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FDAユーザビリティ試験の動向:510(k) 申請の洞察

FDAユーザビリティ試験の動向:510(k) 申請の洞察

多くの企業は、新規の医学的応用や新規の技術で、また既存機器の変更やアップグレードでさえ、FDAに臨む際には510(k)を成功させる申請書類を作成すべく奮闘する。一つの具体的な課題は、適切な機器バリデーションをFDAに提出することである。本記事では、成功する510(k)申請において存在を増しつつあるユーザビリティと人的要因の研究について検討する。

By: Kenneth L. Block 米国薬事専門家(RAC)

FDAの視点

2011年のユーザビリティに関する政府後援のワークショップにおいて、人的要因に関するFDAの510(k)チームリーダーが、関連する歴史を簡潔に発表した。1 過去には、医療機器のユーザーインターフェース設計不良が根本原因で、患者を死亡に至らしめる事例もあった。またこの発表の中で、FDAと産業界の両者によるユーザビリティと人的要因に関する活動が、年を追うごとに増えつつあると定性的なチャートで示された。本記事の筆者はこの増加した活動を定量化すべく、FDAから入手可能な事実データを調べた。

FDAのウェブサイトで、過去10年に認可された機器に対して入手できる文書を検索すると、「ユーザビリティ」と「人的要因」という用語が確かに普及しつつあることが見て取れる。下記の図1は、米国市場への医療機器認可を求める企業がFDAに対して説明した活動に関して、特にこれらの用語を含む510(k)サマリー文書の数を表している。図1に表された年の軸は、関連する510(k)がFDAに提出された年を表しており、機器が認可された年ではない。

図1 510(k)サマリー文書における用語の普及

FDAのウェブサイトに掲載された510(k)サマリーに関しては、すべての企業が実際の機器開発及び試験活動の詳細を全て記載しているわけではないことに、読者は注視されたい。従って図1は、企業が新規及び変更機器のために具体的なユーザビリティ及び人的要因の活動を実施した全510(k)申請を表すものではない。しかしながら、図1の作成に使用したFDAの定量的データは、510(k)申請に成功した企業のより多くが、FDAの審査プロセスの中でユーザビリティと人的要因について議論していたというFDAによる定性的主張を確実に立証している。

FDAが期待していること

設計管理が品質システム規制の一部として設けられた時から、FDAは21 CFR 820.30(g)の下で、設計バリデーションは「機器が定義されたユーザーニーズと使用目的に適合することを確実にし、実際の又は模擬的な使用条件下での生産ユニットの試験を含めなければならない」と要求している。あまり読まれていないものに、品質システム規制の最終版がリリースされた時にFDAが発行した説明(即ち「前文」)がある。企業が理解すべき重要な点は、FDAからの以下のガイダンスが前文に含まれていることである(本記事の筆者により強調が加えられている):

「機器を設計する際に製造業者は、設計プロセスの初期段階から、開発において医療従事者ならびに患者とのインターフェースが確定する時点まで、適切な人的要因研究、分析、試験を実施すべきである。人とのインターフェースには機器の使用に影響するハードウェアとソフトウェアの特性が含まれ、優良な設計が合理的かつ容易で安全な機器の操作には極めて重要である。使用される人的要因手法(例えば、タスク/機能分析、ユーザー研究、試作品試験、モックアップ審査、その他)には、ユーザー集団および操作環境の特性が考慮されることを確実にすべきである。更に、システムコンポーネントの互換性が査定されるべきである。最後に、ラベリング(例えば、取扱説明書)はそのユーザビリティーがテストされるべきである。

上記の前文からの抜粋は、医療機器の開発ライフサイクル全期に渡って、製造業者が数多くのユーザビリティと人的要因の原理を適用することを、FDAが常に期待してきたことを明示している。

FDAの機器評価室は、数年前の「人的要因ユーザビリティ試験に関する規制要求事項の理解」と副題がつけられたオンラインセミナーから、定義について以下の資料2を引用したが、本記事の主題に対するFDAの観点を理解するのに役立つ:

  • 人的要因 (ANSI/AAMI HE75:2009):「…人間の能力(身体、感覚、感情及び知能)と限界に関する知識を、ツール・機器・システム・環境・組織の設計開発に応用する…」
  • ユーザビリティ(ISO/IEC 62366:2007): 「有効性、能率、ユーザーの学びやすさ、ユーザー満足を確立するユーザーインターフェースの特徴」

FDAに認知された規格

FDAは現在、企業が新規及び変更機器の510(k)申請で適合を主張できるユーザビリティと人的要因に関連した「認知規格」として、以下を挙げている:

  • ISO 14971:2007 医療機器-リスクマネジメントの医療機器への応用
  • AAMI ANSI ISO 14971:2007/®2010 医療機器-リスクマネジメントの医療機器への応用
  • AAMI / ANSI HE75:2009/(R)2013 人間工学-医療機器の設計
  • IEC 60601-1-8 Ed. 2.1 医用電気機器-第1-8部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項-副通則:医用電気機器及び医用電気システムのアラームシステムに関する一般要求事項、試験方法及び適用指針
  • IEC 60601-1-8 Ed. 2.0 医用電気機器-第1-8部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項-副通則:医用電気機器及び医用電気システムのアラームシステムに関する一般要求事項、試験方法及び適用指針
  • AAMI ANSI IEC 60601-1-8:2006 &A1:2012医用電気機器-第1-8部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項-副通則:医用電気機器及び医用電気システムのアラームシステムに関する一般要求事項、試験方法及び適用指針
  • IEC 62366 Ed. 1.1 2014, 医療機器-医療機器へのユーザビリティエンジニアリングの応用
  • AAMI ANSI IEC 62366:2007/(R)2013 医療機器-医療機器へのユーザビリティエンジニアリングの応用
  • IEC 60601-1-6 Ed. 3.1 2013 医療電気機器-パート1-6:基礎安全及び基本性能に関する 一般要求事項-副通則:ユーザビリティ
  • IEC 60601-1-6 Ed. 3.0 2010 医療電気機器-パート 1-6:基礎安全及び基本性能に関する 一般要求事項-副通則:ユーザビリティ

FDAによる最終決定はまだではあるが、2011年の文書『産業界とFDA職員のためのガイダンス草案-医療機器を最適化する人的要因及びユーザビリティエンジニアリングの適用』が、上記規格の使用を奨励している。しかし、多くの企業は上に挙げられた特定の版ではなく、類似した規格に基づくデータをFDAに提出している(例えば 、“認知された”IEC 60601-1-8に対してBS EN 60601-1-8)。

ユーザビリティ及び人的要因の規格の使用を調べるため、過去10年分の510(k)サマリー文書を再度見直した。図2は前記の図と同様に一般的な形式でデータを表示しているが、510(k)サマリー文書中の「HE75」及び「60601-1-6」という用語の存在について表した図である。図2は、いずれかの用語が最初に出現した年までのみを振り返るものである。

図2 510(k)サマリー文書における用語「HE75」及び「60601-1-6」の普及

図3は前記の図と同様に一般的な形式でデータを表示しているが、510(k)サマリー文書中の「62366」及び「60601-1-8」という用語の存在についての図である。図3の範囲は、調査した10年間の全てのFDA申請である。

図3 510(k)サマリー文書における用語「62366」及び「60601-1-8」の普及

2014年のFDA申請からのデータ(未完ではあるが)を見直すと、成功する510(k)申請におけるユーザビリティと人的要因の活動は増え続けている。

最近510(k)申請

ごく最近の510(k)サマリー文書(即ち、2014年に提出された申請)を調べると、女性用失禁刺激、ステントプランニング用ソフトウェア、酸素濃度計、超音波のブレストイメージング、避妊補助器具、カテーテルナビゲーション/制御、及びその他多くの医学的応用を含め、多種多様な範囲の医療機器に対してユーザビリティ試験が行われたことが明らかになった。試験結果は、処方機器及び非処方(即ち、OTC)機器の両方に対してFDAに提出された。これら最近の510(k)のために実施されたユーザビリティ試験は、当然ながら具体的な機器特性と使用目的に強く依拠している。目的とする使用集団(例えば、患者なのか臨床医なのか、訓練を受けているのかいないのか)、使用設定(例えば、模擬人体への非臨床使用、実際の人体への臨床使用、実際の動物実験)及び、主要な試験対象(例えば、取扱説明を含むラベリング、ソフトウェアユーザーインターフェース、臨床性能)は、510(k)申請において極めて多様であった。

まとめ

過去のFDAデータを定量的に分析することにより、510(k)申請におけるユーザビリティと人的要因に関する考察と試験データが、特に過去数年間において増加したことが立証された。そのような事実を510(k)サマリー文書に掲載した多くの企業は、関連する国際規格に適合した活動を実施した。関連するFDAガイダンスの最終版作成に向けて、ユーザビリティと人的要因の原理への取り組み増加パターンが継続すると予想される。

実務経験によると、具体的なユーザビリティ規格試験結果をFDAに提出しなかった機器に関して、510(k)審査官は、対象機器の設計及び/又は試験でどのようにユーザビリティと人的要因に取り組んだのか企業に説明を求めることがある(即ち、リスクの分析と低減、機器バリデーション模擬使用試験、独立した「ブラックボックス」ソフトウェアバリデーション試験、その他の手段を用いて)。

従って筆者は、新規及び変更機器両方のライフサイクルの中で、できればFDAが容認する規格に基づいて、ユーザビリティと人的要因に取り組むよう企業に勧める。機器バリデーションのルーチン部分として、このアプローチはFDAの期待値を満たすとともに、510(k)の成功に寄与する客観的証拠を積極的に作り上げるであろう。

日本での実務経験

過去10年間、数多くの日本の医療機器企業のために数十件の510(k)申請を成功させてきたが、その経験によると、新規及び変更医療機器の設計バリデーションに対してFDAが要求している「客観的証拠」をどのように開発するのか、多くの企業が理解に苦しんでいることがわかる。日本企業の中には、「主観的な」機器基準(例えば「適した」「より良い特性」「よりスムーズな動作」)が機器バリデーションに関するFDA要求事項を満たすという、旧態依然の認識を抱いているところもある。人的要因の原理を利用し、ユーザビリティ試験を実施し、他の適切な試験(例えば、同等比較機器との比較試験)を実施することにより、これらの企業は主観的基準を、FDAを満足させる「客観的証拠」に変身させることができる。

著者Kenneth L. Block 米国薬事専門家(RAC)

科学教育・実践医療機器工学・豊富な510(k)申請に関する専門的な経歴を持つブロック氏は、医療機器バリデーション戦略の構築において多くの企業に深く携わっている。ケン・ブロック コンサルティングの代表取締役であり、日本全国の医療機器企業向けに卓越したFDAサポートを提供する15人のスタッフを率いる。FDAとの公式会議を行うこともあり、そこではソフトウェアバリデーションやユーザビリティ試験の要求事項に関する話題も取り上げられる。氏は日本・ヨーロッパ・北米での医療機器イベントにエキスパート講師及びパネリストとして招待されている。Medtec Europe 2015(シュトゥットガルト、ドイツ)では、ユーザビリティ試験に関する追加的な規制の詳細及び事例を発表した。2015年10月には、Medtec Irelandにおいて唯一人のFDA規制エキスパート講師となる予定。


参考資料

1. Ron Kaye(2011年6月7日)「Human Factors/Usability for Medical Devices: An Historical Perspective」米国立標準技術研究所(NIST)ユーザビリティと電子健康記録(EHR)技術に関するワークショップ発表資料

2. Molly Follette Story(2012年6月7日)「FDA Perspectives on Human Factors in Device Development: Understanding Regulatory Requirements for Human Factors Usability Testing」米国薬事専門家協会(RAPS)オンラインセミナー資料

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