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リハビリや生活支援のための電動グローブ:中央大学 諸麥研究室

リハビリや生活支援のための電動グローブ:中央大学 諸麥研究室

By: Medtec Japan編集部

中央大学理工学部の諸麥俊司准教授(生体医工学)の研究室では、独自開発のインターフェースを利用してリハビリや生活支援のための電動グローブの開発を行っている。

1.脳卒中患者の機能回復訓練用電動グローブ

脳卒中患者の機能回復訓練用電動グローブは、脳卒中患者の前腕に取り付けた筋活動センサが微かな指運動意図を読み取り、それをコントローラに送信。コントローラがグローブの指につながる複数の糸の張力を制御し、グローブの形状を変化させることによって、複数関節を個別に操作して様々な指運動を可能にする。

コントローラ部とグローブ(提供:中央大学諸麥研究室)

生体情報の読み取りには筋肉の活動電位を用いる機器もあるが、同研究室では簡便な測定のために服の上からでも読み取り可能な筋肉の形状や堅さの変化から筋活動量を算出するセンサを用いている。

訓練の手順は、利用者がグローブを装着し、医師や療法士が簡単なレバー操作で複数の指姿勢をコントローラに記録し、回数を指定してスタートボタンを押すと記録した指姿勢を順次補間を行いながら一連の動作として繰り返し実施する。この指運動は利用者が運動努力を行う場合のみに行われ、運動意図が読み取れないと停止する。

この装置により、本人の運動努力と一致した他動運動が可能となり、従来の訓練よりも高い促通効果が期待される。脳梗塞による片麻痺患者を対象とした試験的な臨床研究では、リハビリ効果を簡易上肢機能検査(STEF)、脳卒中片麻痺10秒テスト、フューゲル‐マイヤー運動機能評価、上肢使用状況評価(MAL-AOU)を用いて評価し、ベースラインに比べいずれも明らかなスコアの改善が見られた。

現在の試作機では4つのモーターで人差し指のみの運動を実現しているが、モーターの数を10個に増やし、親指を含めより多くの指を用いた訓練を可能とする装置の開発を進めており、近い将来の医療機器としての製品化を目指している。

今後、長崎大学医学部保健学科の東登志夫氏と東京女子医科大学リハビリテーション科の和田太氏の協力を得て、九州と東京の医療機関において更なる臨床研究を進める。

2.頚髄損傷患者の生活支援のための電動グローブ

同研究室では同様のインターフェースを用いて頚髄損傷患者の生活支援のための電動グローブも開発している。

筋活動センサはこめかみ部分に取り付け、奥歯を軽微に噛んだ際の筋活動を合図に指運動を行う。噛んでいる間だけグローブの指を一定量曲げるモードと、噛む度に指の曲げ伸ばしを切り替えるモード、噛む力の強弱で握力を加減できるモードの3パターンが可能。

頭部用筋活動センサと電動グローブを装着してブロックをつまむ諸麥氏。右下がコントローラ(提供:中央大学諸麥研究室)

筋活動センサはこめかみ部分以外にも取り付け可能で、例えば食事時など咀嚼に関わる筋肉が使えない場合は腹筋など他の筋肉を利用することもできる。

コストや利便性を重視し、生活で最小限の指運動ができるモーター数とグローブの構造とし、コントローラ部は車いすの後部に取り付けることを想定している。

今後、生活支援だけでなく就労支援での活用も視野に入れる。義肢装具会社と連携し、頚髄損傷者を対象とした補装具としての製品化を目指し、更なる開発を進めている。

 諸麥俊司 氏に聞く

──機器開発のきっかけになったことは?

米国の大学院留学時代はロボットスーツの研究をしており、その技術を福祉機器に生かしたいと考えていました。電動グローブは頚髄損傷の学生の学業をサポートするために作りはじめたのがきっかけです。

──医療や福祉分野との連携はどのように行われていましたか?

以前在籍した長崎大学の研究室はNPO法人長崎斜面研究会に参加しており、障害者や高齢者、医療福祉関係の方々からの様々な困りごとやニーズに医療関係者と連携して対応していました。医工学連携をやりやすい恵まれた環境だったと思います。

医工連携は難しいという意見もありますが、医師に協力をお願いするのではなく、その医師の専門分野に貢献したいという思いで望み、熱意をうまく伝えられれば、協力的な関係が築けるのではないかと思います。

──今後のどのような分野に注目されていますか?

医療にはまだまだ工学的な解決ができるものがたくさんあると思います。特に外科手術の分野は、新しい計測技術やロボット技術などの導入によって、より安全で医師と患者の双方に取って負担の少ない治療を可能とする技術がこれからどんどん出てくると考えており、私もこの分野に少しでも貢献できればと考えています。

また、睡眠分野にも注目しており、睡眠時無呼吸症候群を改善する装置の開発に8年前から取り組んでいます。理工学部ではありますが研究室には睡眠外来と同等な評価が可能な睡眠ラボがあり、呼吸だけでなく、睡眠の質を総合的に改善するため工学的アプローチを探求しています。

中央大学諸麥研究室:

http://www.elect.chuo-u.ac.jp/moromugi/

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