ナノテクノロジーによる移植可能な人工腎臓

バンダービルト大学の研究者らは、マイクロチップ技術と生体の腎臓細胞を利用した移植可能な人工腎臓の開発に向けて前進した。

By: Kristopher Sturgis(オリジナルの英文記事はこちら

この新しい機器は、老廃物の除去に役立つマイクロチップ・フィルターによって腎臓の濾過機能を再現することで、腎臓病患者の透析を不要にする可能性がある。チップはフィルター機能をもち、安価に製造可能で個々の患者の必要に合わせて正確に設計できる。

人工腎臓はマイクロチップ・フィルタを利用する
(Image courtesy of: Vanderbilt University Medical Center)

約15枚のマイクロチップで作動するように設計され、マイクロチップの周囲に生体の腎臓細胞を培養することで腎臓機能の再現を目指す。

バンダービルト大学医療センターの腎臓病医であるWilliam H. Fissell IV氏によると、この機器の新しさはポリマーからシリコンへの移行にあるという。

「基盤技術をポリマーからシリコンに変えることで人工膜の性能を最適化できるというアイディアが生まれました」とFissell氏。

「膜のために利用した技術はマイクロエレクトロニクスを応用したものです。膜孔の大きさや形状の微細なコントロールによって膜の性能の最適化が可能になり
ました」 。

Fissell氏によると、この最適化によって濾過のための圧力要求を満たすことができ、移植に適した機器の小型化も可能になった。このような機器により大きな電気ポンプは不要になり、患者の心臓によるポンプ機能だけで済む。Fissell氏によると、血液と機器の相互作用を制御することが大きな課題になるという。

「血液は、ゆっくり動くとゲル化(血塊化)する一方、高速に流れると損傷を受ける、細胞とタンパク質を含む複合的な非線形コロイド懸濁液です。この課題を解決するため、私たちは血液に起こるストレスを血流のコンピュータによる流体力学モデリングによって解明しようとしています。そして、血液への異物効果を改善するため表面化学を応用しています」(Fissell氏)。

これは、この機器が人体内で血液の流れと自然に動作するように設計されていることを意味する。研究チームはスムースな血液の流れを促進する流路の形状や大きさを改良するためにも、コンピュータ・モデルを使用している。

透析患者に向けて他の治療法を提供することを目指している研究は多い。2015年には、UCLAの研究者が“WAK”と呼ばれる新たなウェアラブル人工腎臓を発表した。ただし、これらの新しいアイディアでは体外の物理的な装置を伴う。Fissell氏は、自らの移植技術によってこのような状況を変革できると願っている。

「腎不全の最善の治療法は腎移植ですが、腎不全患者は米国に約50万人います」とFissell氏。「そのうち10万人がドナー待ちで、腎移植の実施数は1年で2万回です。透析で生命を維持できますが、患者や社会にとって大きな負担となります。私たちは現在の腎移植と同様に、機器を移植することで透析から患者を解放することを目指しています」。

Fissell氏は、この目標の実現への第一歩はなるべく早期にこの技術を実際の患者で試験することで、資金援助も受けられると話す。さらに、この技術を製品化する前には、機器の安全性と有効性を保証するためにより大規模な試験が必要で、そのための資金も必要になるだろう。

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