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積極的発信と身の丈に合ったビジネスを:奈良精工・中川社長に聞く

積極的発信と身の丈に合ったビジネスを:奈良精工・中川社長に聞く

By: Medtec Japan 編集部

医療機器業界への参入と事業展開の実態はどのようなものだろうか?今回は企業側の立場から奈良精工株式会社(奈良県桜井市)の中川博央社長に医療機器分野への参入経緯や現状、心得について話をきいた。

奈良精工はもともとミノルタカメラの子会社として1968年に光学機器部品加工メーカーとして出発。1990年代半に歯科用インプラントから医療機器分野に進出し、1999年にISO13485取得、2005年には第一種医療機器製造販売業許可取得し、医療機器事業を展開してきた。近年では医療機器分野の売上が同社の25%前後で推移している。

───進出のきっかけは何でしたか?

中川氏 カメラ関係の取引会社から歯科用インプラントの特殊な加工の依頼を受けたことがはじまりでした。歯科医から依頼を受けるうちに、自社での製造販売を考えるようになり、2005年に製販業許可を取得しました。

当時は現在と比べれば業許可も医療機器の規制も緩やかでした。当時はカメラの部品点数が減少していく時期ですから、カメラ以外の分野も仕事を増やさないといけないという危機感から選択肢の1つとして医療機器を選んだのです。

───どのようなつながりがあったのでしょう?

中川氏 歯科分野では比較的地域ごとの小さな単位で関係を作っています。当初から懇意にしているのは大阪や岡山の歯科医ですが、その延長で、日本歯科先端技術研究所の関西地区の歯科医の先生方との連携でニーズを受けて製品開発を始めていきました。最初は小規模のグループで使い勝手を伺いながら、評判がよいと徐々に販路を広げていきます。このような形だと確実に売れるメリットがありますね。

───薬事対応等で難しいことはありませんでしたか?

中川氏 本を読んだり、厚労省に聞きに行ったり、政治家のつてを頼ったり、一つ一つ勉強していったという感じです。今思えば規制面でのハードルは現状の10分の1だったと思います。

───振り返ってみてよかったことや反省点はありますか?

中川氏 身の丈にあったビジネスが重要ですね。医工連携と言いますが、医からはこういう技術を製品化してくれと投げかけるだけで、工でそれを実現するだけの体力(技術面でもコスト面でも)があるかどうかが問題です。医療機器はただ作ればよいのではなく、評価・検証のプロセスもありますから。

───医から歩み寄りがもっと必要ですか?

中川氏 例えば共同開発で医師から助成金を使いたいといわれて、申請書類の作成で協力してもらう必要がある場合があります。医師は多忙な上に部下に任せるといってなかなか書いてくれないことがありました。きめ細かに対応を行える体力がある企業が少ないのではないかと思います。

───ニーズマッチングについてはいかがですか?

中川氏 ニーズはたくさんあると思いますが、それを受け止めるだけの体力がありません。例えば、クラスⅠでは届出のみなので医側から資金協力いただければスムーズに開発を進められます。クラスⅢでは検証・評価のために1項目何百万というコストが見込まれ、製品化後に開発にかかわった医師がどこまで活躍して販売に貢献してくれるかを視野に入れる必要があり、大変なリスクです。テーマが大きくなるとますます難しくなります。中途半端にやるのが一番だめで成功しません。

───市場の特徴も影響がありますか?

中川氏 医療の世界は非常に閉鎖的です。医師には学閥がありますし、大学で講座の教授が変わると今まで使っていたものを総取り替えということもあります。

───製造業者としての提携は?

中川氏 自社でリスクを負う必要はありませんから、受託製造やOEMはやりやすいと思います。

───最近クラスⅠで製品化されたばね指(狭窄性腱鞘)の手術器具についてご紹介ください。

中川氏 奈良県のマッチングイベントで以前からつながりのあった奈良県立医大の事務局から、医師が新しい技術を開発したいと言っているのでニーズを聞いてほしいと連絡があったのがきっかけです。

超音波ガイド下でばね指の腱鞘部位を特定し、手術器具を挿入する部位と切開をする部位を2mmほど切開するだけで手術ができます。従来の20mmほど切開を要する手術では治癒(ガーゼを外せるまで)日数が約10日でしたが、本器具を使うと約3日でガーゼが外せます。

3年前に開発、今年に特許を取得、昨年は国際特許のPCT出願をしました。英語のアニメーションも作ってこれからPRをしようというところです。

ばね指手術は、海外で自由診療を行っている国では高額ですから、海外で普及のメリットが大きいと考えています。

───他にもどのような取り組みがありますか?

中川氏 自社開発のクラスⅠ医療機器では、形状記憶合金とチタン合金を使った巻き爪治療機器を開発しました。チタン合金で金属アレルギーなく使用でき、形状記憶合金で爪の厚みや幅、強度に合ったものを選択できます。これは昨年(2014年)医師から要望を聞いて6カ月で製品化しました。

その他にもクラスⅠとしては、本郷の職人さんが作っている手術器具を弊社で図面を引いて金型を製作し、ロストワックスで鋳造するという試みも始めています。

これはある医療機器メーカーから弊社HPをみて声をかけていただいたことがきっかけで、金型のコストは顧客負担での連携です。このようなものづくりの形を変える試みも始めています。

既存品を改良する、ものづくりの形を変えるといった私たちのレベルにあった仕事はまだまだあると思います。

また、日本の特徴として海外から入ってきた機器を日本の状況に合わせて改良するというニーズも非常に大きいです。

───積極的に連携されているようですが、どのような工夫を?

中川氏 発信し続けることが大事です。お金の使いどころを考えて、支援制度や展示会を利用する場合は効果を出すように心がけています。

例えば、先ほどのばね指手術器具ですが11月にデュッセルドルフのMEDICAにも持っていきます。弊社は神戸市医療産業都市に参加しており、年間約120万の家賃がかかりますが海外展示会は神戸市医療産業都市として出展できます。

また、中小企業総合展等でベストプラクティス賞などを3年連続で受賞してハノーファーメッセの出展権をいただきました。展示会に出すにしても、アニメーションを作ったり、英語を話せる人を配置したり、ブースデザインを工夫して賞を狙っていきます。

その他、業界団体や地域の支援制度、経産省のものづくり支援でもノーと言わずにチャンスをとらえて資金を取りにいきます。海外の講演依頼も引き受けます。前向きな姿勢が販路開拓にもつながります。

───チャンスがあっても活かせないことが多いと思いますが?

中川氏 常にアンテナを張って、アイディアがあるところに意識的に行こうとすることと、いかに的を外さない提案ができるかです。私自身は入社以来、常に課題を見つけて解決するような環境に置かれていましたから、特別なことをしている感覚はありません。

───今後はどこまで医療機器分野を?

中川氏 他の分野の数字をそのままに医療機器の割合を50%まで上げたいと思って積極的に動いています。

───ありがとうございました。

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