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MEDTECセミナーを前に: 米国市場へ医療機器を提供するためには何が必要か(ケン・ブロック コンサルティング、平瀬氏)

MEDTECセミナーを前に: 米国市場へ医療機器を提供するためには何が必要か(ケン・ブロック コンサルティング、平瀬氏)

MEDTEC Japan2012 」のセミナーで「米国市場へ医療機器を提供するためには何が必要か」について講演(4月19日、木曜、午前9時50分〜10時30分))をされるケン・ブロック コンサルティング米国本社FDA薬事規制専門員の平瀬勤子氏に、セミナーを直前に控え、色々とご意見を伺った。

 

1. 今回のご講演での一番のポイントは何でしょう?

平瀬氏:510(k)が重点の1つです。企業の品質システムの下での設計管理と、510(k)申請システムとは、直接関連しています。少し具体的に申しますと、既に販売されている機器に何らかの変更があった場合、新規510(k)が必要かどうかを判断するためには、適切な設計管理と適切なFDA規制の理解があって初めてFDAガイダンスを正しく利用することができます。


2. 日頃のコンサルティイングの中で、日本企業が米国で許認可を取得する際、最も多い質問や、特に留意した方が良い点などがあれば教えて下さい。

平瀬氏:多い質問の例として、以下のようなものを挙げることができます:

・現在販売されている510(k)機器に○○のような変更がありましたが新規510(k)が必要でしょうか?

・FDAは日本での○○試験を認めますか、それとも米国で試験を実施する必要があるでしょうか?

・この試験をFDAは認めるでしょうか、それとも追加的な試験が必要でしょうか?

また、日本企業が特に留意した方が良い点はバリデーションでしょう。FDA要求事項を満たしたバリデーションが確実に行われることが必要です。これは510(k) の審査段階においても、またFDA査察においても、しばしば問題になります。試験対象の数も問題になります。

また、特によく見られる問題は、まず試験が実施されて、報告書が作成されるというものです。FDAが要求するのは、まずプロトコルを作成し承認して、その後で試験を実施することですので、FDA申請を計画されている企業では注意する必要があります。バリデーション以外ですとリスク分析が挙げられます。

日本の企業のリスク分析には、医学的な項目が含ま れていないことがよくあります。けれどもFDAが期待しているのは、怪我が「重度」とか「中等度」というばかりでなく、ハザードからもたらされる具体的な医学的傷害が含まれた分析です。


3. 今回のセミナーでは医療機器の「イノベーション」と「法規制」が2大テーマとなっていいます。今後、日本発の「革新的医療機器」の開発・改良には何が最も重要とお考えですか?

平瀬氏:FDA はイノベーションと規制をどちらも重視しています。例えば、モバイル・アプリやヘルスケアのソフトウェアなどに対するガイダンスを発行しています。ですから、テクノロジーや医学的専門分野に関連する、全てのFDA規制をまず理解する、という方法をとることが日本の企業にとって重要です。

この方法を取ることによって、規制を考慮しながら、「革新的な医療機器」を開発することができるからです。その結果、将来510(k)を申請する際にFDAから「意外な要求」を受けることが少なくなり、認可までの時間が短縮され、革新的な医療機器をより早く米国市場に出すことができます。


4. 日本の企業が国際競争力をつけるという意味でも,医療機器の産業を発展させていくという観点からも,我が国の薬事承認の迅速化も課題となっています。これについてはどのようにお考えですか。

平瀬氏:日本のデバイス・ラグの問題は解決されるべきだと思います。けれども米国においても、革新的な機器に対するFDAの審査プロセスは非常に遅いと感じている企業が多く、米国よりも先に欧州での販売を行い、欧州で臨床データを収集し、欧州での臨床データを用いてFDA申請を行う企業もあります。市販までのスピードは、それぞれの企業の状況・製品・使用目的などに応じて異なる、というのが弊社の考え方です。従って一般的な答えを求めるのではなく、それぞれの製品に 応じて現実的な規制対応を研究し、国際競争力をつけていくことが必要だと思います。


5. 現在、日本の医療機器業界が抱える一番の課題は何だとお考えですか?

平瀬氏:巽英介氏がChallenges in Research and Development, Productization, and Clinical Application of Advanced Medical Devices in Japan(添付PDF資料)において、日本の企業が研究開発に費やす金額を売上高と比較した場合、米国企業の約半分であると述べています。もしも研究開発予算が増加すれば、 革新的なアウトプットも増加すると思います。

また米国の大学の研究開発システムは、教授や学生のアイディアを企業に取り込み易いようになっています。日本でも大学での研究を企業での実際の製品開発に移管し易い仕組みを構築することができると思います。

更に、米国では小規模な医療機器企業を立ち上げることが盛んで、革新的な機器が開発され易い環境にあります。もちろん小規模企業のアイディアが必ずしも成功するわけではなく、失敗に終わることもあります。小規模企業にはリスクも伴いますが、努力が報われた場合には結果として大きなイノベーションにつながります。

大企業が革新的製品を持つ小規模企業を買収することによって市場を拡大することもできます。このような小規模企業を支援することによって、医療機器業界全体として革新的製品が増えると思います。日本では 外国に比べると、失敗が許されない環境にあるかもしれません。けれども危険を冒して、失敗した場合には方針を変えながら、競争力と成長とを得ることができると思います。

6. 早いもので東日本大震災から1年が経ってしまいました。今後の日本の医療機器業界はどうなっていくとお考えでしょうか?

平瀬氏:東日本大震災によって、リスクには予期できないものがあること、回避できないものがあることを、より多くの人が実感されたと思います。更に、このような未曾有の災害に対して、日本人が比類のない強さと自制を以って取り組んでいることを、世界中が認めています。

つまり、医療機器業界は、困難に立ち向かう日本人の強さと、仕事に対する勤勉さとを兼ね備えているということであり、すぐれた革新的製品を開発して前に進むことができるということです。グローバルな市場 においては、革新的機器には必ず、規制当局・医師・患者などが受け入れてくれる場所が存在します。日本の製品の品質は世界一だと世界が認めていることを忘れないで下さい。各企業のモチベーションは高く保たれ、医療機器イノベーションが更に飛躍するであろうと考えています。

 

平瀬氏は、会議二日目(4月19日木曜日)の9時50分〜10時30分に、「米国市場へ医療機器を提供するためには何が必要か」について講演をされます。

FDAの医療機器規制の基本思想に基づき、米国での許認可を取得するために日本の医療機器企業は具体的にどのような対応が必要になるのか。米国制度の今後の展望とは、及びそれに対する日本企業の対応はどうあるべきかについてご解説頂きます。


平瀬 勤子氏

ケン・ブロック コンサルティング米国本社 FDA薬事規制専門員。 

2007年4月にケン・ブロックコンサルティングに入社。2009年6月に米国薬事専門家(RAC)資格を取得。現在、日本企業向けに米国薬事関連の支援サービスを提供されている。

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