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米国と欧州、医療機器のリーダーは?

米国と欧州、医療機器のリーダーは?

医療機器分野の世界的リーダーはこれまで米国だったが、少なくとも主要医療機器メーカーの多くが欧州に拠点を置いていることから、欧州も勢力を強めつつある。

By: Brian Buntz(オリジナルの英文記事はこちら

(提供:Eucomed)

従来通りの考えでは、医療機器産業で米国が依然としてもっとも影響力のあるグローバルプレイヤーである。しかし、トップ5の医療機器メーカーをみると、米国が拠点なのはジョンソン・エンド・ジョンソンだけである。トップ10では、メドトロニック(アイルランド)、GE(ヘルスケア部門は英国)、フレゼニウス・シーメンス(ドイツ)、ノバルティス(スイス)、フィリップス(オランダ)の半数が欧州を拠点にしている。

米国ではいわゆる“inversion deal”(米国での高い法人税を避けるための合併・買収等)を取り締まろうとしているものの、大幅に安価な法人税を求めて米国の企業が本社を移転する動きは続く可能性がある。製薬・医療機器メーカーであるファイザーによるAllergan社(アイルランド)買収計画もヘルスケア業界におけるこのような動向を反映したものかもしれない。8月にWall Street Journal紙上の「継続するinversion dealの魅力」と題した記事では、inversion dealは米国に本拠を置く企業にとって一般的な手法であり続けると指摘されている。「欧州では法人税が低く、多くの医療機器メーカー(と他産業の企業)は本社を欧州に移転しつつあります」とGlySure社(英国)の規制問題マネジャーのMarcus Gould氏はLinkedIn医療機器グループの会話で述べている。

おそらく欧州に拠点を置くことの最大の利点は財務的なものだが、規制に関する市場化の際の利点も考えられる。米国の法人税率は39%程度にまでなる場合があるのに対して、欧州には10%台の国もある。例えばアイルランドは12.5%、スイスは8.5%である。

しかし、欧州には利点ばかりではない。欧州の全体的な経済には活力がなく、米国経済はドルとともに上昇中である。11月16日時点で米ドルは0.94ユーロにまでなっている。ただし、これによって米国製品は高価になり輸出を減らしている。Emergo社による2015年の医療機器業界概観によると、米国は世界の医療機器市場の38%を占めている。

今年だけを考えると、ギリシャの財政危機があり、ドイツとスイスの失業率はそれぞれ5.1%と3.1%で米国の失業率(5.5%)よりも低かったが、スペインとイタリアのような国では失業率が依然として高かった。

欧州に本社を置くようになった米国の医療機器メーカーは一握りだが(メドトロニックは最大の典型例)、市場のシェアという点では米国は2桁のリードを保ち続けるだろう。Eucomed(欧州医療機器産業連合会)によると、2014年時点での世界市場のシェアは、欧州28%、米国39%、日本10%である。

地域での研究開発への支出をみると、欧州は2007年に1位だったが、今はアジア、北米に次いで第3位である〔PwC社の2015年のグローバル・イノベーション調査(Global Innovation 1000)より〕。西欧の研究開発費の輸出から輸入を引いた差額は2007年から2015年に4倍以上になっており、資金はアジアだけでなく米国にも流出している。

「企業の役員層は、米国のより柔軟な経営環境に加えて、イノベーティブな文化を活用したいと私たちに話しています」とPwC社の米国自動車・製造業主任のBarry Jaruzelski氏はニュースリリースで述べている。

メドトロニックはCovidien社を買収した後、多くの医療機器スタートアップ企業を買収したが、ほとんどすべては米国拠点の会社であった。

フィリップスも米国MITのイノベーション能力を認めており、最近同社のコア分野であるヘルスケアと照明関連の研究に関してMITとの提携(5年間で2500万ドル)にサインした。また同社は、重症の糖尿病足病変に対する最小侵襲治療の欧州多施設臨床試験のために、アカデミック・メディカル・センター(オランダ・アムステルダム)との提携も行っている。

さらにメドトロニックは、糖尿病患者に医療機器だけでなくサービスを供給するための努力の一環として、糖尿病の子どもや青年に対して包括的・個人的治療を供給しているオランダを拠点とするクリニックおよび研究施設であるDiabeterを買収している。

欧州にとって明るい材料は、貿易収支の面では米国を上回っている点である。2012年に欧州では医療機器について155億ユーロの貿易黒字であり、米国はその3分の1程度の黒字であった。2012年に欧州の医療機器の41%は米国で販売された。

アジアの状況

アジア市場には膨大な成長のポテンシャルがあるが、米国や欧州と比べるとアジアの医療機器メーカーは非常に少ない。トップ100の医療機器メーカーのうち、18社が東アジア本社であり、12社が日本である。

一般的に多国籍企業はアジアに重点的に投資しているが、多くの世界的な医療機器メーカーはアジアに参入してきた。中国の経済後退と中国や日本での規制面での困難さによって状況は複雑化している。

それでもアジアは研究開発支出ではトップの地域である〔PwC社の2015年のグローバル・イノベーション調査(Global Innovation 1000)より〕。

 

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