医療機器規制のグローバルな現況

今後重要性が増す5つの医療技術市場について概説する。

By: Stewart Eisenhart, Emergo Group

世界の医療機器に関する規制を取り巻く環境はこれまでと同様に、参入の容易さ、登録要件、製造業者が解決しなければならないコンプライアンスといった問題が複雑に絡み合っている。それでも5つの主要な市場における規制面での発展は特筆に値する。インド、中国、日本、韓国、ブラジルでは近年制度変更があった。以下に知っておくべき点をまとめた。

インド:公的制度の確立に向けて

ここ数年、インド政府は、国内の医療機器登録を監督するための包括的な規制制度を構築する意図を表明してきた。まだ具体化していないが、政府は今年、実質的な医療機器規制に取り組んでいる。

政府は、国内で成長しつつあり、ほとんどが未規制状態である医療機器市場を監督するための新たな規制機関であるNational Medical Devices Authority(NMDA)の設立を提言した。政府の草案によると、NMDAは国内で販売される医療機器の安全性と有効性を保証し、さらには国内産業を奨励するための上限価格設定を行うとされている。特に後者は現在の政府の優先課題となっている。

厚生家庭福祉省の部局である中央医薬品基準監督局でゆるやかに規制が行われている現状の制度では、医療機器を新たに登録する場合、当該機器の開発国の承認が得られているという証明に加えて、米国、カナダ、欧州、日本あるいは豪州で規制をクリアしていることが必要となる。しかし、これは22の医療機器と体外診断用医療機器の分野のみに当てはまる。

強固な国内規制制度に移行することによって、インド市場に参入しようとしている製造業者にとっては、より透明性が増し予測がしやすくなると考えられる。

中国:高い手数料と多くの要件

近年、中国の医療機器規制は新規参入に対するチャレンジとなっている。頻繁なルール変更と説明不足のため、中国食品医薬品局(CFDA)の登録を進めている外国の製造業者は当惑しているが、状況は徐々に改善されている。

当局は登録プロセスを構造化し透明性を高めようとしているものの、それは複雑で高コストのままである。ここ数年、CFDAは医療機器の臨床試験の要件を形式化し明確化してきたが、それによって要件自体は拡大してきた。

現在、当局はクラスⅡおよびクラスⅢの機器の多くに対して販売前に国内で臨床試験を行うことを求めているが、例外も認めており、FDAと同様に臨床試験を必要としない承認プロセスも作成している。

一方、2015年に医療機器の登録料は大幅に上昇した。承認にかかわる設備や資源を強化するためとCFDAは説明しているが、外国の製造業者の参入意思に影響を与えている。CFDAの登録料はクラスⅡ機器で3万ドル、クラスⅢ機器で5万ドルとなっており、多くの場合、米国で承認を得るよりも高価になっている。

高い市場参入コストはクラスⅡ機器での参入を目指す小規模な製造業者にとっては特に障壁である。

日本:新しい法律によってより参入が容易に

世界最大の市場の1つである日本の医療機器市場は巨大であると同時に複雑である。2014年後半に従来の薬事法(PAL)にかわって施行された医薬品医療機器法(PMDL)によって、登録プロセスは多くの点で変更され、認可プロセスはそれほど難解ではなくなった。

例えば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のかわりに登録認定機関(RCB)による第三者の認証を利用することができるようになった。以前は、クラスⅡ指定管理に分類される医療機器だけがRCBの認証を利用することができた。

PMDLは新しい機器に対して厳格な表示ルールを定め、市販承認取得者の責任による品質管理システムの要件を加えているが、これらは、日本市場で登録を試みる製造業者のためのPMDAによるプレコンサルテーション(「対面助言」)によって埋め合わせされている。このプレコンサルテーションとは、適切な分類、申請書類、臨床データ要件など登録に関する問題に関して製造業者をサポートするためのものである。PMDAの登録をどのようにはじめたらよいかわからない外国企業にとって、対面助言は有益なリソースである。

人口減少があるとはいえ、平均余命は上昇し医療を必要とする高齢者人口は増加しつづけている。今後も日本は有望な市場でありつづけるであろう。

韓国:大きな変更の提案

医療機器市場の規制当局は、効率性を高めるだけでなく外国の製造業者の投資を引き寄せるために、規制制度の見直しをはじめた。食品医薬品安全省(MFDS)は既に、医療機器の登録プロセスで韓国適正製造基準(KGMP)の認証を事前に必要とする新たなプロセスを導入している。

また、同省は他のいくつかの変更を提案している。最も重要な変更の1つは、KGMPの認証の取得にも関係している。既存のルールでは、登録者は必要な申請書類を提出した後、KGMPの監査を受け、品質システム認証を取得する。KGMP認証は、商品化前の最後のステップである。2016年1月29日に終了する1年間の移行期間の後、登録者はMFDSへの申請前にKGMPの監査を受け認証を受けられるようになる。

加えて、MFDSは体外診断用医療機器(IVD)を医薬品ではなく医療機器として規制することを計画している。そうなるとIVD製造業者は薬事法のかわりに韓国医療機器法を遵守し、KGMPに従うことが必要になる。MFDSは段階的なコンプライアンス期限を設定しており、リスクの高いクラスⅢおよびクラスⅣのIVDは2015年11月15日まで、低リスクのクラスⅡのIVDは2016年11月11日までにKGMPのコンプライアンスを確保する必要がある。

低リスクの医療機器の承認プロセスも変更が予定されている。MFDSは新部門である医療機器情報・技術支援センター(MDITAC)を今夏に設立した。MDITACは低リスク医療機器の登録と監督に焦点を当てている。それによって、MFDSの負担軽減と、MFDSが高リスクの機器の管理・監督により集中できるようにすることが狙いである。

ブラジル:ANVISAによる規制緩和

ブラジルのANVISAは製造業者に対する監視と規制の点で南米でもっとも活動的な医療機器市場の規制主体である。ANVISAの動向からは市場参入がより負担の少ないものになることが示唆されている。その負担軽減の傾向は参入を目指す製造業者だけでなく、規制当局のリソースにも向けられている。

2015年の初め、ブラジル政府は公衆衛生上のリスクに対処し、より効率的に市場監視を行うためにANVISAに大きな裁量を可能にする新しい法律を可決した。新たに与えられた権限は下記の通りである。

  • 一部の医療機器に対する有効期限の廃止 
  • 他国の規制当局が発行した品質管理査察レポートの受け入れ
  • 検査や市販後サーベイランス活動を実施する認証機関の拡大
  • 登録の移転要件の変更

ANVISAは、新しく認められた裁量を活用するために、独自の規制を開発する必要があるが、規制当局が規制プロセスを整備するために動きだしたという事実は、市場参入と拡大を目指す製造業者にとってはよい兆候である。

新しい法律の制定後、ANVISAは、技術的要件への回答期間(申請後ANVISAからの質問に対して回答するまでの時間)を90日から120日に延長した。

医療機器の臨床試験のルールも国際的なルールに合うものに整備され、それによって臨床試験を行うのに魅力的な国としてのイメージを高めている。

まとめ

上記5つの市場は、市場参入の容易さとコンプライアンスの点で大きな違いがある。日本、韓国、ブラジルの規制当局はより複雑性の少ない方向に向かっているのに対して、中国のCFDAはそのような方向には向かっていない。また、インドの規制当局は包括的な規制づくりに向けて発展途上である。

Image courtesy of SUPER TROOPER/FREEDIGITALPHOTOS.NET

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