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ますます厳格化するFDA査察を教育訓練ICTで支援(1)

ますます厳格化するFDA査察を教育訓練ICTで支援(1)

By: Medtec Japan編集部

医療機器開発では、市場環境の変化への対応だけでなく、安全性・有効性・品質の確保を目的とする法規制への対応が求められる。規制内容自体も医学知識や技術の進展などに伴い変化が大きい。ますます厳格化しているという規制のトレンドと、その中でも今回は教育訓練についての対応方法について、長年東芝で医薬・医療機器メーカー向けシステムに携わってきた新井洋司氏(株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社)に具体例をまじえて聞いた。

株式会社東芝 インダストリアルICTソリューション社
新井洋司氏

FDA査察の背景とトレンド

──まず、多くの製造業と異なる医療機器業界の特性はどこにあるでしょうか?

新井 製品の設計・製造・流通に関して、各国政府が自国民の安心・安全を守るために規制を行っている点です。他業界では国際規格ISOは企業の自主品質基準ですが、この業界では国際規格ISO 13485等が薬機法(旧薬事法)と紐づけられQMS省令(Quality Management System:製造管理及び品質管理の基準)として制定されているのです。また製品ライフサイクル全般に関して数々の規制が存在し、守るべき内容が多いのです。どの程度遵守すればよいのか、新規参入企業にとって大きなハードルになります。

さらに米国へ販売しようとした場合、米国では規制当局である米国食品医薬品局(FDA)が、医療機器に関してCFR(連邦行政規則集) Part 800~1299の規制を明文化しています。

特徴としては品質マネジメントシステムに関する規制(Quality System Regulation:QSR)であるCFR Part 820 が、国際規格ISO 13485と比較して非常に詳細かつ厳格であることです。

また、FDAのQSRに基づく査察は日本のQMS適合性調査と比べても厳格化している傾向がみられます。

──FDAの査察の流れはどのようになっていますか?

新井 図1が査察の流れです。FDAからの指摘や警告書(Warning Letter:WL)に適切かつ迅速に対応しないと、販売停止措置を受ける、制裁金を課される、工場の改善を要求されるといった代償を払う必要性が生じるのに加えて、企業ブランドが失墜することになります。

図1 FDA査察の流れ

──最近のトレンドは?

新井 明らかなのは米国外の施設への査察が増えている点です(図2)。2014年には査察を受けた2,213施設のうち米国外の施設が594、そのうち日本の施設は37でした。2013年は24施設でしたので13施設も増加しています。

図2 米国外の施設への査察の増加
(出典:2014 Annual FDA Medical Device Quality System Data より)

今後、米国外の施設でもFDAからの品質管理に関する詳細な査察が増加すると考えられます。医療機器を開発している日本のメーカー、新たに参入を計画している企業はそのことを十分に理解し準備を行い、実際に査察があったら対応できる体制を構築しておかなければなりません。

教育訓練に関しても厳格化するFDA査察

──先ほどISO 13485より、FDAのQSRの方が厳格とのことでしたが?

新井 例えばISO 13485にはない事項としてQSR:Part 820.25の「Personnel(要員)」についての記載(下記)があります。これは“Awareness Training”と呼ばれるもので、教育訓練を実行して記録しなければなりません。特定業務についての教育・訓練の解釈も実践的かつ具体的で、最新版のSOP(Standard Operating Procedure:標準作業手順書)で訓練し、業務を行っているかという点も問われる場合があります。

QSR:Part 820.25 Personnel(要員)
(b)訓練

  1. 訓練の一部として、要員の自らの特定の業務が不適切に行われたことにより、起こるかもしれない機器の欠陥の訓練をさせなければならない。
  2. 検証および妥当性確認を行う要員には、業務の機能の一部として遭遇するかもしれない欠陥および誤りを熟知させなければならない。

──最近のFDA査察から教育訓練に求められていると考えられることは何ですか?

新井 教育訓練に関する査察指摘事項はより一層厳格化される傾向です。最近の指摘事例から教育訓練管理に求められていることをまとめると下記のようになります。

  1. 教育訓練記録の正確さ:いつ、どんな教育を受けたのか、教育資料と紐づく正確な教育記録づくり
  2. 教育訓練実施の有効性評価:テスト等による教育効果の確認、および不正解率の高い設問等に対する再教育管理など、テスト実施結果の分析に基づいた適格なフォロー
  3. 教育カリキュラム管理:知識学習、集合教育、OJT(技能教育)など1つのテーマに関連する複数の教育科目の一元管理、きめ細やかな教育プログラムの立案
  4. 年間計画の立案・報告:評価に基づいた教育プログラムの立案、計画書の版管理、個々の計画と実行プログラムとの紐づけの明確化

教育の「質」と「教育訓練記録で証明できるか」の2点に関する指摘が増加しています。事前に理論(SOP)を学習し十分な練習(practice)を積んだ要員を業務にあたらせることが重視されていることがわかります。

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