MEDTEC Online

がんの悪性度を検知する「ナノマシン造影剤」を開発

がんの悪性度を検知する「ナノマシン造影剤」を開発

By Medtec Japan編集部

5月16日、ナノ医療イノベーションセンター(川崎市)、東京大学、東京工業大学、量子科学技術研究開発機構は、がん内部の微小環境で悪性度や治療抵抗性に関する「腫瘍内低酸素領域」を高感度でMRIにより可視化できるナノマシン造影剤を開発したと発表した。

がん内部の低酸素領域は、薬剤が十分届きにくい、放射線治療の効果が低いといった治療への抵抗性があり、より悪性度の高いがんに変化して転移を引き起こす原因領域としても注目されている。

開発したナノマシン造影剤は、がん組織の微小環境を検知してMRIの信号強度を増幅するこれまでにない機能を有しており、既存のMRI造影剤よりも優れた腫瘍特異的イメージングを可能にすることを研究チームは明らかにした。

ナノマシン造影剤とは、がん組織での低pH環境に応答して溶解する「リン酸カルシウムナノ粒子」にMRI造影効果を有するマンガン造影剤を搭載したもの。

造影剤を内包した内核が、生体適合性に優れた高分子材料の外殻で覆われており、血流中では安定しているが、腫瘍内の低pH(6.5~6.7)ではpHに応じてマンガン造影剤を放出。これががん組織のタンパク質と結合することによって信号が約7倍に増幅する。

がん細胞を皮下移植したモデルマウスに投与しMRI計測すると、投与30分で腫瘍全体が造影され、時間経過とともに腫瘍中心部の信号強度が増大することが確認された(写真)。

(リリースより転載)

研究チームでは、ナノマシン造影剤によるMRIの信号強度変化が臨床で広く利用されている造影剤による信号強度変化よりはるかに大きいこと、信号が増大する部分は、組織切片の免疫染色による低酸素領域と乳酸がたまる部位と一致していることも確認。

また、直径1.5mmの微小な大腸がんの肝転移モデルでも高感度で検出することに成功した。

さらに今回の結果は、比較的安価な低磁場1テスラMRIによって得られたもので、高価な高磁場MRIを必要としないため、低コストでの病変部位の検出の高感度化も可能にする。

発表では、ナノマシン造影剤によって、従来から広く利用されている生体検査に比べて極めて低侵襲的で、体内のあらゆる臓器・組織に適用できる「イメージングによる病理診断技術」としての実用化が期待できるとしている。

治療前の効果予測や治療後の効果判定にも応用できるため、より確実な治療とともに、創薬への貢献も期待されるという。

カテゴリー: