療や福祉、教育の場面で治療やサポートに役立つロボットが生まれるかもしれない。

また、社会のネットワークを脳神経ネットワークに当てはめてモデル化し、組織を活性化する方法が研究されており、位置センサや加速度センサを用いてサッカーチームや教育の現場などで検討が進められている。

以上のようにユニークな研究が集まっているが、本COIのアピールポイントは「社会実装を強く意識しており、企業の参加にこだわっている点」(小倉氏)という。

現在17の大学・国立研究機関、および27の企業が参画しており、COIの期間終了の2021年度末(2022年3月)までに「スーパー日本人」の育成環境を整備する。

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