欧州の医療機器市場についての7つの予測

西欧の医療機器市場は、勢いを取り戻そうとしているものの、依然低調なユーロ圏の経済状況の制約を受けたままだろう。一方で、ユーロ圏以外では英国主導でより高い2014~2019年のCAGR(年平均成長率)を記録するだろう。輸出は増えているものの、西欧市場は依然として輸入に依存し、東欧やアジアといった低コストの製造拠点への移行を反映して、世界的な貿易市場ではシェアを減らしていくだろう。

By: Karen SimpkinsBMI Research 医療機器市場アナリスト)、Ricardo VicenteBMI Research 医療機器市場部門長)(オリジナルの英文記事はこちら

ドル高によって2015年の西欧市場は縮小

短期的には西欧でGDPの実質的な改善は期待できない。ユーロ圏では実質GDP成長率は2015~2019年で平均1.6%と予測される。非ユーロ圏では1.8%。これは世界全体の数字(3.1%)と比較すると低調な数字である。結果として、西欧市場全体でコスト抑制が課題となり、人口高齢化や慢性疾患の増加、新しい医療技術による設備の取換ニーズや投資といった潜在的な成長要因と相殺することになる。

私たちの予測では、西欧の医療機器市場は、2014~2019年に米ドルベースで2.7%のCAGRを記録し、2019年には製造価格で1,013億米ドルに達すると考えられる。CAGRは英国で最大の5.1%、イタリアで最小の0.8%と見込まれる。西欧では世界の医療機器市場の平均より低調だが、以前高い成長率をみせた市場でも1ケタ台に成長率が落ち着いていくなど成長率は落ち着く傾向にあり、世界全体の成長率も5.0%以下に下がってきている。

非ユーロ圏では高いCAGR(2014~2019年)が期待

特に2015年は、強いドルの影響で市場実績は低調であり、すべての西欧市場でも縮小予測となっている。米ドルに対するユーロの20%の下落のため(2015年末には同額にまで近づくと予想)、ユーロ圏市場ではもっとも顕著な下落を記録するだろう。私たちは多くの市場は2016年に再び低成長になり、2017年から高成長になると予測している。ただし、スペインとイタリアでは経済の低成長、予算縮小、医療技術への投資制限のために2016年にはさらに衰退するだろう。比較的低調な成長率にもかかわらず、西欧市場は世界の医療機器市場の約4分の1を占め、人口1人当たりの消費額は世界平均の2倍以上を維持し2019年には260米ドルに達するだろう。

貿易市場でのシェア縮小

西欧の医療機器市場は輸入依存のまま推移するだろう。ドイツ、フランス、英国では国内製造業が成熟しているために輸入製品のシェアは70~80%だが、全体として輸入製品のシェアは80%以上を維持するだろう。

2009~2014年に医療機器輸入は米ドルベースでCAGR 4.2%で成長し、904億米ドルに達した。80.1%の輸入依存度だったユーロ圏市場はさらに高い4.6%のCAGRを記録し、非ユーロ圏市場では2.8%のCAGRであった。ユーロ圏市場での高い成長率の要因として、米国の多国籍企業によるベルギーとオランダ、アイルランドでの再輸出拡大があげられる。非ユーロ圏での低いCAGRは、国内(Veddesta)でSt Jude Medical社のペースメーカ製造拠点が閉鎖したことによって輸出入ともに減少したスウェーデンの低成長を反映している。

ユーロ圏の輸入では高いCAGRを記録(2009~2014年)

私たちの予測では、西欧は今後5年間も世界の医療機器輸入の約40%を占め続けると考えられる。これは2014年の状況と変化はなく、2009年の45%からは減少している。ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、英国が主要な輸入国であり続けるだろう。

医療機器の輸出をみてみると、2009~2014年に米ドルベースで5.4%と輸入よりやや高いCAGRで1,127米ドルに達した。CAGRはポルトガルで最大の12.7%、スウェーデンで最小の-4.0%であった。ユーロ圏の市場が西欧市場の80.1%を占めCAGRは6.1%、非ユーロ圏ではCAGRは2.7%であった。これには、いくつかのユーロ圏市場における再輸出の活発さとスウェーデンでのペースメーカ輸出の中止が背景にある。

ユーロ圏の輸出では高いCAGRを記録(2009~2014年)

ドイツ、オランダ、ベルギー、スイス、アイルランドは主要な輸出国であり続けるだろう。ただ、世界の医療機器輸出における西欧のシェアは徐々に減少しており、2009年54.4%、2014年51.5%である。これは、製造業が東欧やアジアの低コスト生産拠点へ移行したことと、多くの発展途上市場が輸入依存から脱していることを反映している。注目すべきは、ブラジル、中国、インド、マレーシア、ロシア、韓国では国内の医療機器産業への野心的な投資プログラムを開始したことである。

2014年に地域全体の貿易赤字の総額は223億米ドルまで落ち込んだ。フランス、スペイン、イタリア、英国は医療機器分野での貿易赤字は大きく、それぞれ20億米ドルを超過している。過去5年間もそうだったが、市場規模からするとスペインの赤字は非常に大きい。ノルウェーやポルトガルでも小さな赤字だが、市場規模に応じた赤字である。残りの市場では貿易黒字であり、ドイツ、アイルランド、スイス、オランダが牽引している。低い法人税、高い製造能力、流通拠点があることが輸出における利点となっている。

ドイツ:今後もユーロ圏でもっとも魅力的な市場に

ユーロ圏ではドイツは引き続きもっとも魅力的な医療機器市場であり、西欧の消費の約30%を占めていくだろう。

ドイツ市場は地域全体を上回る唯一のユーロ圏市場となるだろう。ドイツ市場の強みは、整備された健康保険制度と、コストの圧力にもかかわらず高品質のサービスを維持しようという姿勢である。2014年末に連邦内閣は、高品質の医療ケアサービスへのアクセスを保証するための公的保険制度の変更と、革新的なヘルスケアの調達を奨励することによって地方の医師不足を解消するための変更を実施する法案に賛成した。2016年1月に施行予定の、病院セクターの改革のための新しい法的枠組みも慢性的な病院への過少投資を解消するためのものだ。重要なのは、連邦政府と連邦国家との間で5億ユーロ(6.02億米ドル)の病院リストラ基金が設立されたことである。それでも、特に共同購買や入札といった物価下落圧力の持続によって、利益率は頭打ちが続いている。

フランス:追加の効率改善策を導入予定

ドイツに比べると成長率は劣るが、フランスでもユーロ圏の平均以上の成長がみられるだろう。過去3年間の弱い経済成長によって赤字が続く健康保険制度にはさらなる圧力がかかっており、効率性をより改善する努力を促している。外来セクターで払い戻し可能な機器への支出を削減する方法を実施し、関係機関は病院セクターでの支出により大きな注意を向けはじめた。

2014年9月にはPHARE病院責任購買プログラムのフェーズ4が開始した。このプログラムのフェーズ1~3では、22億ユーロ(27億米ドル)の支出削減、そのうち医療機器に関連する4億ユーロ(4.82億米ドル)の支出削減が可能であることが示された。加えて、今後3年間の健康保険支出の増大を見越して、追加の効率改善を要するさらなる削減プランが発表されたことからも、医療機器メーカーの運営環境はますますチャレンジングなものになってきている。しかし、政府のコスト抑制プログラムは、医療機器メーカーより製薬メーカーに打撃が大きいと考えられる。というのも、公立病院への投資支援や外来診療、特に外来手術と遠隔治療の拡大によって医療機器メーカーは利益を得られるかもしれないからである。特に外来手術や遠隔治療の拡大は、最小侵襲手術機器や遠隔モニタリング製品を開発するメーカーにとって好機である。

低迷する南欧市場

最もスピードの遅い市場であるイタリア、スペイン、ポルトガルを含む南ヨーロッパでは、他のユーロ圏市場よりはるかに弱い動きが予想される。改善はみられるものの、公的部門から医療機器業界への支払いの遅延は医療機器市場において依然として問題である。

スペインでは、予算の圧力と国民保健制度(Sistema Nacional de Salud:SNS)でのコスト抑制策も市場の成長の足かせになっている。2015年に実施されたコスト抑制策とは、地域間格差につながる継ぎはぎ的な投資、機器が時代遅れになるにもかかわらず新たな医療設備導入への規制、医療機器への増税であった。イタリアでは、近年病院の債務を減らそうとする努力がある一方で、国民保健サービス(Servizio Sanitario Nazionale:SSN)での財政的制約が市場の成長を阻害し続けている。私たちは、2015年7月に可決した法律による保健サービス関連財源の大きな削減によって、医療機器への支出は圧迫されると考えている。業界団体であるAssiobiomedicaは、病院は革新的技術に投資する資源がなく、質が低く時代遅れの医療設備を買うことを強いられていると懸念を表明した。

英国:実質の支出増で最高の成長率が期待

最も成長率が高い医療機器市場はユーロ圏ではない英国である。英国は花形選手で、今後5年間で英ポンドベースで3.3~4.0%の年成長が見込まれる。2014年に今後10年間の終わりまで追加で年300億英ポンド(455米ドル)の必要性を示した5年間の前向きレビューにおける必要性を満たすべく、2015年5月に成立した保守党政権は国民健康保険(NHS)財源の最小限の実質増額を約束した。

この目標のうち約220億英ポンド(333億米ドル)は、一般開業医(GP)が病院にかわって小手術や簡単なスキャンを行うことを含む効率性改善によって捻出することが想定されている。2015~2016年度には、NHSイングランドは、新たな診療モデルの構築とプライマリケアへのさらなる投資に必要な投資の開始を支援するために、追加で20億英ポンド(30億米ドル)を調達することを計画している。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの分権政権も追加の財源を受け取るだろう。

財源の増加にもかかわらずコスト抑制に焦点が当たっており、これは拡大された資源を最大化できる新しい技術を採用しようとしているNHSにとって新しい好機になっている。最新の提言を受けて、NHSでは最新の衣服やウェアラブル器具を医療記録とリンクさせ、患者の長期間の記録を遠隔からモニターすることもできるだろう。医療関係の専門家は、このようなデジタル化が負担減をもたらし次の10年間で50億英ポンド(79億米ドル)の節約につながると考えている。目標は、2018年までに初期・緊急・救急診療に関して、2020年までにその他すべてのNHSによるサービスに関して、医師や看護師が英国中の最新の救命データにアクセスできるようになることである。

ノルウェー:医療サービス改革によって成長が期待

平均以上の成長が期待されるもう1つの国はノルウェーである。2014~2019年のノルウェーの通貨ベースでのCAGRはこの地域で最高の5.3%である(米ドルベース換算では3.9%)。ノルウェーには既に医療関係の高い支出を伴う高品質の医療制度があるが、未開発の民間セクターが抑制要因であった。保守系主導の連立政権は、患者の選択と待ち時間の減少、迅速な診療を約束する開発プログラムを策定した。この改革によって、地域の医療機関で入札を通じた民間企業からの購入をより増やす道が開ける。さらに公立病院がより多くの患者を受け入れる裁量を拡大することができる。

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