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自動運転車開発をどのように医療機器に生かすか?

自動運転車開発をどのように医療機器に生かすか?

医療機器のエンジニアは自動運転の開発からヒントを得て、糖尿病や神経疾患の治療のためのクローズドループ機器の開発に応用できる。

By: Nigel Syrotuck(オリジナルの英文記事はこちら

米国では交通事故によって、今年(2015年)だけで35,000人の命が奪われ、4500億ドルもの損失があったことが統計で示されている。これらの交通事故の原因の9割は不注意運転や無謀運転である。自動運転は人の運転によるエラーを解消するとされ、交通事故を99%減少させると主張されている。ヘルスケアにおいても同様に、自動化によって多くの命やコストが助かるはずではないだろうか?

自動化されたヘルスケア製品の増加によって医療機器産業は大きく成長している。これらの機器は動作上自立しており、インプットを受け取るが、どのように反応するかは人間からのインプットを受けずに自ら決定する。

最初は不安もあったが、自動化されたソフトウェアは人間より安全であり信頼できるのではないかという理解が広がりつつある。サイバーセキュリティという新たな懸念はあるにしても、である。自動運転車はその最たる例で、数学的に安全性が示され、技術者もそのように信じており、人間の運転よりはるかに事故の記録が少ない。自動化された医療機器は、医療業界の自動運転車になろうとしており、それで我々も救われるかもしれない。

商品化が期待されているのは人工膵臓システム(Artificial Pancreas Device System:APDS)である。これは糖尿病の治療に用いられ、患者側のインプットを必要としない。この市場がいかに大きいかは、FDAが特別のガイダンスを発行したこと、グーグルが次世代の絆創膏程度の大きさの持続血糖モニター(CGM)開発のためにDexcomとの提携を発表したことからも明らかである。ここ数年商品化が成功しているCGMはAPDが決定を行うために必須の情報を提供するデバイスである。

もう1つ注目の自動化機器は脳深部刺激(Deep Brain Stimulation:DBS)である。DBSは脳の活動を計測しそれに反応して電気信号を脳内に発生させることで、さまざまな神経疾患やそれに付随する症状を治療する。DBSがターゲットとする2大疾患は本態性振戦とパーキンソン病であるが、理論的には電気信号に起因する疾患の治療に使える可能性がある。リスクがあるため限定的な臨床応用にとどまっているが、将来的に改善されればより広く利用され、患者にとっての恒久的なソリューションになるだろう。

半自動化の分野で興味深いトピックは、レイジネス(「怠惰さ」)である。例えば自動運転車では、運転の99%を車がやってしまうと運転手は退屈で注意散漫になり、反応が必要な1%の時間でも反応しなくなる。この現象を軽減するためにバランスを取ることが難しい。この例でいうと、1%のしなければならないこと(例えば事故回避のためのブレーキ)から、運転手に頼ることなく100%を行うこと(完全自動化)まで網羅することが難しいのである。ほとんどの自動運転車にはマニュアルによる無効化機能があるが、事故回避の際に作動することは想定していない。

クローズドループのデジタルヘルス機器における同様の問題は、ユーザーインプットである。例えばAPDに情報を追加するために、食事や運動の情報をスマートフォンを使って入力できる。この追加情報によって機器のパフォーマンスは改善するはずである。しかし、この情報は必須ではなく、ユーザーが入れようと思わなければ必要ではない。では、なぜこの機能を持たせているのだろうか?FDAは人的要因を高品質の構成要素だと示しているが、どのようなものであれ患者によるインプットはリスクとなる。これは、理論的には機器はユーザーインプットによってより機能的になるはずだが、実際はユーザーインプットが誤作動の原因となる、というトリッキーなジレンマ状況を示している。これらの機器は、スマートカーがそうであるようにオールオアナッシングで100%の自動化を目指すか、誤作動のリスクを負うかのどちらかのアプローチをとらなければならない。

自動化機器開発の成功のカギは何だろうか?以下がヒントである。

  • 安全性の履歴をつくること(古いバージョンを健康機器として売ることを検討する)
  • 人間の意思決定による機器よりも自動化がより効率的であることを示すこと
  • 自動機器やサイバーセキュリティの規制を守ること
  • ユーザーインプットは求められば減少させる、あるいは可能であれば危険なユーザーインプットは除去すること

自動機器が自動運転車と同じ道をたどるのであれば、まもなく重要な医療機器において100%の自動化が達成され、それによってより安全で効率的な医療システムができるだろう。

自動運転市場がすぐにでも回答しようとしている重要な疑問とは、以下のようなものである。自動運転車が安全だとして皆がこれを買うだろうか?糖尿病になったとして皆がADPSを使うだろうか?この疑問への答えがいつか人々の生活にインパクトを与えるだろう。

■ 筆者Nigel Syrotuckは医療機器設計会社StarFish Medical(本社:カナダ・ヴィクトリア)の機械エンジニア。

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