大商、医療機器開発へ事業化支援制度を整備

​大阪商工会議所(以下、大商)は、有望な成長分野の一つである医療機器産業において、日本が有する優れたものづくり技術などを生かした日本発の医療機器を開発するために「医療機器事業化促進プラットフォーム」を構築している。


これまで日本の医療機器市場が輸入超過で推移している原因の一つとして医療機器の開発環境が未熟であるという状況が指摘されている。特に海外の医療機器開発の先進地域と比べ、日本では医療現場のニーズを発掘し、どのようなコンセプトで、どの市場に、どういった薬事戦略や販売戦略をもって事業展開するかといった戦略性が欠如している点などが指摘されている。

同プラットフォームは、そうした状況を解決するために2003年から他の地域に先駆けて「次世代医療システム産業化フォーラム」を立ち上げ、支援基盤・体制の整備を進め、医療現場のニーズ発掘の機会を提供している。今後の開催案内はこちらから。

そのほか、市場調査や知財調査、コンセプト立案にはじまり各種戦略策定、薬事申請、量産、販路開拓、さらには海外展開支援といった事業化に至る一連のサービスを行う「事業化支援サービス」を専門コンサルティング企業や大学・研究機関や動物実験などを行う各種施設や海外提携先などとも連携しながら一元的にサポートしている。

総合特区を推進 

大商は、関西イノベーション国際戦略総合特区(総合特区)の具体化を推進するため、 2011年度特区推進調整費を活用した「課題解決型医療機器開発・改良に向けた病院・企業間の連携支援事業」の実施主体として以下の2事業を進めている。

① 実証事業(課題解決型医療機器等開発事業)

公募の結果、治療機器の分野でチャレンジングな開発であるが、市場性が見込まれ、開発チームの中で中小企業が重要な役割を果たし、将来的には海外展開の可能性も含む案件として、「我が国の内視鏡治療の世界標準化へ向けた統合型次世代医療機器の開発・改良」<大阪大学および企業6社との共同体>6社との共同体>、「極細径・可動型の内視鏡の開発とその臨床応用(極細径・軟性・可動性関節鏡の開発および経皮的心嚢内アプローチを簡便、安全にする心嚢穿刺デバイスの開発)」<京都大学、大阪市立大学と企業4社との共同体>を12年6月に採択し、研究開発ならびに事業化へ向けた取り組みを支援した。


② 医工連携推進支援事業(医療機器事業化促進プラットフォーム構築事業)

海外市場もにらんだ医療機器ビジネスを支援する仕組みを大阪・関西に整備することを目指したモデル事業を展開。具体的には、医療機器ビジネスの先進地域である米国ミネソタ州や欧州、アジア市場のハブとなるシンガポールとの連携事業を支援し、事業化ノウハウを吸収するとともに連携の在り方を模索した。
なお、12年度特区推進調整費についても交付が決定され、引き続き、大商で医療機器等開発支援事業を13年度に実施する予定。


海外展開を支援

大商は、日本が有する優れたものづくり技術などを生かした医療機器の開発を、日本のみならずグローバルに展開することの重要性に鑑み、国際連携にも積極的に取り組んでいる。
①米国

—2010年2月に医療機器ビジネスの先進地域である米国ミネソタ州でライフサイエンス産業振興を目的に設立されたNPO法人「バイオビジネス・アライアンス・オブ・ミネソタ」(略称BBAM)と協力提携を締結した。

—12年度特区事業の一環として、大阪・関西に医療機器事業化促進プラットフォームを構築するため、米国BBAMや在大阪英国総領事館、米・英コンサルティング会社と共同で、日本発のグローバルな競争力を有する医療機器の開発について検討した。

②アジア

—12年10月に今後の成長が期待できる中国、インドなどアジア市場での展開のハブとなるシンガポールの科学技術研究庁(略称A*STAR)と、医療機器開発および創薬分野の連携促進に向けた情報交換や企業、大学・研究機関における協力提携を結んだ。


—今後のアジア展開をにらんだシンガポールでの拠点設立にも協力した。


—中国介護ビジネスへの参入支援
として「中国介護ビジネスプラットフォーム(仮称)」を設置し、中国側のニーズ・提案とのマッチングや、プロジェクトの具体化をめざす。今後、参加企業を募集する。

③ 世界から人材の招聘

—グローバル市場を目指す医療機器開発には、開発段階から国内外のキーオピニオンリーダー(KOL)による評価を得ることが重要であることから、12年10月に、国内やスペイン、トルコ、韓国から医師を招聘したシンポジウムならびに動物実験を企業関係者も交え開催し、日本発の国際競争力を有する医療機器開発に取り組んだ。


—加えて、今年1月には米国、欧州、シンガポールから医療機器開発支援組織などを招聘した事業化セミナーを大阪市内で開催。国内での医療機器開発の仕方や海外の組織・企業をいかに活用して国際展開するかについての情報を提供した。

次世代医療システム産業化フォーラム

大商が全国に先駆けて2003年から開催しているのが「次世代医療システム産業化フォーラム」だ。これから医療機器業界に参入しようとする企業、新たな医療機器開発に取り組もうとする企業にとって最も大切なことは、医療現場の課題を知り、どのような医療機器を求めているかを知ることであるため、同フォーラムの例会では、医療現場から「内視鏡をより使いやすくする器具の開発」「入院患者のデータ管理機器の開発」「新しい義手の開発」など具体的なニーズを発表、後日、希望する登録企業とマッチングを行い、新たな医療機器の共同研究につなげている。


これまでに、同フォーラムを通じて共同研究に至った案件は135件、うち15件が事業化されている。同フォーラムには、全国の医療機関、研究機関、企業が参加。12年度は27機関から31件の医療現場ニーズが発表され、企業185社が参加した。13年度の参加企業を募集している。

<成功事例> ハリキ精工 フォーラムで参入の糸口つかむ

大商の支援事業を活用し、医療機器分野に参入した企業も生まれている。
その一つが、ハリキ精工だ。

同社は、もともと超精密切削加工技術を生かして、電機、自動車業界向けに精密機器部品を製造・販売してきた。しかしながら、新たな事業の柱として医療機器分野への進出を検討することとになり、2008年に大商の「次世代医療システム産業化フォーラム」に参加した。


同フォーラムでは、実際の医療現場のニーズを把握し、同社がどのような機器での参入が可能かどうかを検討し、医師との信頼関係も築き、新たに医療機器分野に進出する足掛かりをつかんだ。さらに、大商が主催する事業で米国医療機器展示会にも参加、米国企業と部品納入についての商談を行うなど医療機器分野に積極的に取り組んでいる。


同社の榛木竜社長は、「医療現場の方にいろいろとアドバイスをいただき、昨年、自社独自の傷が残りにくい手術器具も完成のめどが立った。医療機器製造販売に必要な認可も取得したので、今後ますます医療機器分野に力を入れていきたい」と医療機器分野での事業展開について意気込みを語っている。

​また2008年の成功事例としては、大研医器株式会社は大阪大学と共同で執刀医が手にした手術器具の動きに合わせ、ロボット技術によりカメラが自動的に動き手術部位を映し出すシステムを開発している。ロボットの駆動部分の製造コストを抑え、衛生面にも配慮した「使い捨て内視鏡手術支援ロボット」を目指してさらに開発を進めている。

その他にもフォーラムに参加した企業からは「最新の医療・バイオ機器に関する情報が得られる」「これまでつながりのなかった医療関係者や研究者、大手医療機器メーカーとコンタクトができる」「景気に左右されにくく安定した成長が見込める医療機器市場にどのような分野で自社技術を活かせるかヒントが得られる」「医療・バイオ分野で具体的な新規事業の立ち上げや部材供給のチャンスが得られる」「国内外の医療機器関連企業などとの連携が実現できる」などの声が寄せられている。


大阪商工会議所

www.osaka.cci.or.jp

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