様々な可能性を秘める次世代ダーマルフィラー:BIOXIS

By: Medtec Japan編集部

フランスのBIOXIS社は、美容・皮膚科用の充填剤(ダーマルフィラー)の開発を行うスタートアップだ。今回、日仏のスタートアップを集めた支援プログラム「フレンチテック東京」のピッチ・デモセッション(6月1日@デジタルガレージ、開催:フランス貿易投資庁-ビジネスフランス)で、開発中のダーマルフィラーについて発表を行った。


ダーマルフィラーとは、美容分野でしわ治療やボリューム回復のために皮膚下に注射で注入する製剤で、BIOXISではキトサンとヒアルロン酸という2種類のバイオポリマーをベースにした製品を開発している。特に、同社独自のキトサン・マトリックスをベースに単層組織誘導テクノロジー(monophasic tissular inductor technology)を活用した“MTI-12”は、成分となるキトサンの組織の再生を促進する性質などから、コラーゲンやヒアルロン酸に続く注射剤として期待される。

同社では画期的なMTI-12の製品化前に、より製品化しやすいヒアルロン酸ベースのCYTOSIALの開発を進め、市場での認知度を高めておくことを目指す(CEマーク取得済)。CYTOSIALでは、注射をしやすくする工夫を行うとともに、独自の新しいヒアルロン酸の安定化法を用いることで高い流動性能、効果持続性、安全性を得た。しわへの治療レベルに合わせて3種類のラインナップを用意している(左写真)。

MTI-12の成分であるキトサンは、効果の高い創傷被覆材として利用されているように、ボリューム回復の速効性、コラーゲンの成長促進、吸収性と組織の再生促進の点で高い効果などが認められている。注入に際して痛みが小さいことや抗菌性も報告されており、患者やドクターにとってメリットとなる。

現在、MTI-12は前臨床の段階を終え、欧州でヒトへの臨床試験を8月にはじめる予定と創業者兼CEOのFrédéric Bertaïna氏(右写真)は話す。中国での申請も計画しているが、欧州の試験とは別に臨床試験を行う必要があり承認までに長く時間がかかる見込み。さらに、FDAへの申請には欧州に比べて5~10倍のコストがかかることから、米国で商品化するためには大規模な資金調達が必要だと感じている。

同社ではワクチンをキャリアにすることでバイオアベイラビリティを高めた薬剤送達、キトサンを利用し組織再生を促すことによる椎間板ヘルニア治療などの研究も行っている。まずは上記の注射剤で美容や皮膚科、リウマチ治療などの整形外科での参入を目指す。

BIOXISは皮膚科分野で事業開発を行ってきたBertaïna氏が2010年に創業。フランス国立科学研究センター(CRNS)の火傷治療の研究グループとの連携から、創傷治療に使われているキトサンを美容分野に応用できないかと考えて開発をスタートした。2012年に最初の特許取得、自社の製造施設を立ち上げた。特に再生医療が世界的に進んでいる日本でも連携相手を探している。

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