医療機器の生体適合性評価:FDA、ISO、日本のガイドライン

生体適合性試験に関する日本、FDA、ISOのガイドラインについて、一致点と相違点をエキスパートが概説する。

By: Zhenghong Tao, Laurence Lister, and Keisuke Suzuki(オリジナルの英文記事はこちら

規制機関による医療機器承認のプロセスには、機器の生物学的安全性を保証するための生物学的安全性評価が含まれる。1995年にFDAがブルーブック覚書(#G95-1: "Use of International Standard ISO 10993, 'Biological Evaluation of Medical Devices'—Part 1: Evaluation and Testing")を発表して以来、全く同一ではないが同様の生物学的評価・検証を用いて、欧州の当局およびFDAに医療機器承認申請を同時に提出することができる。

2012年以前には、日本にはいくつか重要な点でISO 10993内のガイドラインとは異なる独自のガイドラインがあった。そのために、日本市場で発売しようとする医療機器は日本独自のガイドラインに合わせるために、異なる研究プロトコルを用いて試験が行われていた。

近年には国際的協調がはかられ、最近のISOガイドラインの改訂では日本の研究プロトコルが採用あるいは参照され、2012年日本の厚生労働省は多くの部分でISO規格に合わせた生体適合性評価の改訂ガイドラインを発表した。2013年にはFDAもISO規格の改訂を反映したドラフト生体適合性ガイダンスを発表した〔FDAの最終ガイダンスについては関連記事(英文)を参照のこと〕。

以下では、各種の生体適合性ガイドラインの最近までの一致点について述べ、要件の相違点について説明する。

生物学的安全性評価の原則

接触(contact)の種類と期間に基づく医療機器の分類は、ISO、FDA、厚労省それぞれのガイドラインで非常に類似しており、調査されるべき生体適合性の領域を特定している。現在のFDAガイダンスと厚労省ガイドラインは、いくつかの例外を除いて、現状のISO 10993-1: 2009で更新された試験マトリックスを採用している。厚労省ガイドラインでは以前のバージョンから引き続き、発熱性を独立の評価項目としている。FDAは急性全身性毒性、亜慢性毒性、埋植(implantation)に関する試験を機器/患者の曝露として考慮すべきと推奨しており、この点でISO 10993-1と異なる。以前のバージョンのISO 10993-1では、発がん性や慢性毒性のような評価が推奨される補足評価の表が含まれていたが、現在のバージョンにはなくなっているのに対して、FDAでは依然として、このような項目は機器のリスク評価に基づいて解決すべきと特定されている。

現在のISO 10993-1規格とFDAガイダンスでは、試験マトリックスは単に試験選択のための枠組であり、必要な試験のチェックリストではないとされている。生物学的評価は、生体適合性試験が必要かを決定する以前の既存の情報を考慮するアプローチに従う。ISO 10993-1もFDAも、生体適合性試験が必要かどうか、また最終の滅菌された機器の生体適合性を担保するのにどのような情報が必要かを説明するために同様のフローチャートを用いている。

さらにFDAでは、塗料粒子の放出や剥離による化学物質の浸出などのような機器の機械的不具合によってもたらされる生物学的危害についてのリスク評価を行うことを特に推奨している。

2012年の厚労省ガイドラインは以前のバージョンを踏襲している。原則として表のマトリックスで示される項目ごとに評価が行われるべきとし、このマトリックスでは、既に承認されている医療機器との同等性の評価と、適切な論文発表による評価を特定している。

抽出液試験(extract testing)のための試料調製

厚労省のガイドラインは、直接接触試験に比べて高い感度を示す抽出液による試験を推奨している。FDAと厚労省はISO 10993-12で示されているように、表面積/抽出液体積を選んでいる。

また、FDAは高温での抽出を推奨している。短期間の表面接触機器や、37℃以上では分解してしまい最終製品には示されない毒性をもたらす材料の場合のみ、37℃で72時間での抽出条件を用いるとされている。

複数の接触カテゴリーを持つ機器

該当機器が接触期間について複数のカテゴリーが適用される場合、厚労省のガイドラインでは、最長の接触期間のカテゴリーの項目が評価されなくてはならない。複数の接触部位が適用される場合は、それぞれの接触部位のカテゴリーに基づいて評価されなくてはならない。一方FDAガイダンスでは、様々な接触期間や接触部位を含む機器の場合、それぞれの項目について抽出液試験を行うことが推奨されている。また材料が新しい場合、新材料の部品については別に試験を行うことが必要になる。

試験プロトコルの一致点

厚労省は2003年のバージョンのガイドラインでは、ある種の試験については特定のプロトコルと評価を指定していたが、新たなガイドラインではISOやFDAのガイドラインとの一致点を示した。

細胞毒性試験
ISO 10993-5:2009は、以前のバージョンで記載された半定量的または定性的な方法に比べて、定量的な方法が望ましいと推奨している。これには、厚労省に指定されたコロニー形成アッセイ法を含む4つの定量的な方法があげられている。

厚労省は他の定量的方法がISO規格に記載されていることを認めながらも、最も高い感度があるとしてコロニー形成アッセイ法を望ましい方法として指定している。また、厚労省はISO規格を採用してコロニー形成アッセイ法の評価基準を更新した。

感作性試験
ISO 10993-10: 2010 Annex Eは、モルモットのMaximization試験(GPMT)で使用される高分子試験材料の抽出液の調製に関する厚労省のガイダンスに基づいている。一方で、厚労省のガイドラインは、GPMTにおける有機樹脂の抽出液調整において改訂ISO規格を参照している。

遺伝毒性試験
ISO 10993-3の2014年バージョンは技術面で改訂され、「遺伝毒性試験における適切なサンプル調製手順の選択に関するガイダンス」をAnnex-Aとして加え、厚労省の遺伝毒性試験に関するガイドラインを取り入れている。さらにISO規格では7つの一般的な抽出溶媒が示されている一方、厚労省のガイドラインでは2つの溶媒のみ指定されている。

厚労省は2件のin vitro遺伝毒性試験が評価のために行われるべきとしている。ISO 10993-3規格ではAnnex Bのなかでフォローアップ評価のためのフローチャートが示されており、化学物質の抽出液が2件のin vitro試験で遺伝毒性がないのであれば、追加のin vivo試験は必要でない。しかしFDAガイダンスでは、2件のin vitro試験と1件のin vivo試験という3件の遺伝毒性試験が推奨されている。

埋植試験(implantation tests)
厚労省の2012年のガイドラインのPart 4が改訂され、埋植試験に関してISO 10993-6が厚労省のガイダンスに取り入れられた。結果的に、ISO規格に則って行われる埋植試験が厚労省に受け入れられている。

発熱性試験
発熱性試験はISO 10993-11に含まれている。FDAと厚労省は発熱性を独立した評価項目と考えている。さらに、FDAと厚労省は材料媒介発熱性と細菌性発熱物質(エンドトキシン)の両方を評価することを推奨している。USP 34<151>についてのFDAガイドラインに示された発熱性試験の手続きが厚労省に受け入れられた。

血液適合性試験
厚労省は血液適合性試験についてのISO 10993-4を取り入れている。血栓形成、血液凝固、血小板、血液学的項目、補体活性化システムが評価されなくてはならない。溶血試験は生理食塩水抽出液を用いて実施される。FDAでは、直接血液に接触する機器に関して、溶血、免疫(補体活性化)、血栓形成性試験を考慮すべきと推奨されている。溶血試験は直接および間接法で実施する必要がある。FDAは血栓形成性は関連する動物モデルで行われる安全性調査の一部として評価されることを推奨している。代替手段として、4時間イヌ静脈ヘパリン化モデルを血栓形成性評価に用いることができる。

刺激性および全身毒性試験
厚労省はISO規格を取り入れて、刺激性および全身毒性試験のプロトコルを改訂した。厚労省は、全身毒性試験(亜急性、亜慢性、慢性全身毒性試験)のために繰り返し投与する抽出溶媒として生理食塩水を定めている。ISO規格もFDAも特定の抽出溶媒を定めていない。原則としてFDAは極性および非極性両方の抽出剤を考慮すべきと推奨している。動物福祉の観点から毎日繰り返し非極性の抽出剤を投与することは推奨されない。FDAとISOのガイドラインでは非極性抽出剤をどのように扱ったかを明確化することが必要とされている。

結論

厚労省のガイドライン、FDAのガイドライン、ISO規格は大部分で一致している。この一致によって、医療機器メーカーはEU、FDA、厚労省に対する申請のために同時に試験を行うことができるように道が開かれた。これによって医療機器の評価申請の視点に含まれる追加の内容を行う必要性は小さくなるが、各規制機関では詳細の考察やリスク評価の強調点において相違点を有している。

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著者紹介
Zhenghong Tao Dr. Eng.: Abiomed Inc. のプリンシパル・エンジニア
Laurence Lister B.S. LATG:Toxikon Inc. の生体適合性サービス・ディレクター
Keisuke Suzuki:Keisuke Med Tech Consulting LLC. のコンサルタント兼オーナー

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