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民間団体・企業による地域救急救命サービスの試みを始動

民間団体・企業による地域救急救命サービスの試みを始動

ByMedtec Japan編集部

救急医療の病院前救護は消防機関の範疇とされているが、救急需要が増大し病院収容時間が延伸する中で、民間の医療資源を有効活用する可能性が注目されており、消防庁でも検討(救急業務のあり方に関する検討会等)されている。

また、救急救命士の国家資格の取得者は全国に約5万人いるのに対して、消防機関に所属していない救急救命士は約1万5千人とされている。救急救命士法によって救急救命士の救命措置は救急車に患者を収容する前と救急車内に限られているため、消防機関に所属していない救急救命士は実質的に資格に見合った医療サービスを提供できていない。

このような背景から、医療専門物流の株式会社メディトランセ、医療法人社団菱秀会、一般社団法人在宅健康管理を推進する会一般社団法人日本救急救命士協会が民間サービスとして救急医療サービスを展開していくことを発表し、7月26日記者会見を行った(右写真)。目指すのは、地域を病院、患者宅を病室と想定した地域救急駆けつけ搬送のモデルケース。以下の5つのサービスを提供する。

  1. 在宅患者のモニタリング・急変時の救急サービス
  2. 地域病院の転院搬送支援業務
  3. 大規模イベントなどの救急医療サービス
  4. 大規模災害時の救急搬送支援
  5. 医師によるモニタリング
表 地域搬送駆けつけサービスの位置づけ
  公的機関 民間
消防庁救急車 メディトランセ 民間救急車 介護タクシー 管理会社見守り
社内・医療行為
出来る

出来る
×
出来ない
×
出来ない
×
出来ない
緊急走行
出来る

出来る
×
出来ない
×
出来ない
×
出来ない
消防庁指定資機材の搭載
搭載する

搭載する

搭載する
×
搭載しない
×
搭載しない
従事する員数 3名(運転手1、救急救命士2) 2名(運転手1、救急救命士1) 1~2名 1~2名 1名
料金 無料 有料 有料 有料 有料
事前予約 不要 不要(契約) 必要 必要 不要

1. 在宅患者のモニタリング・急変時の救急サービス

在宅健康管理を推進する会では、医師・看護師による在宅健康見守りサービスとして「見まもりブレイン」を提供している。警備会社などが運営している類似のサービスとは異なり、医師が直接見守りにかかわる高品質な見守りサービスを特長としている。

患者に朝晩2回の測定値を自動送信する自動血圧計(オムロン社製自動血圧計 HEM-7251G)と、親指サイズで胸部に装着することでリアルタイムに心電波形を送信できる心電計(イメージワン社製duranta)を装着してもらい、医師がリアルタイムでモニタリングし、異常を検知すると本人と家族、施設やかかりつけ医に連絡が行われる仕組み。

今回の救急サービスでは、この仕組みを活用して、異常検知や緊急時に、救急救命士が駆けつけ、救急救命士が装着したカメラの映像を担当医師が見て、適切な指示のもと対処を行う。また、搬送が必要になっても患者の既往歴を把握しているため、医療機関への引き継ぎが的確に行われ、正確で迅速な治療開始が可能となる。

2. 地域病院の転院搬送支援業務

病院から病院への転送に救急車が利用されること(転院搬送)で、消防機関の業務が圧迫されており、緊急度の高い患者への対応が遅れていることが指摘されている。病院救急車などの民間の救急車、介護タクシーなどの活用がはじまっているが、医療スタッフが不安視する場合も多いため、救急救命士が同乗する救急車を提供し、急変対応が必要な場合の転送搬送業務を担う。

3. 大規模イベントなどの救急救命サービス

公共のイベントや施設で救急救命士を待機させ、もしもの際には救護・救命(特定行為を含む医療行為)を施し、速やかに搬送する。

4. 大規模災害時の救急搬送支援

災害時の救援に救急救命士を派遣する。

5. 医師による活動モニタリングとメディカルコントロール

救急救命士にカメラを装着し、提携救急医がその活動をライブでモニタリング(株式会社ソリトンシステムズ)を行い、助言や指示を行うことで、適切で迅速な直接メディカルコントロール体制を構築する。また、メディカルコントロールや救急救命士の生涯教育などを日本救急救命士協会が担う。

8月より菱秀会がある新宿区(訪問看護ステーション:30、特別養護老人ホーム:7、消防署:7)を中心にトライアルをはじめ、「見まもりブレイン」を展開している地域も視野に入れて拡大していく考え。

再診以降のテレビ診療が保険診療として認められるなど遠隔医療の制度化は進む方向にあり、今後、駆けつけサービス付きの「見まもりブレイン」のようなサービスが保険診療化されることも期待される。また、救急車の出動1回のコストは東京都で5~7万円、千葉県印西地区で25~30万円と試算されているが、救急救命士が救急車で患者を搬送すると保険点数は500点(5,000円)であり、実態にそぐわない制度となっている。このような実態に目を向けさせることも大事で、世論を喚起しながら、他の会社も巻き込んで民間による救急事業を活性化させていきたいという。

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