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医療機器に部品・部材供給するには?ー新規参入へのアドバイスー

医療機器に部品・部材供給するには?ー新規参入へのアドバイスー

By: Medtec Japan編集部

自社の技術を新たに医療機器に応用できないだろうか―そのように考えている企業にとって、業界への参入に何が必要か?医療機器に特別なことはないのか?といった疑問がまず浮かぶ。“Medtec Japan”では「超入門!ヘルスケア業界への参入方法を探るセミナー」と題して新たに医療機器へ参入しようとしている異業種、スタートアップ企業の疑問に答えるセミナーを開催している。

本記事では、特に部材供給を行う際に必要になるものは何かという視点から、医療機器メーカーが求めるもの、製造物責任の考えについて解説したセミナーをまとめた。


部材供給先に求めるもの

まず、「医療機器メーカーの考え方をしろう~部材供給先に求めるもの~」と題して、旭化成株式会社研究・開発本部ヘルスケア研究開発センターセンター長付部長の城風淳一氏がレクチャーした。城風氏は一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会(MTJAPAN)で様々な委員会の委員をつとめる。

医療機器の開発を考える際に第1に留意すべきは、開発から製品化、販売後まで非常に長いタイムスパンがあること。特に、規制当局(日本では厚労省、PMDA)からの製造販売承認、保険診療で使用されるためには保険適用を申請し保険収載を受けるというプロセスが必要であり、QMS(品質マネジメントシステム)など様々な規制への対応も求められる(1)。

さらに一度製品化されれば、10年以上にわたって使用される機器も多い。このことを踏まえ、医療機器に関する部材は少量でも長期間、安定的に供給を行う用意があることが非常に重要になる。

城風氏は医療機器メーカーの立場から部材供給先への期待を以下のようにまとめる。自社にない優れた固有技術を有すること、要求する精度の加工技術を有すること、安定して高品質の部材を供給できること、安価な部材を供給できること、少量でも長期間・安定して供給できること、当該部材の製造・供給実績が十分にあること、QMS(ISO 9001など)を運用していること、GMP(Good Manufacturing Practice)の考え方を製造現場に反映していること。

また、城風氏が副委員長をつとめるMTJAPAN産業戦略委員会では、部材供給先に求めるものについて医療機器メーカーである委員会社へのアンケートを行っており、その結果が紹介された。

部材供給先に求めるものとしては、長期の部品供給を行うため「信頼構築が重要」といった意見、「尖った技術、高品質、納期厳守に関する信頼」が重要との意見があった。

また、部材供給先に求める条件として、「安定して高品質の製品(部材)を供給できること」、「自社にない優れた固有技術を有すること」の優先順位が高かった。医療機器の主要部材については、CE認証を取得した場合、第三者認証機関によるベンダー監査を受ける可能性がある。主要部材の供給先に対しては、ベンダー監査を受けられるという条件は必須になるだろうと城風氏は補足する。

部材供給先の選定にあたって優先する医療機器関連ビジネスの経験については、医療機器メーカーへの供給経験の有無と、当該部材の製造・供給経験(非医療機器メーカーでもOK)が重要視されていることがわかった。ISO 9002または9001取得の優先順位は低かったが、これは部材供給パートナーとして当然視されていると考えられる。

その他、より具体的なリクエストはMTJAPANのサイトから閲覧できる→https://www.mtjapan.or.jp/jp/matching/view.php?p=faq

MTJAPANでは、会員企業(製販企業)と、非会員企業とのマッチングを行う医療機器技術マッチングサイトを2012年2月から開設しており、異分野からの参入企業の技術と医療機器メーカーのニーズが出会う場を提供している。年1回はマッチングサイト交流セミナーも開催。

また、米Stanford大学で行われている医療機器開発手法(BioDesign)を導入した講座および研修コースも、大阪大学、東京大学、東北大学の3大学でスタートしている。医療従事者ではない開発者が医療現場である病院に入り込んで、医療ニーズを把握して新たな医療機器の開発を試行するという実践的な内容が特長だ。そのバイブルというべき『バイオデザイン日本語版』は2015年10月に発行されている(http://www.yakuji.co.jp/entry46863.html)。

製造物責任はどこまで適用されるか

次に、テルモ株式会社秘書室産業政策部長の三澤裕氏から、「製造物責任の不安を解消しよう~バイブルは部材供給ガイドブック~」と題した講演が行われた。三澤氏はMTJAPANで産業戦略委員会の委員長をつとめる。

まず医療機器産業の市場規模と成長性について、日本の動向としては、製品輸入の増加と生産移管により海外の生産拠点から直接海外へ輸出する傾向が強まっていること、日本企業の海外での売上が伸びていることが注目される。

日本の医療機器メーカーは日本国内でのシェアは高いが、海外の主要国では数パーセントとシェアが低くなっている。日本の医療機器産業にとっては、産業成長のカギは海外シェアを増やすことだといえる。

海外進出も視野に入れて医療機器への参入を目指し、製造物責任がどこまで当てはまるかを考えるにあたって、まず医療機器産業の構造を理解しておく必要がある。

医療機器では、部品・部材供給と製品供給は区別され、製造物責任は最終的な医療機器完成品の販売を行う製造販売(製販)業者が担う(2)。製販業者になるには都道府県から業許可を受ける必要があり、医療機器の販売にあたっては当該医療機器について「医薬品医療機器法」に基づいた承認を受ける必要がある。また、製造業者と製販業者にはQMS体制の構築とQMS適合性調査が課せられる。

医療機器への参入には魅力があるものの躊躇する理由として、製造物責任上のリスクがあり、医療機器はこわいという風潮があるが、製造物責任は製販業者が担うため、製販業者の指示通りに部品・部材供給を行うかぎり製造物責任を問われるケースはない。

米国で医療機器と部材供給企業が関係したPL裁判の調査では、いずれも部材供給業者が勝訴している。1998年には、インプラント用途の部材供給メーカーはPL訴訟から免責されるとするBAA(Biomaterials Access Assurance)法も制定された。また、日本の医療機器に関するPL裁判では部品・部材供給業者は訴えられていない。

日本のPL法でも、免責事由として「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと」と明記されている。

部材供給ガイドブック

医療機器への部品・部材供給の活性化を行うために、経済産業省では「医療機器の部材供給に関するガイドブック」(http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g110407aj_02.pdf )をまとめ、リスクを見える化し、部品・部材取引時の留意事項を明確化している。

本ガイドブックでは、供給する部品・部材の位置づけを、「汎用品」、「受託生産品」、「共同開発品」に区別して解説。医療機器に特別な対応が必要ではないとし、部材の仕様書の作成はもちろん、部材の変更または製造中止等についての取り扱い、リスクシェアリング、紛争解決の手段についても、部材供給側と購入側であらかじめ協議し、合意の上、明文化しておくことが望ましいとしている。

なお、MTJAPANでは海外進出サポートとして海外PL保険を提供しており、MTJAPANに参加している部材供給企業も保険を利用できる(MTJAPANは、正会員には製造業・製販業に限られるが、準会員としてはそれ以外の企業も加入できる)。

最後に、部材供給に向けてのアドバイスとして、三澤氏は、開発の早い段階から医療機器メーカーと信頼関係を築くこと、そのために“Medtec Japan”のような展示会やマッチングの機会を活用すること、そして城風氏が紹介したようなポイント、自社のコア技術を磨くことやオンリーワン技術、特許の取得などを意識すべきとしめくくった。
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